11.妻が魔王の呪いを食べた
ダリアとカレンはグスグスと泣いていた。
料理長も涙ぐんで他にどんなものが好きかアヌシュカに聞いている。
「僕の好きなごはんは、えーと…父のスープと、母が頑張ったドロドロと、爺やさんの生姜湯と、メイドさんのくれた飴と…」
途中不可解なものを言っていたが、オルトスは咳払いしダリアが距離を取らせつつだが、アヌシュカに近づき話しかける。
「昨夜はすまなかった。もっと貴女に配慮するべきだった」
「?旦那様は優しいですよ?」
「奥様を言いなりにさせませんよ、近づかないでください」
「ダリア?旦那様とはお話ししただけですよ?酷いことは無いですよ?」
こてん、と首をかしげる、無表情だが純真無垢な瞳。
(…彼女の感情が育つまではここで保護をした方がいいだろうが…、俺にかけられた呪いが彼女に危害を加えるならば、バーンベルク女侯爵の元で保護してもらうか……。
一先ず、便宜上でも彼女がそう認識している役目を…取り上げるのは良くないだろう)
「困ったことがあれば、ダリアたちに遠慮なく申し付けて構わない。
――妻アヌシュカ・ベルンシュタインよ。これからよろしく頼む」
「?はい」
魔王殺しの英雄が、魔王を妻にした瞬間だった。
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「ちなみに、奥様。何で主を噛んだんです?主にそう言われたんですか?」
「ミュゲ‼」
ダリアが怒っているが、オルトス自身も聞いておきたい。
呪いで記憶を失ったなら対策を考えねば……
「旦那様の呪いを吸い出して食べていました」
場を沈黙が支配した。
「呪いを…吸った……」
「はい。少しは痛いの、無くなりましたか?」
確かにあの痛みは薄らいでいるが――
「医者を呼べ‼それと魔術師に連絡だ‼」
大慌てするオルトスたちをアヌシュカはキョトンと見ていた。




