7.奥様のお務めは分からないので、魔王の務めをしました。
「――貴族間の初夜の重要性は勿論存じております。ですが、奥様はお身体が大変華奢でございます。まずは旦那様ときちんとお話をして交流を深めましょうね。奥様がお嫌でしたら、旦那様から距離を取って構いません」
メイド長のダリアは何故か涙を浮かべて僕に言ってきます。
目が覚めたら何故かお医者さんの診察を受けていました。
純潔の証明は出来ました。…噂を気にしたのでしょうか?
あ、でも。何もなかったのは良くないのでは?
その割には皆さんやけに優しいです。
「僕は丈夫なので平気…あっ」
また『僕』と言ってしまった。
「奥様の言いたいように仰って構いませんよ」
ここのメイド長は鞭とかで叩かないようです。僕の手を包むダリアの手は温かいです。
平民女の娘だと言って沢山叩く、リッツ伯爵夫人と伯爵令嬢から庇ってくれたお爺さん執事やメイドさんのようです。
僕を庇って辞めさせられました。…元気でしょうか、心配です。
「あと、旦那様は優しい人なので、僕は大丈夫です」
「――奥様は寛容なのですね。…さあ、何も召し上がっていませんでしょう?部屋に食事を持って来ますのでお待ちくださいね」
この辺境ゼフェスゾームは寒い地域なので、領主夫婦は自室で温食を摂るそうです。
「?旦那様は一緒に取らないのですか?」
「…ええ、お忙しいので。カレン、奥様をお願いね」
ダリアは笑顔ですが、旦那様の事を聞くとちょっと怖くなりました。何ででしょう?
僕の前にあるのは薄く切ったライ麦パン、目玉焼きに生ハムを添えたもの、焼いたブルスト、野菜たっぷりのスープ、熱々の紅茶。
(パンが…ふわふわ…‼カビもない…あったかいスープまで……)
紅茶の水色が澄んでいて綺麗です。いい香りがします。
全部食べて良いか聞くと、カレンは少し驚いてどうぞと言ってくれました。
取り敢えずふわふわのパンとスープを一口ずつ食べました。ですが。
「奥様?奥様!?」
僕はカトラリーを落としてテーブルに突っ伏してしまいました。
お腹がいっぱいなのを忘れていました。
奥様の――あと魔王の仕事として、旦那様の魔障痕を食べましたから。




