見分けがつかない双子の王子 一方に溺愛されましたが見分けがつきません 少しずつ彼の事を理解しながら…そんな事を思って過ごしていたら大変な事に
「……やめて。痛いのは、嫌なの」
「全部お前のせいだ!! お前が来てから、何もかもがおかしくなったんだ!」
カストールが狂気に満ちた瞳で俺……いえ、私を睨みつける。
父の戦死、母の病、乳母の死。彼はこの国に降りかかる全ての不幸を、「物語の知識」を持つ私という存在に叩きつけた。
「私は魔女じゃないわ。ただ、この世界の行く末を少しだけ知っていただけ……」
「はっはっは! まただ! その戯言が国を滅ぼすんだ、この化け物め! 安心しろ、お前を殺して俺は英雄になる。ヘラクレスのようにな!」
彼が剣を振り上げたその時、もう一つの影が割って入った。
キン!!!!
「よせ、カストール! 反乱を煽り、内戦まで引き起こして、まだ罪を重ねるつもりか!」
「お前には分からんさ、我が弟よ。……いや、元・弟だったかな」
現れたのは、もう一人の王子。双子の片割れ。
二人は火花を散らし、互いの信念を剣に乗せてぶつけ合う。
「連中の口車に乗せられるな! 目を覚ますんだ、カストール!」
「黙れ! 魔女に唆された愚か者が! お前も同罪だ、ここで葬ってくれる!」
激しい剣戟の末、二人はもつれ合い、床に転がった。
「うぅ……お嬢様……これを」
負傷した護衛から、震える手でクロスボウを託される。
(落ち着け……落ち着くのよ。二人を救う術はない。せめて、私を愛してくれた方を……間違えてはいけない……)
髪型は乱れ、姿形は全く同じ。だが、私を殺そうとする憎悪と、私を守ろうとする慈愛は、その行動に如実に現れていた。
「くたばれーーー!」
一人が相手に馬乗りになり、狂乱の叫びと共に短剣を振り下ろそうとする。
(……いま、馬乗りになって殺そうとしている方よね。口調なんて聞かなくても、もう明白だわ)
私は引き金に指をかけ、冷たく息を吐く。
カチッ……シュン!
鋭い矢が空気を切り裂き、狂気の王子の喉を正確に貫いた。
グサッ……バタッ。
静寂。
血の海の中で、私はただ、重くなったクロスボウを握りしめていた。
正しい……方だった……はず……。
(完)




