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夕食という名のデート。


相手の茜は、それを心待ちにしていたようで、

待ち合わせ場所に十分前に来た。


程々のメイクに派手な赤のコート。

何度か男に声をかけられるが、

華麗にスルーした。


スルーされた男はしょんぼりするか、

誰を待っているのか気になって見ているかのどちらかである。



「あ、おっそーい!」


やって来た当麻は、

普段着だ。デートなど眼中にない、

至って普通の、地味な普段着である。


先日購入した勝負服は、

パチンコ屋に行っていたため着てこなかった。



「遅いって……5分前だよね?」


「だって私は更に5分前にいたんだもん」


「えー……」



冴えねえ。


男を見る目が足りない。



袖にされた男たちが、当麻を見て思った印象だ。

勇気ある1人が、当麻の前に立ちはだかった。



「兄ちゃんが、このかわいこちゃんの彼氏かい?」


「え、あー……」



当麻は、背中を叩かれた。

自信を持てという一撃である。



「!? あ、彼氏、です!」


「パッとしねーなあ。

 なあなあ、こんな彼氏でいいのか?

 俺とのデートの方がよっぽど」



当麻をこき下ろす不良男子に、

茜は笑みを浮かべて応える。







「セ◯◯スしか頭にない人とデートしたくないの」






「せっ!?」


「茜ちゃん!?」



困惑した男に反撃の言葉を紡がせない、

畳み掛けをする茜。




「いきなり話しかけてきた、

 大してイケメンでもなんでもない人とデートとか、

 出来ると思っているんですか?

 私は今日、当麻君とデートするためにおしゃれして、

 当麻君を驚かせるために早めに来たの。

 いわば当麻君専用のMAX装備で来たのよ?

 それを面識のない相手にどうして向けられると思うの?

 女の子の気持ち少しは考えたことあるんですか?

 ましてやかわいこちゃんだなんて寒気がするんですけど?

 やめて欲しいんですけどそういう古くっさい口説き文句」



「あ、茜ちゃん、いや茜さん!

 言い過ぎ! ほら、男の人泣きそうだから!」



内容はトゲがあるものの激痛ではない。

問題なのは、人通りの多いこの場所で、

道行く者たちが足を止めて眺めることである。


攻める方はどうでもいいだろうが、

守勢は注目をあびるため、

いたたまれなさが凄まじい。




「この手の男子ってハッキリ言わないとわからないのよ。

 というわけだから、さっさと帰って下さい。

 ダッシュで。……ほら、早く!」



ぱちんと自分の手を叩いて、

脳みそが麻痺していた男に覚醒を促す。

「とにかくここから逃げ出したい」

という思いを足に込めて、

男は脱兎の如く走り去っていった。



「……茜、さん?」


「じゃ、行こうか当麻君!

 今日は何おごってくれるのかなー」


「あ、ええっと……。

 今日は……何が良いかな……。

 全然考えてなかった」


「えー? じゃあじゃあ、

 私が何を食べたいか当ててみてよ?」



他愛無い会話をしながら、2人は繁華街に向かう。





はたから見れば、

純粋に仲の良いカップルにしか見えない2人を、

黒騎は黙って眺めていた。



「あれがランクAか。

 ……至って普通の……いや、

 普通に可愛い部類か」



品定めと言う名の尾行。


黒騎はパチンコに行く間を惜しんで、

彼女を見定めようとしていた。



「しかし、パチンコ嫌いとか言っていたが、

 ……解せないな」



銀河の祝福というのは本来、

パチンコを好きな者が授かる。


「もっと回ってほしい」

「大当たり回数が見たい」


そういった祝福は全て、

勝ちたい者の夢想である。

願いが具現化したのが、

祝福なのだ。


しかし、嫌いな物に夢想など抱くはずもない。

それが黒騎の中で引っかかっていた。



「大概、銀河のことを知ったつもりでいたが、

 パチンコ嫌いな奴が祝福持ちだってのは、

 これまで一度だってなかった」



パチンコに行こうとすらしない。

当麻を引き連れたのは、

ステーキハウス。


肉食系だと黒騎は感じた。



「何の願いが元なんだ……いったい」



1回でも良いから大当たりしたい。

というのが願いなのかと最初は思っていた黒騎だが、

それならばパチンコが好きでなければならない。


その気のない茜に、

備わった理由。



「……もう少し見ておくか」



黒騎はステーキハウスに乗り込んだ。


正月のパチ屋は、辛い。

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