12話 素直なだけがかわいさじゃないんだよ!
「今回倒すべき魔物は、小竜。相応の腕さえあれば、問題なく倒せるであろう。気張りたまえ」
小竜は、まあ小さい竜だね。羽が生えていて、人よりちょっと大きいくらい。鋭い牙と前足の爪、そして炎を吐くことが特徴らしいよ。
近くに魔力の気配を感じると、そっちにふわふわ寄っていくこともあるみたい。後は、音のする方とか。
Cランクでも頑張れば倒せるって程度とは言われているよ。だから、課題としてはちょうどいいんだと思う。
とはいえ、私にとっては難題だけれど。槍を持ったって、勝てないだろうし。やっぱり、誰かに手伝ってもらうしかないね。
ただ、スミス君もローランド君もマイケル君もいない。というか、私以外は強い人ばかり集められているかも。
意図を感じるね。やっぱり、エルカ先生は私を退学させたいみたい。
今回の課題を乗り越えても、きっと退学させようとし続けてくる。本丸に、当たる必要があるかもしれない。ソフィさんにも。
でも、まずは今回の課題だね。目に付く実力者としては、ミスティアさんと王子様。そして、俺様の人。
「ま、小竜程度に負けやしないわ。あたしの力を、存分に示しましょうか」
「この程度の試練で怯むと思われては困るな。俺の実力は、どこまでも磨き抜かれているのだから」
ミスティアさんは堂々と胸を張って宣言していて、王子様は腕を組んで自信満々そうにしている。
たぶん、このふたりの協力を得ることは難しい。私じゃ、課題の役には立てないからね。
そうなると、やっぱり俺様の人かな。ちょっとつまらなそうに、頭をかいていたよ。その退屈を癒やすことと、私の課題を乗り越えること。両方を達成する手段を見つけたいね。
私に、何ができるかな。たぶん、小竜一体と戦う程度はつまらないと思っているよね。
いっそのこと、2体倒させてみるとか? とはいえ、完全に頼るだけなのは論外だよね。前と同じ失敗なんて、していられないよ。
アミカちゃんは、最高にかわいい。それは、確かな努力と成長に支えられているんだからね。
ちょっとだけ、手のひらを見る。前に、ボロボロになったもの。同じくらい泥にまみれてでも、私は未来をつかみ取りたいんだ。
なら、そうだね。私だって、役割を果たすんだ。ただ見ているだけじゃなくて、体を張ってでも。
大きく息を吸って、全部を吐き出していく。そして、俺様の人に向かって歩いていくよ。
「あの、カイン君。ちょっと良いですか? 聞いてほしい話があるんですけど」
「なんだ? 言ってみるだけ、言ってみるがいいさ。俺様の興味を引けるのならな」
横を向いたまま、視線だけを向けてきた。今は、興味がないんだろうね。でも、ここからが私のかわいさ。
課題が楽勝で、退屈なんだよね。もっと難しいことを、してみたいんだよね。なら、私が用意してあげるから。
「私が、小竜を2体引き連れてきます。それを、両方とも倒せませんか?」
「それをすることで、俺様になんのメリットがある? 言ってみろよ。何が狙いだ?」
ちょっとだけ、笑っていた。やっぱり、ただ褒めるだけじゃ不正解だったみたいだね。この調子で、どんどん話を進めていっちゃおう。
アミカちゃんかわいいテクニックその80! 自信が強い人には、プライドを刺激するのが効果的!
当たり前の褒め言葉だけじゃ、心を動かされない人も居るんだよ。
「2体を同時に倒した人って称号を、手に入れられますよ?」
「実質タダで、俺様を動かそうってのか。だが、悪くねえ。つまんねえ試験だと思っていたところだ」
「なら、今回は退屈しないですね」
「だが、てめえはどうだ? 小竜に追いかけられて、逃げ切れるのか? 俺様が戦えるように」
「私を避けて魔法を当てることは、できませんか? できないのなら、別の手段を考えます」
ちょっとだけ、挑発的な顔をしてみる。カイン君は、目を見開いていたよ。そして、獣みたいな笑みを浮かべたんだ。今から狩りをするって感じの。
もしかして、アミカちゃんを獲物として見定めちゃってたりして。なんて、違うよね。私の言葉を、受け止めたみたい。
「はっ。俺様が、その程度のこともできねえと? 良いだろう。やってやろうじゃねえか」
「魔力が必要なら、私も力を貸しますよ。魔力を集中すれば、楽ができるでしょう?」
「いらねえ。自分を守ることにでも使いやがれ。俺様は、失敗なんてしねえよ」
魔導石は、必要ないみたい。一応、カイン君が魔力を引き出すことはできたんだけど。私は魔導石じゃ防御なんてできないけど、言っても仕方ないか。
カイン君のやる気に水を差しちゃったら、お互いに損をするだけ。ここは、引くべき場面だね。
さて、後はどうやって引き付けるかだね。小竜に追いかけられるためには、挑発が必要。大声で叫ぶのが、ちょうどいいかな。
ただ、引き付けすぎても困っちゃう。まずは小さい声から調整するのが大事だね。一体を引き付けてから、もう一体に届く声ってのもありかも。
それで、魔導石に含まれる魔力で私の方に引き付けていく。最終的には、カイン君のところに向かう。そんなところかな。
なら、魔導石の魔力を使われなかったのは、ちょうど良かったかも。よし、これで決まり。
「じゃあ、行ってきますね。ここで待っていてくれますか?」
「ああ、分かった。俺様のところまで来れたのなら、必ず小竜はぶちのめしてやるよ」
「では、決まりですね。のんびり、待っていてください」
「はっ、戦いの前にのんびりするほど、俺様は気楽じゃねえよ。そっちこそ、油断するなよ?」
「そちらこそ。一撃で倒せるように、魔力を集中しておいてくださいね」
「当たり前だろ。俺様の力、特等席で見せてやる。感謝しても良いんだぜ?」
唇を釣り上げて、カイン君は私を送り出す。笑顔で手を振って、私は小竜を探しに向かったんだ。
今こそ、アミカ・ショウタイム! 小竜だって、私の魅力でメロメロにしちゃうんだから! どこまでも追いかけてきちゃうくらいに!




