8話 アミカちゃんの観察眼も大事なかわいさ!
「ミメンの実は、鉄でなくては壊せないほどの殻に包まれている。腕の見せ所だよ、諸君」
そう言って、エルカ先生は生徒たちをちらりと見る。私とも、目が合った気がする。
ひとまず、どうすれば壊せるのかを考えないと。魔導石を叩きつけたら、割れたりしないかな。なんかシワシワの見た目をしているし、いけちゃったりして。
いや、ダメだよね。万が一魔導石が壊れちゃったら、おしまいだもん。それに、人からもらったものを壊すのは、かわいくないよね。
そうなってくると、別の策を考えないといけない。まずは、周囲を観察しよう。誰を落とすか、それか何を使うかを考えないと。
すぐには何も思いつかなくて、爪を噛みそうになっちゃう。指がちょっと動いたくらいで、抑えたけれど。
落ち着こう。アミカちゃんはかわいい。だから、どんな状況だって乗り越えられるよ。今までみたいにね。
軽く、息を吸う。そして、ゆっくりと吐き出したよ。
「あたしなら、楽勝ね! この程度の試験で、止まったりしないわよ!」
ミスティアちゃんは、親指と人差し指でミメンの実の殻を潰していたよ。パキって音がして、ちょっと気持ちいいかも。魔力が高いから、できることなんだろうね。
楽しそうにニコニコと笑っていて、気持ちよく壊しているのが分かるね。自信満々なお嬢様って感じだよ。
アミカちゃんとは、だいぶ違うね。ちょっと助けたくなるかわいさが、アミカちゃんの色だから。
ミスティアちゃんの実力は、本物だと思う。輝く存在なんて言っているだけあって、ランクも高いみたい。輝く存在っていうのも、嘘じゃないみたいだね。
もちろん、アミカちゃんの方がキラキラだけど。昼間には、星の輝きは打ち消されちゃう。それと同じだよ。
とはいえ、ミスティアちゃんに頼るのは難しいかな。代わりにこなしてもらうのは、輝きには繋がらないって判断されるだろうし。どうにか落とすにしても、別の状況じゃないとダメ。
ひとまず、他の人を見ていこう。いま一緒にいるのは、おもちゃの人と俺様の人。そのふたりを、優先的にかな。
「うーん、結構力がいりますね。これは、疲れるなぁ……」
次は、おもちゃの人を見ていくよ。両手で体重をかけてミメンの実を押して、潰しているみたい。歪んだ形の殻が残っていたよ。そうしながら、隣にある何かを時々見ている。
目線の先には、おもちゃがあったよ。鉄の棒みたいなものが、上下に動いているね。
横についた鉄の腕みたいなものが回っていて、それと上下の動きが連動しているみたい。鉄の棒の横に細い物が出ていて、それが細長い枠の中を上下に動いている感じ。たぶん、回転を上下の動きに変えているんだと思う。
カンカンと下に降りるたびに鳴っていて、ちょっと眉をひそめている人も居るかな。
なんか、ちょっと楽器を思い出したかも。こんな感じでカンカン鳴るもの、あった気がする。
押して壊すペース的には、60個を壊せる感じじゃない。普通に30個は壊せそうだけど。
私の分を足したら、絶対に間に合わないよ。少なくとも、おもちゃの人に代わりに壊してもらうことはできないかな。
あるとすれば、鉄の棒を使うことだけれど。どうやって借りるかも含めて、保留でいこう。
「ふん、こんなものか。俺様を満足させる試験は、出てこないな……」
俺様の人は、ミメンの実をぎゅっと握って壊していく。パラパラと手から破片がこぼれて、中身も出てくるよ。
顔を見る感じ、本当に退屈そう。目がよそを見ているし、ちょっと口を引き結んでもいるから。
ペースだけ見ると、60個を壊しても余裕だとは思う。でも、だからこそ手伝ってもらうのは難しいかも。
簡単なことで褒めても、絶対に納得してくれない。そもそも、いっぱい壊すのは難しそうじゃない。挑発をするにしたって、いくらなんでも簡単すぎると思う。
壊し方の指定をするのも手だけど、そこまで難しいことは思いつかない。指一本で壊すとか、数と何の関係もないことも気になるかな。
アミカちゃんなら、どんなかわいさを褒められても笑顔で受け入れちゃうんだけどね。それも、かわいさだから。
総合的には、俺様の人に頼るのは難しいかなって思うよ。手伝ってもらうための言い回しが、何も思いつかないからね。
だからって、周囲を見回しても代わりになりそうな人はいない。ギリギリのペースだったり、あんまり落とせなさそうだったり。
「うーん、やっぱり疲れるなぁ。もうちょっと良い方法があれば、僕も楽しそうなんだけど」
やっぱり、おもちゃの人が鍵だと思う。楽しい何かを示すことができれば、協力してもらえるはずだよ。ただし、代わりに壊してもらうのはダメ。どうにか、うまく壊す手段を見つけられれば話は別なんだけどね。
そうなってくると、鉄の棒かな。もしかしたら、他のおもちゃも持ってきているかもしれないよ。とにかく、おもちゃの人を軸に考えよう。他の手段は、今は捨てちゃう。
かわいさのためには、選択肢を絞るのも大事だから。色気のあるかわいさと清楚なかわいさが同時に出せないみたいに、欲張り過ぎたらかわいさが消えちゃうからね。
アミカちゃんは、かわいさのプロ。安易なかわいさの誘惑には、負けないんだから。
上下に動く鉄の棒を見ながら、今回の課題について考えていくよ。ミメンの実は、鉄でなくては壊せない殻に包まれているんだよね。
鉄なら、いま目の前で動いているけれど。あっ、そうだ! 上下にカンカンしているし、もしかしたら壊せないかな。
ただ、カンカン鳴っているって程度で、全力でハンマーを叩きつけるよりは弱いと思う。壊せるかどうかは、まだ怪しいかも。
でも、方針は決まったね。鉄の棒を借りて、どうにかミメンの実を割っちゃおう。置き方とかを工夫したり、ちょっと何かをくっつけたりしたら割れちゃうはずだよ!
今こそ、アミカ・ショウタイムだよ! おもちゃの人を、どうにか説得してみせるんだから!




