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ストーリー



夕刻。



短針が5を指し示した頃、

黒騎と当麻は新たなパチンコ店に足を踏み入れた。



「今日、色々打ってみた感想を聞こうか」


「空物語が何故人気なのかわかりました」


「ほう?」



空物語は、全てのパチンコ店に大量導入され、

主に老人を対象とした機種である。


分かりやすさの一点張りで息長く稼働を続けている。



「余計な演出がなくて、

 イライラしません」


「そうだな」



近年、パチンコにはアニメやゲームなど、

様々なジャンルのタイアップ機が流行している。


それらはアニメなどにある演出などを使って、

リーチ演出などを形成している。


しかし、熱くもなんともない演出が、

やたらと時間を取るのが当麻には焦れったかった。


当たるはずもない回転時でも、

下手をすれば1分以上待たされる。

そして当然、外れるのだ。



「そのアニメが好きとかでないと、

 意味がないもんな」



「そして、僕の得意台がわかりました」


「聞かせてもらおうか」


「V確機です」


「そうだな」



V確というのは、

V入賞をすることで、事実上の確変に突入する機種だ。


基準変更などで高継続機種が淘汰されるパチンコ界隈で、

客の射幸心を煽るためにはどうすれば良いかを考えた末、

たどり着いたのがこのV確である。


まず、大当たりする。

V確に突入するためには、

5割かそれ以下の確率を引く必要がある。



わかりやすく例えると、

ルーレットだ。



通常かV確か、それが交互に描かれたルーレットを回し、

打ち手はこれに1個、玉を入れる(大当たり時)。


見事Vに入れば、右打ちの高継続状態に突入し、

大当たりを連発することが出来る。


逆に入らず通常であれば、

時短を得てそのまま終了する。



天地明瞭の機種。


それがV確である。




「ちなみに、それは何故だ?」


「え、何でって……それで続けば旨味があるからです」



『それを証明する』と言って、

当麻は台を選び始める。


データカウンターだけ見るのではなく、

釘もざっと見ろと指示されている当麻。

当然、釘の寄りなど知らないが、

見るだけでいいというのだからそうしている。



そして当麻の能力には、

不便な点が一つある。



彼の目には未来のデータカウンターが見えても、

現在のデータカウンターが見えないのだ。


大当たりをする回数しか見えていない。



したがって、

朝から打てば全ての台が0なので気にもならないが、

既に190回大当たりの台があったとしたら、

間違ってそれに座ってしまう可能性もあるのだ。


だから彼は大当たり回数の右側、

連チャン数のカウントを見る必要があった。


その合計を、総大当たり回数から引き算して、

初めて座って勝てるか否かを判別できる。



この一手間を、

当麻は惜しまず、

暗算を早めて進む。



データカウンターだけを見る行為は、

決して間違いではない。


台によっては波があり、

当たりやすいかそうでないかを判別することも出来る。




「……みつけました。これです」



当麻が選んだ台。




『CARO(家老)』。



若くイケメンな家老(何故老いの字があるかは不明)たちが、

邪悪なる物部、源氏などの悪霊を相手どり、

武装して戦う特撮ヒーロードラマ。


いわばタイアップ機であるが、

パチンコでダイブレイクしたこのドラマは現在、

放送当初では考えられない予算額で制作されている。




なお、パチンコで言うCAROは、

超高継続、超大量出玉の二大看板で売っているため、

演出はともかく台自体の人気は高い。



V確機であり、右打ち時には160回転のSTがつき、

大当たり時には2000発もの出玉が保証される。





黒騎にはその台のデータカウンターが、

13に見えるのに対し、


当麻には71に見えている。


今までの連チャン数は  11,1,1。

つまり、初当たりは3回。

時短のみ2回。

V入賞後10回連続大当たりが1度。



71―13=58



つまり、閉店までのこり58回、

大当たりが成る。



中には初当たりもあるだろうが、

すぐに確率分母内で当たって、

連荘を決めることが出来る計算だ。




「よしわかったな。

 期待値は50000発以上。

 ……今から投資し続けても旨味はありだな」


「はい。今すぐ打てば、確実に勝てます」


「……じゃあその台には座るな」


「はい! ……えぇ゛!!?」



座れば諭吉を20人拝める大勝。

それを掴まずに見逃せ。


黒騎は、動揺する当麻の背中を叩いた。



「初めて来た店だ。

 店は何をお前に望むか、

 それを考えろ」


「何を望むって……何でそんなことを?」


「俺達が打てるかどうかは、

 店側が決められるんだ。

 入口に書いてあったぞ。

 【パチプロの入店はご遠慮ください】と」



勝つことは大事だ。

しかし、目をつけられたらいけない。



「お前が毎日ここに来て、

 毎日勝ったらどう思うよ?」


「……嫌だと思います」


「そうだ。お前の能力は幸い、

 お前の意思でセーブ出来る。

 『ちょっとだけ勝てばいい』。

 そして、

 『また来たいと思う』。

 この2つを念頭に選べ」



ちょっとだけ勝つ。

その、『ちょっと』がわからない。


訝しみながら、当麻は台を選び始めた。



いわばこの課題は、

今日の総決算だった。


CR CARO

奇々怪々の魑魅魍魎を悪霊退散する機種。

最初は特殊機だったが、現在はV確が主流。

変身要素はない。

大当たりをしたときの

「かろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

が人気。

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