31話 最後まで貫き通して
王子様の雷が、カイン君の前に飛び出した私に向かってくる。直撃する寸前に、弾け飛んでいったよ。一条の雷が、まるで霞みたいに。鉄にぶつかった綿よりも、あっさりと崩れ去っていく。
何も言われなくたって、当たり前に分かる。クロエちゃんが、守ってくれたってこと。
「まだ、終わりじゃないです! カイン君、立ってください!」
「お前に、何ができる! 自分で戦うこともできない弱者に!」
王子様は、私を強くにらみつけてくる。槍を震えるくらい握りしめて、明らかな怒りを感じさせる姿で。
往生際の悪いあがきに見えるのかもね。きっと、周りで見ている人たちも同じなんだと思う。
だけど、私にはクロエちゃんが居る。カイン君が居る。ソフィさんも、みんなも居るんだ。できることは、まだまだあるよ。
クロエちゃんの方を見る。満開の笑顔で、頷いてくれたよ。
今、私たちの気持ちは同じ。王子様が何をしたって、絶対に負けない。クロエちゃんは、どんな攻撃からも私を守り抜いてくれる。
それなら、私にできることは。カイン君が立てるように、守り続けること。そうでしょ?
王子様のことなんて、もう見ない。私は、背中を向けてカイン君に向き合ったんだ。そっと、手を伸ばしながら。
「まだ、やれますか? ここで、諦めますか?」
後ろから、雷が飛んできているのが分かる。激しい雷鳴と、それが打ち消される音が飛んでくるから。ビリビリと、お腹がしびれるくらい。
だけど、私は大丈夫。クロエちゃんなら、確実に私を守りきってくれるから。
私は、カイン君の手を取ったよ。少しでも、立ち上がりやすいように。そっと、力を込めながら。
「まだ、終わっちゃいねえ……。だが……」
ふらふらになりながら、カイン君は私の手を取って立ち上がる。その瞬間、倒れ込みそうになってきたよ。もう片方の手で、なんとか支えたけれど。
カイン君は、立っているのも苦しいみたい。いろんなところに、火傷の跡があるくらいだから。
でも、目はまだ燃えている。諦めてなんか、いない。私には分かるよ。魔力さえあれば、これからも戦えるって。
「カイン、諦めるつもりか! 僕の代わりに、戦っているんだろう! 勝て! 勝ってみせろ! アミカさんのために!」
「が、頑張って! カイン君が勝てば、それで全部解決なんだ!」
「僕たちの想いも、背負っているんでしょ! 負けないでください!」
スミス君も、マイケル君も、ローランド君も。喉が枯れそうなくらいの大きな叫び声を上げていたよ。見なくても、必死な顔だって分かる。
カイン君は、ちょっと唇を釣り上げていたよ。まだまだ、心は折れていない。そうでしょ?
なら、私にもできることがある。カイン君が立ち上がる道は、私が用意してあげるんだから。
懐に隠した魔導石を、カイン君にそっと手渡す。ひとつひとつ、確実に。そして、私は穏やかな笑顔を見せていったよ。信じる気持ちが、伝わりやすいように。
「そこから、魔力を受け取ってください。きっと、立ち上がる力になってくれます」
「させると思うか! 貴様の好きなように!」
王子様から、雷が飛んでくる。私は、カイン君の盾になったよ。またバチンと弾ける音がして、雷が消え去っていく。
回り込もうとしても、私が通さない。通してあげない。どれだけカイン君を狙ったって、関係ないよ。
王子様は、カイン君の方に手を向けて、私の顔面に雷を飛ばしてくる。さっきまでと同じフェイントみたい。
でも、無駄だよ。後ろを見るまでもないかな。私は、ただカイン君を守り続けるだけ。クロエちゃんを信じ抜くだけ。
いっそ、カイン君の魔力が回復するまでに、もっと消耗してほしいな。そうすれば、楽に勝てるでしょ?
アミカちゃんかわいいテクニックその2! どんな時でも、絶対にかわいさを貫き通すこと!
私のかわいさを、どこまでも信じ抜いてみせるんだから。
そう決意を込めて、輝くような笑顔を浮かべたよ。
「私たちは、勝ちます! みんなで! 手を取り合って! 私たちの絆で!」
「寄生虫が、絆を語るな! 知ったような口で!」
さっきまでより強く、私をにらみつけていたよ。何か、認めたくないことがあるみたいに。カイン君すら、見なくなるくらいに。
でも、良いよ。私には、傷ひとつ付かないから。カイン君が回復する時間を、引き出してくれるだけだから。
「どこまで、無駄なあがきを続けるつもりだ!」
王子様は、私に槍を突き出してくる。当たり前みたいに、手前で止まる。顔を歪めながら押し込んでいても、ピクリともしない。絶対に私には届かない。何よりも雄弁に伝えてきたよ。
クロエちゃんの方を見ると、目が合った。何も言わずとも、言葉が浮かんできたんだ。きっと、同じ気持ちだって。
「「どこまでも!」」
完璧に、声が揃ったんだ。私たちの絆を、友情を、証明するみたいに。どこまでもつながっているって、誰にだって分かるくらいに。
王子様は、苦虫を噛み潰したような顔をしていたよ。苦しそうに、歯を食いしばりながら。
そして、また王子様は槍を突き出してくる。それを、横から剣が弾く姿が見えた。キインという甲高い音が響き渡って、つい目が引き寄せられる。
もちろん、その先にはカイン君が居たよ。剣を構えて、不敵に笑いながら。
「最高のガッツを見せてくれたな、アミカ! 今度は、俺様の番だ!」
相変わらず、カイン君はボロボロ。だけど、今までで一番燃え上がっているように見えたんだ。どんなお城よりも、堅くたたずむような姿だったよ。




