うちのねこ
うちの猫は変わっている。
夜空に浮かぶ月を毎日、見上げている猫なんてあまり聞かない。
満月にでも見上げているなら、何かロマンチックな雰囲気も出ようものだけど、どうもうちの猫は月の満ち欠けには関心がないらしい。
おまけに月が見えない夜でも、まるで月を探すが如くに空を見上げている。
一度、飼主である祖母に訊いてみたことがあった。
何故この猫は月を見ているのか、と。
祖母の答えはこうだ。
「大事な人を待っているから」
釈然としない思いがした。
何というか大事な部分が省かれている気がした。
再度訊ねると祖母は懐かしむように、こう答えた。
「人の温もりを知った猫は、生まれ変わってもその人を探し出すんだよ」
最後に、おじいさんの大事な猫だからねぇ、と付け加えてにこにことしていた。
祖母は祖父を亡くしてから随分と気が弱っているように見える。
昨日もずっと縁側で猫を撫でながら、祖父の話をしていた。
ちょっと心配だから明日は祖母の話の相手をしてやろう、と思う。
それにしても猫である。
祖母の話のせいでますます猫が気になり出す。
今夜も縁側でうちの猫は、じっと夜空の月を見上げている。
やはり
うちの猫は変わっている。
短いお話を書きたくて書いてみました。色々と濁してありますが、そこはご想像にお任せしたいと思います。そのために書いたお話でもあります。