28話 かわいさで勝っちゃうんだから!
今日は、王子様との決闘の日。まだ朝だから、少しだけ時間はある。私は、ローランド君に借りた道具を見ながら先のことについて考えていたよ。
負けてしまったら、みんなとお別れ。そんなの、絶対に嫌。私のかわいさは、みんなだって輝かせてくれるんだから。
「アミカさん、ご飯ができたわよ。しっかり食べて、頑張ってきて」
ソフィさんの用意してくれたご飯を食べて、大事な気持ちを思い出していく。ソフィさんの優しさも、クロエちゃんの友情も、助けてくれるみんなの想いも。
温かいスープが、温かい気持ちをくれる。飲み込みながら、しっかりと味わっていくんだ。
みんなが支えてくれるのなら、私はもっとかわいくなれる。だから、今日も最高に輝く私を見せるんだ。それが、一番のはずだよ。
部屋にノックがして、私が出る。そこには、クロエちゃんが居たよ。明るい笑顔を向けてくれているけど、きっと心配してくれたんだよね。
私は、とっても素敵な友達を手に入れられた。だから、手放さない。それが、私のかわいさだよ。
そう信じて、私はとびっきりに弾ける笑顔で返したんだ。
「アミカちゃん、今日は頑張ろうね。私だって、アミカちゃんの力になってみせるよ」
クロエちゃんは、ぎゅっと両手を握って言ってくれたよ。心から、私のために全力を尽くそうとしてくれている。
だからこそ、私も応えるだけ。全身全霊をかけて、勝利をつかみ取るだけ。
そう。私は、クロエちゃんを信じ抜いてみせるよ。だから、最後の確認。答えなんて、分かっているけれどね。
でもきっと、私たちにとっては大事な儀式。なんとなく、そう思ったんだ。
私は、そっとクロエちゃんの手を握ったよ。
「クロエちゃん、私を守ってくれますか? 王子様に勝つために、助けてくれますか?」
「どんな魔法が撃たれようと、絶対にケガなんてさせないよ。約束する」
まっすぐに私を見つめて、深く頷いてくれる。
クロエちゃんが居てくれる限り、私は絶対に傷つかない。そう、心の奥底から信じられる。
王子様がどんな手を使ってきても、負けたりしない。クロエちゃんに返す頷きに、誓いを込めたよ。
「なら、安心ですね。見ていてください。絶対に、勝ってみせますから」
「約束だよ。一緒に卒業できなくちゃ、意味なんてないんだから」
そして、私たちは指切りをしたんだ。絶対に勝つってこと。これからも友達だってこと。一緒に卒業してみせるってこと。いろんな想いを込めた約束を。
私たちは、グラウンドへ向かっていく。一歩一歩、確かに足を進めて。
その先で、王子様は待っていたよ。腕を組んで、堂々と。私を見て、鼻を鳴らして。
他のみんなも、もう来てくれているみたい。私は、カイン君に手を振ったよ。腕を組みながら、唇を釣り上げて返される。気持ちの準備は、万端みたい。
残りのみんなは、私のところに応援にやってきてくれたよ。
「あ、アミカちゃん。頑張って……。これ、少しは役に立つかも……」
「全校生徒の、三分の一。確実とは言えないが、保険になってくれるはずさ」
マイケル君から渡された嘆願書には、私の退学を中止にしてほしいって人たちの署名があった。
その中には、もちろんみんなの名前もある。他にも、荷物を運ぶのを手伝った子や、散らかしちゃったものを一緒に掃除した子も居たよ。
やっぱり、私のかわいさはみんなにも通じたみたい。署名を抱えながら、胸があったかくなるのを感じたんだ。
でも、勝つのが一番だよね。それが、みんなの気持ちに応えるってこと。かわいいってことだよ。
「頑張ってね、アミカさん。僕だって、まだまだ話したいことがあるんですから」
「アミカ君は、私の人生に光を灯してくれた。ここで去るべき生徒ではないとも」
ローランド君も、エルカ先生も。私を認めてくれて、大事にしてくれているよ。優しい顔から、気持ちが伝わってくるんだ。
だから私は、まっすぐに王子様のところへ進んでいったよ。カイン君も、隣に並んでくれたんだ。
王子様は、また鼻を鳴らしていたよ。
「なんだ。お涙頂戴では、この決闘を止めたりしない。お前は今でも、他者に頼るだけなのだから」
王子様の気持ちは、変わらないみたい。でも、一応やっておくべきかな。
アミカちゃんのかわいさで、王子様を止めること。たぶん無駄だけれど、大事なことだよ。
腕っぷしで全部を解決するのは、アミカちゃんのかわいさじゃないからね。言葉と演技で、人を動かす。それが、中心なんだから。
ただ、私が一歩を踏み出す前に、フィリアさんが前に出てきたよ。そして、穏やかな笑顔で話していくんだ。
「アミカさんが負ければ、退学。ディーハルトが負ければ、何を差し出しますの? ねえ、答えなさいな」
「土下座でもなんでもしてやろうじゃないか。靴を舐めたって良い。負けたのなら、な」
「足りませんわね。退学に釣り合うものとは、とても。そうですわね。下水で、顔を洗いなさいな。それならば、認めましょう」
王女様は、穏やかな笑顔のまま。それなのに、とんでもない圧力を感じたよ。魔力が凄いからなのかな。
軽く、王子様は震えていたよ。なら、少しだけ。私のかわいさを、見せてあげる。
「そんなこと、しなくていいです。ただ、私を認めてさえくれるのなら」
「この期に及んで、同情を乞うているのか? 良いだろう。下水でもなんでも、好きなもので顔を洗ってやろうじゃないか」
笑みを浮かべながら、王子様は返してきたよ。これはもう、白黒ハッキリつけるしか無いみたいだね。
クロエちゃんの方を見る。真剣な顔で頷かれる。カイン君の方を見る。ガッツポーズで返してくれたよ。
私は、王子様に向き直ったんだ。そして、宣言していくよ。私の気持ちを。
「絶対に、勝ってみせます。みんなに、力を借りているんですから。みんなと、未来を過ごしたいんですから。クロエちゃん、カイン君。お願いします」
頭を下げると、クロエちゃんはバッチリな笑顔で、カイン君は不敵に笑って返してくれたよ。
「アミカちゃん、好きに戦って。私が、絶対に支えてみせるから!」
「ああ。アミカのガッツに、俺様だって応えねえとな!」
私も、笑顔で返す。王子様は、また鼻で笑ったよ。
「結局、お前は何も変わりはしない。ただ他者にすがり、媚びるだけ。いい加減、見苦しい。さっさと始めようか」
「アミカのガッツが分かんねえのなら、てめえはその程度なんだろうぜ。なあ、王子様よ」
カイン君は、剣を突きつける。王子様は、また鼻で笑って槍を構える。
しばらく、静寂が走ったよ。冷たい戦いが、もう始まっているみたい。
息を呑むほどの沈黙の中、フィリアさんの声が響いたんだ。
「では、はじめ!」




