14話 アミカちゃんの完璧なデート!
今日はクロエちゃんとお出かけ。窓から覗く空は、とっても青く澄み渡っている。私たちの時間を、祝福してくれているみたいに。
ソフィさんの用意してくれたご飯を食べて、服を選んでいくよ。
今日の衣装は、ちょっと色を抑えめにしたシャツとスカート。クロエちゃんのことだから、あんまり派手な服は着てこないはず。私だけ目立つのは、かわいくないんだから。
カバンと財布、魔導石を忘れずに。ハンカチとかも大事だよ。しっかりと、最高のデートにしちゃうんだからね。
私とクロエちゃんなら、きっとどこに行っても楽しめるはずだよ。
なにせ、クロエちゃんは私のことが大好きだからね。同性も魅了しちゃうアミカちゃんのかわいさは、留まるところを知らないよ。
待ち合わせ場所は、学園の近くにある公園。そこで、クロエちゃんは先に待っていたよ。
思った通り、モノトーンに近い服を着ていたよ。似たような雰囲気だし、デートにぴったり。さっすがアミカちゃんだよね。かわいさが突き抜けちゃっているよ。
「クロエちゃん、お待たせしました。ちょっと、遅れちゃったみたいですね」
「ううん。私が早く来ただけだから。アミカちゃんだって、10分前でしょ?」
「クロエちゃんを待たせてしまったのなら、遅刻ですよ。ふたりでお出かけなんですから」
「待ち合わせの時間を決めたのは、ふたりでなんだから。時間を守るのも、大事だよ」
クロエちゃんは、じっと私を見ている。これ以上押し問答をしても、譲らないだろうね。
なら、さっさと受け入れちゃおう。デートの時間を無駄にしないのが、今は一番かわいい。優先順位を大事にするのも、大切なかわいさなんだから。
「じゃあ、さっそく行きましょう。まずは、近くを見て回りましょうか」
「そうだね。アミカちゃんとなら、どこに行っても楽しいと思うよ」
「なら、最高の時間にしちゃいますね。クロエちゃんが、一生忘れられないくらいに」
「うん、お願い。また何度だって来たいけど、今回も最高が良いもんね」
そっとはにかむクロエちゃん。合わせて、私もはにかんだよ。
クロエちゃんの手を取って、私は歩き出す。自然と、足が弾んだんだ。
こうして友達と一緒にお出かけするのは、初めて。失敗しても、きっと素敵な思い出になるよね。
商店街みたいなところに行くと、いろんなものが並んでいたよ。クロエちゃんは、ちょっとした家具みたいなものに興味を持ったみたい。
手元で穴から風を起こせる道具とか、首元に巻くとひんやりする道具とか。
お試しもできたから、ちょっと使おうとしたんだけど。私が触っても、動かなかった。
クロエちゃんは、眉を下げてうつむいちゃった。私は、魔導石を道具に当てたんだ。
そうしたら、動き出した。クロエちゃんも、すぐに笑ってくれたよ。
笑顔になったクロエちゃんは、私に風を当ててみたり、首元を冷やしてくれたり。
私も同じことを返して、お互いに顔を見て笑っちゃったりもしたんだ。
「クロエちゃんってば、いたずらっ子なんですから。急に風を当てられた時は、びっくりしましたよ」
「アミカちゃんの反応が見てみたくて。驚く姿も、見てみたかったかも」
そう言いながら、クロエちゃんは次の道具を手に取ったよ。自分に向けて風を起こして、すぐに離しちゃった。落としそうになっていて、私が拾ったよ。
少し熱さを感じて、たぶんクロエちゃんは驚いたんだろうなって。急に熱い風が当たったみたいな。
説明を読むと、髪の毛を乾かす道具だったみたい。だから、熱い風が出たんだろうね。
「ありがとう、アミカちゃん。えへへ、失敗しちゃった」
「もう、ダメですよ。説明は、ちゃんと見ないと。怪我をしちゃったら、大変です」
「そうだね。アミカちゃんに当たっちゃったら、大変だったもん」
「私だって、クロエちゃんが大事なんですよ。傷ついたら、悲しいです」
クロエちゃんは、なんだか目をパチクリしていたよ。数秒ほどして、胸に手を当てていたんだ。
じっと目をつぶって、それから私を見る。満開の花が開くような笑顔を、見せてくれたよ。
「そっか……。私にも、心配してくれる人がいるんだ……」
クロエちゃんの言葉からは、いろんなことが分かる。少なくとも、誰も心配してくれなかったみたい。
きっと、Sランクだからなんでもできるって思われた。だから、遠ざけられたんじゃないかな。外れていても、親しい人が居なかったのは間違いないはず。
こんなに優しい子でも、Sランクという属性だけで見られてしまう。そして、クロエちゃんの内面は隠されちゃったんだろうね。
ちょっと、目を伏せそうになっちゃう。でも、今は絶対にダメ。クロエちゃんの前でそんな顔をするのは、特にかわいくないよ。
今の私がするべきことは、クロエちゃんを楽しませる時間を作ること。それだけなんだから。
「私たちは、友達なんですから。当たり前ですよ。私は、クロエちゃんの味方です。これからも、ずっと」
「ありがとう、アミカちゃん。あなたと出会えて、本当に良かった。あの時荷物を散らしちゃったのは、運命だったんだね」
「ふふっ、そうですね。私も、クロエちゃんと出会えて良かったです。もっと良かったと思えるように、いっぱい楽しんじゃいましょう」
私は手を出して、クロエちゃんは握ってくれた。そして、一緒に歩きだす。最初の時より、お互いに強くつなぎながら。
次に向かった場所は、屋台みたいな場所。商店街のど真ん中みたいな感じだね。知らない食べ物がいっぱいあって、いい匂いもしてくる。
どれを選べば良いのかは、全然分からないけれど。知っている料理が、本当にないから。
「クロエちゃんは、どれが良いと思いますか? 美味しそうなものが、いっぱいありますね」
「私は、コロッケが食べてみたいかも。買い食いの定番だよね」
「そうなんですね。なら、買っちゃいましょう。ひとつずつで、良いですか?」
「お金なら、私が出すよ。私が選んだんだから」
「はんぶんこ、です。私たちは、そういう関係が良いと思いませんか?」
「そっか。そうだね。じゃあ、はんぶんこだね。すみませーん」
クロエちゃんが声をかけて、屋台の人はコロッケって料理を渡してくれたよ。
紙に包まれていて、なんか茶色い。プツプツ言っているのは、なんの音なんだろう。なんとなく、美味しそうな匂いを感じた気がしたよ。
さっそくクロエちゃんがかぶり付いて、顔を真っ赤にしちゃった。すぐに口を離して、ハフハフ言っている。たぶん、かなり熱かったんだろうね。
私は、息を吹きかけながら少しずつ食べていく。それでも熱くて、ちょっとハフハフしそうになっちゃった。我慢したけれど。クロエちゃんなら、似合うんだけどね。
味としては、こってりしてるっていうのかな。サクサクの茶色いものと、柔らかい中身がペアで踊っているみたいな。
じゃがいもは分かるんだけど、他にも知っている味がある気がしたよ。なんか、細かい粒が入っていた。見たことないけど、これなのかな。
結局、何で感じた味なのかは分からなかった。けれど、美味しいというのは分かったよ。
クロエちゃんも、落ち着いた顔で食べている。もう、慣れたみたいだね。初めてだったから、失敗しちゃったみたい。
「えへへ、同じものを食べるって良いね。アミカちゃんは、美味しかった?」
「はい。初めて食べたんですけど、美味しかったです。うまく説明はできないんですけど」
「えっ、初めて……? ううん、なんでもない。美味しいのなら、良かった」
「次は、何を食べますか? クロエちゃんのオススメが聞いてみたいです」
「そうだね……。次は、甘いものはどうかな? ソフトクリームとか、良いと思うよ」
「分かりました。あれですね。すみませーん」
私たちはソフトクリームを買って、食べていく。クロエちゃんはかぶりついて、鼻のところにクリームを付けちゃってたよ。
なんというか、クロエちゃんらしいかわいさだよね。私には、マネできないけれど。
私は、少しずつ舌を伸ばしてすくっていく。小さな口で、かわいくなるように。
私が食べ終えた頃に、クロエちゃんは顔を拭いていたよ。でも、完全には取れていない。だから、私がハンカチで拭っていったよ。
なんというか、クロエちゃんってちょっとドジみたい。出会った時に荷物を散らかしていたのも、こけちゃったとかなのかもね。
こういうところをみんなが知れば、もっと人気者になれるかもしれないよね。ちょっと、胸がキュッとなったけれど。
クロエちゃんが人気者になるのは、嫌なのかな。そんなの、かわいくないのに。
「アミカちゃん……。ごめんね、私が役に立てないから……」
ちょっと、顔に出ちゃっていたのかも。失敗だったな。今の私は、あんまりかわいくないかも。
でも、挽回しなくちゃ。しっかりと、やっていくよ。
「クロエちゃんは、役に立ってくれています。私に、勇気をくれたんです。信じてくれる人がいるって」
「でも、私……」
胸に両手を当てて、クロエちゃんはななめ下を見ていたよ。私は、その両手を包みこんだんだ。
優しく、穏やかな笑顔を見せていく。それが、私のかわいさなんだから。
「大丈夫。私たちは、一緒に卒業できます。ふたりでなら、きっと」
「アミカちゃん……。私、頑張るから。どんな敵も、やっつけちゃうから」
今度も胸に手を当てて、でもまっすぐに私を見つめていたよ。いつか絵本で読んだ、輝くお姫様みたいな目で。
だから、私も頷いたんだ。絶対に、一緒に卒業してみせるって。
クロエちゃんとの時間は、楽しいまま過ぎていった。お別れの時間も、笑顔だったよ。
こんな笑顔は、ソフィさんといた時くらい。そう考えて、私は決めたんだ。
帰ったら、ちゃんとソフィさんと話をする。まっすぐに、向き合うんだ。クロエちゃんにもらった勇気で。
私は、地面を踏みしめながら自分の部屋に歩いていったんだ。




