19話 幸せを生み出せちゃうかわいさだよ!
ソフィさんの時間があるかはともかく、クロエちゃんを私の部屋に案内はしたい。それから、ソフィさんの都合に合わせて行動を変えればいいよね。
私たちは手をつないで、私の部屋へと向かっていくよ。何も話さなくても、とっても胸が弾む。足取りも、軽くなっちゃうくらい。
今の私達は、同じ空に並んだ太陽と月。誰にも負けないくらいに輝いているんだから。
部屋の前で、ノックをする。そして、声をかけていくよ。
「すみませーん。ソフィさん、いますか?」
これだけで、多分伝わると思う。ただ帰ってきただけじゃなくて、用事があるんだって。
すぐに足音が聞こえてきて、扉が開いた。ソフィさんは私たちの姿を見て、ふわりと微笑んだんだ。
「あなたは……。アミカさんのお友達なのね。これからも、仲良くしてくれると嬉しいわ」
「もちろんです。アミカちゃんは、誰よりも大切な人なんですから」
「ふふっ、なら、安心ね。私はソフィ。アミカさんのメイドをしているわ」
「私はクロエです。よろしくお願いしますね、ソフィさん」
「アミカさんの友達なら、気軽に話しかけてくれて構わないわ。その方が、アミカさんも嬉しいはずよ」
和やかに、話は進んでいるよ。お互いに、通じ合うものがあるのかもしれない。
ソフィさんは、話しつつお茶を用意してくれている。おもてなしの力が、すごいよね。
間違いなく、アミカちゃんの存在あってのもの。同性まで魅了しちゃうなんて、罪な女すぎるよ。
でも、ちょっと安心したかも。もしうまく行かなかったら、こっそり枕を濡らしちゃったかもしれないし。
さて、私も話に入っていかなくちゃ。主役がいない舞台なんて、退屈なんだから。
「ふふっ、気軽に話せる関係になると、嬉しいですね。大好きな人達が仲良くしてくれる。幸せなことです」
「アミカちゃんが幸せになれるのなら、私も頑張るよ。だって、友達だもんね」
「無理してはダメよ。無理に笑顔でいれば、アミカさんは気付く。そして、きっと悲しむもの」
クロエちゃんは私に笑いかけてくれて、ソフィさんは真剣な顔で言ってくれた。
実際に気付けるかは、分からないけれど。ソフィさんとエルカ先生の話だって、たまたま目撃したから知っただけだもん。
でも、そうだね。大切な人が苦しんでいるのなら、私は気づきたい。そして、本当の笑顔に変えたいんだ。
そうすることができたなら、間違いなく私はかわいい。きっと、誰よりもね。
ソフィさんからティーカップを受け取りながら、まっすぐな笑顔で返したよ。
「だけど、私は心配なんてしていません。ふたりとも、とっても素敵な人なんですから」
「アミカさん……」
ソフィさんは、胸を抑えていたよ。クロエちゃんの居る前で触れることじゃない。だから、ただ笑いかけるだけ。
それでも、薄くでも笑顔で返してくれたよ。
「アミカちゃんこそ、すっごく素敵だよ。だから、私たちは友達になれたんだよ」
「そうね。アミカさんの笑顔には、何度も支えられたわ」
ふたりとも、穏やかな笑顔で私を見ている。私のかわいさは激しく舞い上がっているけれど、私だけの力じゃないんだよね。
ソフィさんは、かわいいって言ってくれた。料理もお掃除も、ずっと頑張ってくれた。魔導石だって、用意してくれたんだ。
クロエちゃんだって、何度も魔法で助けてくれた。私のことを、ずっと心配してくれた。
私がかわいく居られるのは、そんな優しさに助けられているから。絶対に、忘れたりしないよ。
ソフィさんの淹れてくれたお茶を飲みながら、そっとはにかんだんだ。
スッキリした味が、私の心もスッキリさせてくれたよ。
「私たち、褒め合ってばかりですね。なんだか、ちょっと面白いです」
「クロエさん、アミカさんを支えてくれて、ありがとう」
「いえ。アミカちゃんは、何度も私を支えてくれたから……」
「クロエちゃんこそ、何度も私を支えてくれましたよ」
「ううん。当たり前のことをしただけだよ。私たちは、友達だから」
「ふふっ、本当にアミカさんを好きでいてくれるのね。なら、提案があるわ」
私たちが飲み終えたティーカップを回収して、ソフィさんは私たちの方を見る。きっと、とっても素敵なことだと思う。
だって、ソフィさんはものすごく優しい目をしているから。
「アミカちゃんのためになるのなら、受けようかな……」
「ふたりの絵を、残したいの。何度でも、今日という日を思い出せるように。きっと、いつかアミカさんの助けになってくれるわ」
「アミカちゃん、受けようよ。私、アミカちゃんに持っていてほしいな」
クロエちゃんは、目を輝かせていたよ。私も、ちょっとワクワクしているかも。
もちろん、頷いたよ。そうしたら、ソフィさんは絵の具とキャンバスを持ってきたんだ。
かなり手慣れた様子で準備をしている。もしかしたら、相当練習していたのかも。
ソフィさん、こんな趣味があったんだね。他にも、私の知らないことがあるのかな。もっともっと、知っていきたいな。
道具を並べて、ソフィさんは私たちをじっと見る。そして、迷いなく筆を動かしていったんだ。
ずっと真剣な目で書いていたよ。私たちは、邪魔しないようにじっとしていたんだ。でも、少しも退屈じゃなかったよ。
しばらく待っていたら、ソフィさんが顔を上げる。そして、手招きをしてくれたよ。空は、いつの間にか暗くなっていたんだ。
さっそく絵を覗き込むと、笑顔で手をつないでいる私たちの姿があった。私もクロエちゃんも、普通に座っていただけなのに。
そして、笑顔がとっても輝いていたよ。誰だって見とれちゃいそうなくらいに。
「すごいね、これ……。私たち、本物みたい……」
クロエちゃんは、ちょっと口を開けてボーっとしていたよ。気持ちは、分かるけれど。
ソフィさんの絵には、確かに幸せがあった。私たちが紡いだ絆と友情が、そのまま形になったみたいに。
私だって、じっと見つめちゃったと思う。ほんの少しくらいは、かわいくない顔をしちゃったかも。
「ソフィさん、とっても上手ですね。なにか、コツとかあるんですか?」
「ふふっ、喜んでもらえて嬉しいわ。光を見るのが、大事なのよ。どこから当たっているかを、しっかりとね」
そう言われて見てみると、確かに同じ場所から光が当たっているみたいだったよ。
左側がちょっとだけ明るくて、右側が暗い。私にも、分かる部分だけだけど。
きっと、いろんな光を詰め込んだんだと思う。綺麗なものだけ、キャンバスに閉じ込めるように。
太陽と月が並んでも、描かれている私たちの輝きには勝てないよね。
この絵を見れば、いつだってクロエちゃんをそばに感じられると思う。たとえ、どれだけ離れていても。
私たちが友達である証が、こうして形になる。とっても幸せなことなんだって、胸のあたりを押さえたよ。ドキドキが、手まで伝わってくるようだったかな。
「ありがとうございます、ソフィさん。おかげで、これからも頑張れそうです」
「アミカちゃん……。うん、頑張ろうね。私たちの手で、素敵な未来を紡いでみせるよ。この素敵な絵よりも、もっと輝けるくらいに」
「そうしてくれたら、私も安心できるわ。クロエさん。アミカさんを、よろしくお願いするわ」
「もちろんです。絶対に、離れたりしません」
ソフィさんの顔がほころんで、私たちからも自然と笑い声がもれたよ。
この気持ちがあれば、エルカ先生の試練だって乗り越えられる。心から信じて、私たちはお互いの笑顔を見ていたんだ。
そして、次の日。エルカ先生は、また新しい課題を出したよ。
「さあ、今日は魔法陣についての課題だ。個人個人で、問題を解いてくれたまえよ」




