24話 どこまでも広がっていくかわいさ!
王子様は、今は私のことを嫌っているみたい。でも、これから好きにさせちゃえば良いだけだよね。
私のかわいさは、どんな人だってメロメロにしちゃうんだから。どんなお姫様よりも、素敵なんだよ。
今日は朝から簡単な授業だから、これを機会に話をしちゃおう!
お互いのことを知っていって、仲良くなっちゃえば勝ち。そうだよね。
エルカ先生は、気をつけろって言っていたよ。でも、だからこそ動くべきなんだ。何もしないままじゃ、もっと嫌われるだけ。私は、よく知っているんだから。
好かれるための努力をしなくちゃ、何も始まらない。待っていても、何も変わらないよ。
昨日の今日だけど、さっそく動き出さなくちゃね。それが、かわいいってことなんだから。
決意を胸に登校して、クロエちゃんに挨拶をする。穏やかな笑顔で返してくれたんだ。
そして、すぐに王子様のもとへ向かっていったよ。
ちょっと頬を緩めて、目線は上に。愛らしい笑顔で、話しかけていっちゃう。
「王子様、困っていることはないですか? 私にできることなら、付き合いますよ」
すぐに、にらみつけられちゃった。とても冷たい気配が漂っていたよ。やっぱり、嫌われているのは確かみたい。
でも、第一印象が悪いだけ。これから挽回していけば、しっかりと私のかわいさは伝わるんだから。
みんな、最終的には私を好きになっちゃう。幸せになっちゃう。それが、アミカちゃんのかわいさなんだよ。
王子様は、舌打ちをする。それでも、私はニコニコするよ。まずは、好意的に接すること。アミカちゃんの黄金のテクニックなんだから。
そうしたら、また舌打ちをされたよ。そして、私を見下ろすように見てくる。
「今度は、俺の権力を利用するつもりか? 甘い考え、ご苦労なことだ。いっそ感心するよ」
それだけ言って、王子様は後ろを向いて去っていく。私のことを、振り返りもせずに。
ちょっと、困っちゃったかも。ただ話しかけるだけでは、同じようになるだけだよね。
でも、前を見るんだから。私は、うつむいたりしないよ。それこそが、未来を切り開いてくれる。ソフィさんやクロエちゃんが教えてくれたことなんだから。
「大丈夫だった、アミカちゃん? 最低だよ、あの人。アミカちゃんの気持ちも知らないで……」
クロエちゃんは、じっと王子様の去っていった方を見ていたよ。
私のことを、心から心配してくれている。それが分かって、胸が暖かくなったんだ。
だから、私は大丈夫。クロエちゃんが、いつでもそばで支えてくれるから。王子様にだって、私のかわいさを届けるだけ。
「クロエちゃん、ありがとうございます。私を、守ろうとしてくれているんですね。あっ……」
「どうしたの、アミカちゃん?」
クロエちゃんと同じ場所を見ると、目に入ったものがあった。
王子様の去っていった方から少し右くらい。道具を落として汚しちゃった人がいるみたい。液が入ったものをこぼして、周りの道具にかかったみたいだね。
「ごめんなさい、クロエちゃん。ちょっと、行ってきますね」
私は、掃除用具入れから雑巾を取って、その人のところに向かっていったよ。
王子様のことを考えるのも大事だけど、これも大事なかわいさ。
私は、かわいく居続けなくちゃいけないからね。困っている人を見過ごすのは、かわいくないかな。
座り込んで片付けようとしている人に、目を合わせる。そして、落ち着いた笑顔を見せて行くよ。満面の笑みじゃなくて、ちょっとだけ唇を広げて。
「手伝いますね。どれが、一番大事ですか?」
「ペン、かも……」
そう言われたので、まずはペンを手に取ったよ。力を入れず、ゆっくりと拭いていく。
人の大事な物は、本人と同じかそれ以上に大事にする。そういう姿勢は、やっぱりかわいいから。
細かく丁寧に、少しの汚れも見逃さない。それでも、優しく傷つかないように。
拭いていると、クロエちゃんもやってきてくれたんだ。
「私も、手伝うね。えっと、これから始めて良いかな……」
慣れない手つきで、クロエちゃんも道具を拭いていた。本人も、雑巾を持ってきたみたい。
3人でやると、すぐに終わったよ。困っていた人は、明るい笑顔を見せてくれたんだ。
「ありがとうございました……。優しい人たちが居てくれて、助かったかな……」
ペコリと頭を下げて、席に戻っていったよ。私たちは、手を振って自分の席に戻っていったんだ。
あっ、良いことが思いついたかも。王子様の大事な物を、私も大事にするのはどうかな。たぶん、努力だと思うんだけど。
それなら、鍛錬を手伝うのはどうかな。汗を拭いたり、飲み物を差し出したり。
やっぱり、アミカちゃんのかわいさはどこまでも広がっていくんだよ。誰も、止められないんだから。
王子様はきっと、いろんな時間に訓練をしているはずだよ。放課後に、探してみよう。
エルカ先生は、今日からクロエちゃんとペアで授業が受けられるようにしてくれたよ。
いっぱい手伝ってもらったよ。けど、魔法のいらない細かい作業とか、他の人との交流とかは私も手伝ったんだ。
魔法が基本の授業だから、そこまで役には立てなかったけれど。
でも、クロエちゃんはずっと笑顔で居てくれたよ。それが、一番大事だよね。
私たちの関係は、助け合うだけじゃない。ただ一緒にいることが、幸せなんだから。
間違いなく、クロエちゃんも同じ気持ちだよ。私が笑顔になったら、クロエちゃんも笑顔になってくれるんだもん。
エルカ先生に当てられた時は、手を振ってみたり。ちょっとだけ唇を細めて、返してくれたんだ。
そしてやってきた放課後。私は、王子様にこっそりついていく。すると、グラウンドで槍を振りながら、何度も的に魔法を撃っていたよ。
的から遠い時は首をひねったり、槍に合わせて魔法を撃ってみたり。汗をかきながら、それでもずっと。
やっぱり、努力家なんだなって。放課後なんて、遊んでいる人もいっぱい居るのに。
だからこそ、アミカちゃんのかわいさが活きてくるんだから。努力のお手伝いをすれば、きっと嬉しいって思ってくれるはずだよね。
私はタオルと飲み物を用意して、王子様のところに向かっていったんだ。
鍛錬の邪魔をしないように、一段落するまで待つ。ちょっと座って休憩しだした時に、私は駆け寄っていったよ。
こういうのも、大事な演出。ただゆっくり歩いていくより、本気が伝わるんだから。
「王子様。これ、タオルと飲み物です。ゆっくり、休んでくださいね。他にも手伝えることがあったら、言ってください」
アミカちゃんかわいいテクニックその30! 手伝いをする時は、ちょっとだけ手を貸してから指示してもらうこと!
最初から指示を聞くと、気が利かないって思われちゃう時もあるんだ。
なんでこんな事も言われないとできないのか、とかね。
「いや、必要ない。お前の狙いはなんだ? 今度は、俺の力に頼って試験を乗り越えるつもりか?」
王子様は、腕を組んで私を見下ろしてくる。タオルも飲み物も、受け取ろうとすらしない。
でも、まだ諦めちゃダメ。私は、絶対に負けないんだから。王子様が私を嫌いなままだったら、今度こそクロエちゃんと引き離されちゃうかもしれない。
それは、嫌だから。私は、クロエちゃんと一緒に頑張る。そして、一緒に卒業するんだから。
「違います。私はただ、王子様の頑張りを手伝いたいなって思っているだけです」
「アミカ。お前は、ただ誰かに寄生するだけだった。カインに小竜を倒させ、クロエを盾として使って。今度は、俺の努力を利用するだけか?」
どこまでも低くて、冷たい声。それが、私に襲いかかってきたよ。
確かに、私は誰かに手伝ってもらった。それでも、みんなだって満足しながら付き合ってくれたんだ。
でも、王子様にとっては違うのかもしれない。それは、どうしてなんだろう。
もしかして、エルカ先生みたいに悩みを抱えているのかな。なら、私が解決してあげれば。
私は、王子様の目をまっすぐに見たんだ。じっとにらまれながら、それでも。
「王子様……。私を、信じてください。何か嫌なことがあるのなら、手伝いますから……!」
一瞬、王子様の目が見開かれたよ。どこか、激しく揺れているようにも見えたかな。まるで、心の傷を開かれたみたいに。
そんな予感は当たっていたみたいで、王子様は目を伏せた。そして、歯を食いしばっていたよ。
失敗しちゃったのかも。お腹が重くなったけど、私は笑顔を保つ。少しでも、希望を保つために。
顔を上げた王子様は、さっきまでより厳しく私をにらんでいたんだ。心から、憎むものがあるみたいに。
「……っ。アミカ、お前は……。決めた。俺と決闘しろ。負けたのなら、退学してもらう」
そう言って、王子様は私に槍を突きつけてきたんだ。




