探り
煙と騒音が、
鼻と耳を傷めつける。
目には光が、楔のように打ち込まれる。
長いこと同じ姿勢のため、
肩もこるし血流も鈍る。
パチンコの何が面白いのかわからないと、
染崎茜は本気で悩んでいる。
折角のおしゃれも、
いい匂いのシャンプーも、
長居すれば無駄になる場所。
友人や、今現在の彼氏にあたる当麻も、
打ち出して入れるだけの遊びに夢中になっている。
「解せないのよねえ」
サングラスと、いつもと違う髪型。
後ろで一括りに結っただけのポニーテールが、
揺れるたびに髪の隙間から香り漂う。
服装もスーツ。
極力声も出さない。
そんな姿をした茜が見たいもの。
それは当麻の、パチンコを打っている時の姿である。
彼女は当麻の打っている姿を見たことはあるが、
「自分のいない時に打っている姿」を見たことはない。
ひたすらつまらなそうに打っているなら、
何としてでも止めたいと思っている。
その逆であれば問い詰めたいと思っている。
「合わせるのは得意だけど、
出来れば更生させなきゃだよねえ。
パチンコなんて、
百害あって……1くらいは利、あるのかな?
でもでも、金銭面でしか利なんてないし……」
今、茜がどこにいるのか?
それは秋葉原のパチンコ店近くだった。
来店するものの顔も見れる場所にいる。
手にはスマホを持っているので、
待ち合わせているという雰囲気を醸し出す。
さきほどLIMEをしたところ、
当麻はいつもどおりパチンコをしにいくという。
茜は、定職についていないことに突っ込みはしない。
するとしたら本格的に付き合うことになる場合だ。
『秋葉原のどこ? いい感じの名前?』
『アイリッシュってお店』
『なんかかわいい名前―』
情報をあっさりと聞き、早速張り込み。
ところが、開店直後になっても現れない。
駅が混雑しているなどの情報は今のところない。
「おっかしーなー……」
開店直後を好む当麻、
パチンコを自分の命以上に愛している当麻。
それが来ない。
そんなわけないと待つこと数分。
「……え゛」
当麻は現れた。
誰か、別の女と一緒に連れ添って。
見間違いはない。
いつも着ている当麻の服で、
顔立ちも当麻だ。
その横にいるのは女だ。
断じて女装男子などではない。
「うそ、そんな……他の……女?
いやいや。そんなはずは……だって、
そんな甲斐性ないじゃん!?
浮気する人ってふうにも見えないし」
2人は入店する。
茜は呼吸をしてから、
パチンコ店に突入した。




