6話 クロエちゃんの圧倒的な実力!
昨日、クロエちゃんとペアを組んだ。今日から、ユミナス学園の授業が始まる。
メイドのソフィさんに起こされて、朝ごはんを用意してもらったり。魔導石を使って、しっかりと肌のお手入れをしていったり。
退学になるかもしれないから、しっかりと準備をして向かうよ。
「これ、お弁当。お昼に、食べてちょうだい。きっと、悪くない味よ」
「ありがとうございます。ソフィさんの料理なら、間違いなく美味しいですよ。そう信じています」
「……そう、ね」
ソフィさんは、うつむいてしまった。褒め方が悪かったのかな? 私としては、うまく褒めたつもりだったんだけど。間違っていたのなら、ちゃんと修正しないとね。
かわいさは、日々の努力によって成り立つもの。それは、いつだって変わらないんだから。
ソフィさんは私の方を向いても、目を合わせようとしない。そのまま、切なそうに話してきたよ。
「アミカさん。どうか、私を信じないで。あなたが私を信じたら、きっと……」
そう言って、言葉を濁す。スカートの裾を、震えながら握りしめていたよ。きっと、言えない理由があるんだと思う。
でも、私の答えは変わらないよ。何がかわいいかなんて、分かりきっているんだから。アミカちゃんはかわいさの化身。それが、この世界の真実なんだよ。
だから私は、ソフィさんの手をぎゅっと握って、優しい笑顔を見せたんだ。
「私は、ソフィさんを信じます。もし何か嫌なことをされても、理由があるんだって。だから、大丈夫です」
「アミカさん……。ごめんなさい。不安にさせるようなことを言ったわね」
まっすぐな目で告げられた言葉は、ソフィさんの気づかい。アミカちゃんは、ごまかせないんだから。
きっと、お父さんあたりに変なことを命令されているんだと思う。
だけど、私は信じるだけだよ。魔導石を持ってきてくれたのも、ずっと私のお世話をしてくれたのも、新人さんの態度に怒ってくれたのも、全部ソフィさんなんだから。
だから、もう話はおしまい。それがお互いのため。笑顔だけ向けて、学園に向かったんだ。
教室にたどり着くと、クロエちゃんのところに向かう。笑顔で手を振ってくれたから、私も同じように返すよ。もちろん、私の方がいい笑顔になるように。
そして、隣の席に座る。私たちは、ペアだから。
「アミカちゃん、心配しなくていいからね。私が、退学になんてさせないから」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です。もしダメでも、クロエちゃんを恨んだりしません。むしろ……」
「私が選んだ道だから。そもそも、アミカちゃんが居なかったら入学式に間に合わなかったんだよ」
じっと、私の目を見つめてくる。揺れることのない瞳に、強い意志を感じたよ。
クロエちゃんは、本当に優しい人。ペアとかどうとか抜きにしても、ユミナス学園に入るべきだった人。
だから、私だってできることをするんだ。アミカちゃんかわいいテクニックを全力で活用して、クロエちゃんを支えてみせるよ。魔法では、きっと役に立てないけれど。それでも。
恩を受けておいて何も返さないなんて、かわいくないんだから。簡単な話だよ。
「なら、一緒に頑張りましょう。魔法以外で困ったことがあったら、なんでも言ってください」
「ふふっ、頼らせてもらうね。アミカちゃんには、きっといろいろ助けてもらうから」
「どれだけだって、助けますよ。私たちは、ペア。つまり、パートナーなんですから」
そう言っていると、エルカ先生が教室に入ってくる。教室をちらりとながめる姿が、目に入る。なんとなく、目が合った気がしたよ。
一通り見回した後、落ち着いた様子で話し始めたんだ。
「さて、今日からが授業となる。言った通り、ペアでの課題だ。まずは、演習場に向かうとしよう」
先生は、言い終えてすぐに歩き出す。私たちも、並んで着いていったよ。
校庭の広い空間を切り取ったような演習場には、大きな岩がいっぱい並んでいた。両手を広げた人3人分ずつくらい、離れているみたい。これが、今回の課題と関係しているのかも。
整列した私達の前で、さっそくエルカ先生は説明に入る。
「まずは、それぞれの岩の前に並んでもらおう。各生徒の前にある岩を壊せたペアから、合格とする」
そう言われて、私たちは指示された通りに並んでいく。触れられるくらいの距離に岩があって、ちょっと見上げちゃいそうなくらい。
隣には、クロエちゃんの顔があったよ。目が合ったら、軽く手を振ってくれた。
でも、大丈夫なのかな。魔導石では、どう考えても岩なんて壊せないけれど。
ひとまず、周囲の様子を見る。いろいろな形で、岩を壊そうとしている人が居たよ。
「あたしなら、楽勝よね。ま、軽くやっちゃいましょ」
「ふん。俺の努力が、よく形になりそうだな。強くなりたいものは、目に焼き付けておけ」
ミスティアさんは光を手のひらに集めていて、王子様は槍に光を集めていた。たぶん、魔力を収束しているんだと思う。
そして、ミスティアさんは岩に触れて、王子様は槍を叩きつけて、それぞれに岩を壊していたよ。
他の人たちも、目の前の岩に向けていろんなことを試しているね。
「僕だって、これくらいなら簡単に……!」
「ふむふむ。ここが弱くなっているんですね……僕なら、こうやって……」
「俺様なら、なんてことないな。いっそ、この拳を叩きつけてやろうか」
魔法をぶつけようとしていたり、岩をよく観察していたり、なんか殴ろうとしていたり。それぞれの形で、岩を壊そうとしている。
私には、何もできそうにない。この場から動けないから、かわいいテクニックで先生から合格を引き出すのも難しそうだし。
どうしよっかな。そう考えていたら、声が聞こえてきた。
「アミカちゃん。ちょっとだけ、離れてくれる? 念の為だけど、危ないかもしれないから」
クロエちゃんに言われた通りに数歩下がると、光が岩を包み込む。少しだけ音がして、光が消える。そうしたら、もう岩は残っていなかったよ。
たぶん、クロエちゃんの魔法なんだと思う。何が起こったかすら、分からなかったよ。衝撃がこちらに飛んでこないってことは、とてつもなく精密な魔法なんだと思う。岩を消し去るほどの威力なのに。
クロエちゃんの顔を見ると、笑顔でガッツポーズをしてくれたよ。私は、ペコリと頭を下げたんだ。ゆっくりかわいく、穏やかさが伝わるようにね。
「ありがとうございます、クロエさん。とっても、凄いんですね」
「これくらいなら、簡単だよ。アミカちゃんのパートナーは凄いんだって、よく分かったでしょ?」
ウインクまでしてきて、かなり機嫌が良いように見える。私も、にっこり笑顔で返したよ。
クロエちゃんとなら、どんな課題だってこなせちゃうかも。そんな気すらしてきたんだ。
しばらくして、エルカ先生がやってきた。じっと私たちを見ながら、話し始めたんだ。
「さて、次の課題は昼食後だ。その前に、大事なことを説明しよう。次回以降、それぞれのペアは分かれて課題をこなしてもらう」




