17話 アミカちゃんのかわいい教育術!
クロエちゃんは、魔法の教え方が分からないみたい。私にやり方を聞くくらい、なんにも分かんないんだろうね。
つまり、それだけ人に距離を取られ続けていたってこと。やっぱり、クロエちゃんは……。
でも、だからこそ私は力になれると思う。どうやって教えるかなら、かわいいテクニックが応用できるから。
よし、まずはクロエちゃんに話を聞くところからだね。
アミカちゃんかわいいテクニックその56! いい話をするコツは、まずしっかりと話を聞くこと!
相手がどんな気持ちでいるかが、とっても大事なんだよ。
「クロエちゃんは、どんな魔法を教えてって言われたんですか?」
「どんなっていうか……。どうやったら私みたいに強くなれるのかって」
クロエちゃんは、頭をひねっている。難しいっていうか、無理だよね。クロエちゃんは、Sランク。1年にひとりでも、多いって言われるらしいんだから。
それってつまり、とんでもない天才だってこと。国一番を本気で目指せるレベルの人になりたいっていうのは、ちょっと高すぎる目標かな。
とはいえ、それを素直に伝えてもダメだと思う。求められているのは、何かのコツだよね。
簡単に強くなれそうな何かを言えたら、それが正解。うん、道筋は見えてきたかな。
まずはクロエちゃんの話を聞いて、役に立ちそうなことをまとめていこう。それを伝えやすくしてあげるのが、私の役割だよね。
「クロエちゃんは、魔法を使う時に何を考えていますか?」
「何をって……何も? ただ集中するのが、一番大事なんじゃないかな」
「じゃあ、練習する時はどうですか? 新しいことを試す時に、何を注意しますか?」
「そうだね……。魔力の流れかな。狙った通りにスムーズに動かせると、大体成功するよ」
「スムーズに動かせる時って、普段と違う何かはありますか?」
「ちゃんと、理論と感覚が噛み合った時かな。動きのイメージをしっかりして、体に伝えるというか」
ふむふむ。大体分かった気がするよ。理論通りに魔力を動かすイメージをして、それを体になじませる感じなんだよね。
そうなってくると、次は理論をどうやって教えるかかな。たぶん、クロエちゃんはそっちも天才。
私は覚えているよ。ユミナス学園では絶対に習わないレベルの魔導書を持ってきていたってこと。つまり、それを理解できる人なんだ。
だから、もうちょっと簡単なところからだね。難しい計算をする前に、足し算や引き算を完璧にできるようにならないと。
「じゃあ、魔力を動かす理論の簡単なものを教えましょう。その通りに魔力を動かす訓練をする感じですね」
「分かったよ。でも、どんな理論が良いかな。魔力子の波動理論とか?」
当たり前のように、ユミナス学園のレベルを超えてきたね。やっぱり、クロエちゃんは教えるのが苦手みたい。
でも、最終的な目標はクロエちゃんが自分で教えられるようになること。私が教えても、誰も聞かないだろうからね。
私はDランクと思われている。そんな人のアドバイスなんて、求められたりしないよ。
よし、まずは簡単なところからだね。
「クロエちゃんは、ボールを投げろって言われて、重力がどうとか説明されるのは良いと思いますか?」
「あっちに腕を動かせって言われた方が、分かりやすいかも?」
「そういうことです。いま必要なのは、どう腕を動かすか。空気抵抗や摩擦の話は、早いんです」
「なるほど……。じゃあ、魔力の反動を教えるくらいでいいのかな」
「それくらいだと思います。本人に話を聞くのが、一番早いんですけどね」
実際、その人の話を直接聞いたわけじゃないから、本当に正しいのかは分からない。でも、コツとしては納得しやすいラインだとも思うよ。
例えば、暗記する時に、覚えたいものを見ながら何回も書くよりも、見ずに書くことの方が大事だとか。小さなことだけど、伝えられれば大きいんだ。
クロエちゃんも、納得したみたいに頷いてくれた。まずは、方針は定まったよね。
ただ、クロエちゃんがちゃんと理論を説明できるかは、まだ怪しいけれど。ちょっと考えれば分かるとか言いそうで、怖いかも。
そんなクロエちゃんは、私の方を見て首をひねっていたよ。
「ねえ、アミカちゃん。この理論って、どうやって教えたら良いと思う?」
聞いてくれるのなら、答えるだけだね。クロエちゃんは素直だから、かなり話しやすいよ。
といっても、本当にちょっとしたコツなんだけど。クロエちゃんは、教え方の初歩の初歩を習う段階みたいだから。
難しいことを説明しても、きっと失敗しちゃう。だからこそ、単純なことを言うべきだよね。
「まずはちょっとウソを付くんですよ。正確な理解じゃなくて良いんです」
「ウソ? そうしたら、間違えて覚えちゃうんじゃない?」
「違うんですよ。イメージとしては、まず魔法は魔力量で決まるって教えるみたいな感じですね」
「技術とかもあるけど、確かに大事なことだね。ああ、それがウソなんだ。魔力がすべてじゃないけどってことだね」
クロエちゃんは、何度も頷いている。これで、だいぶ分かってもらえたかな。うまくいくかは、まだ分からない。けれど、大きな一歩を踏み出せるはずだよ。
だから私は、笑顔で頷き返したんだ。
「そういうことです。クロエちゃんの役に立てたなら、嬉しいですね」
「うん。ありがとう、アミカちゃん。後は自分で頑張ってみるよ」
「応援していますね。失敗したら、抱きしめてあげますよ」
「ええっ、ひどい……。でも、その時にはお願いしちゃうかも」
クロエちゃんは、私に手を振って歩いていく。その先には、気弱そうな女の子がいたよ。
たぶん、勇気を出してクロエちゃんに話しかけたんだよね。うまくいってくれたら、お互いにとって良い結果だと言えるんだけど。
祈りながら、クロエちゃんを送り出したよ。どうか、笑顔で帰ってきますようにって。
ただ、帰ってきたクロエちゃんはうつむいていた。それだけで、結果は分かったんだ。
クロエちゃんは、私の胸に抱きついてくる。触れるくらいの、弱い力で。そして、ポツリとこぼしたよ。
「あんな魔法、使えるわけないって。簡単にできるなんて、おかしいって。アミカちゃん、私……」
震えながら語るクロエちゃんを、私は強く抱きしめたんだ。
しっかり、話を聞かないと。重要なのは、ここから。本当に大事な、アミカ・ショウタイムになる。
私は、クロエちゃんを抱きしめる力を、ほんの少しだけ強めたんだ。




