高校デビュー
時期早な蝉の声がところ所に響き、大地が暖かな日差しに照らされる六月。
それぞれが新たな社会に溶け込み、自己の立ち位置を形成する。
そう。
それは朝霧高校1-Cの俺、桧山<ひやま> 夢人<ゆめと>とて同じことだった。
俺の立ち位置。
それは、『空気』だ‼
俺は中学の時、人間関係が絶望的に壊滅していた。
3年間でできた友人の数は0……
一人寂しい中学生活を送った。
そんなこんなで高校デビューを果たすため、気合を入れて学級委員長にまで立候補したのだが……
委員長になってから2ヶ月が経つ現在、俺の立ち位置は中学の時となんら変化がなかった……
何故、学級委員長になってなお存在が空気なのか、その答えは4月の入学式にまで遡る。
————4月。
辺りの木々が美しいピンク色に染まる季節。
国立朝霧高等学校への合格切符を手に、入学の時を迎えた。
下足室の前には同じように切符を手にした学生たちが群がっている。
——なんでクラス発表ごときで群がってんだ?
合否が決まった以上クラス分けなんてどうでも良いだろ……
俺の素朴な疑問は一瞬で解決された。
「高校でも一緒のクラスだと良いね~」
「そうだね~ 新しい環境で不安だもんね~」
そんな会話が群れの一端から聴こえる。
——なるほど……
友達と一緒になれるか楽しみにしてんのか……
俺にはほど遠いな(苦笑)
群れる学生の外に俺はただ一人佇んでいた。
それは群がる学生を青春の主人公とするならば、俺なんて脇役にも値していないだろう。
——友達とかそんな過去のものに囚われてないで、
もっと新しい出会いに期待しようぜー
俺は彼らを余所に、一人遠目にクラス表を眺めていた。
5分ほど経っただろうか?
高校の教員らしき二人が掲示板に巨大な張り紙を貼りに来た。
待ってましたと言わんばかりに学生の群れが騒ぎ出す。
友達同士で歓喜の声をあげ合う人たちがいれば、またその逆も少なくはなかった。
俺はというと、自分のクラスを確認するなり早々と教室へと向かっていた。
——クラス分けなどという不可抗力な物には囚われない。
そう。出会いイベントを求めて一番に教室に入る。
そして、次に来るのが女子で教室で二人きり展開を狙う‼
これこそが青春だ‼
廊下を渡り、割り振られた1-Cの教室へと向かう。
そして、教室の扉に手を掛け、勢い良くそれを開いた。
「しゃあ! 一番乗りだ!」
扉の開音と共にその声は響き渡った。
このとき、俺は自分の行動を後悔することとなった。
「えっ?」
教室の窓際に目をやり、自分のしたことの恥ずかしさに気がつかされた。
顔が熱い……
そう、誰もいないはずの教室に目を丸くした一人の少女が佇んでいたのだ。