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復讐の炎は愛へ ~禁断の薔薇  作者: 朧月 華


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第6話 真実と選択

オフィスを飛び出した玲奈は、怜司と共に慌ただしく車に乗り込んだ。怜司はハンドルを握りながら、冷静な声で玲奈を落ち着かせようとする。「落ち着いてくれ、玲奈。義姉が蓮を連れて行ったのは、悠斗の血筋だと確信しているからだ。すぐに取り戻そう。」彼の言葉は、玲奈を安心させるものではあったが、内心の不安は拭いきれない。


車は都心の高級住宅街を抜け、威厳ある門構えの「鷹司本家」へと到着した。その重厚な扉が開くと、そこにはまるで別の時代が息づいているかのような、厳かな日本庭園が広がっていた。玲奈の心臓は、警鐘を乱打するように高鳴っていた。


鷹司本家の広々としたリビングには、既に重苦しい空気が充満していた。豪華な応接セットの中央には、鷹司夫人が蓮を抱きしめて座っている。その隣には藤原悠斗が立ち、困惑と、どこか期待の入り混じった表情で蓮を見つめている。そして、憎悪を剥き出しにした吉田麻衣が、まるで獲物を狙う蛇のように玲奈たちを睨みつけていた。


蓮は玲奈と怜司の姿を見ると、鷹司夫人の腕の中から身を捩って飛び降り、震える小さな体で駆け寄ってきた。「ママ!」


玲奈は蓮を抱きしめ、その小さな体を震える手で包み込んだ。子供の怯える様子に、彼女の心は千々に乱れる。「蓮、大丈夫よ。もう心配ないわ。」


鷹司夫人が、玲奈と怜司を射るような視線を向けた。「玲奈さん、まさか生きていらっしゃったとはね。そして、その子…!悠斗の子供に間違いないでしょう?何年も私たち鷹司家の血筋を隠していたなんて、一体どういうつもりなの!」彼女の声は甲高く、有無を言わせぬ圧力を放っていた。


藤原悠斗もまた、玲奈を見つめた。「玲奈…母さんが言っているのは本当なのか?蓮は、僕の息子なのか…?」彼の声には、僅かながらも父親としての喜びと、状況への戸惑いが混じっていた。


吉田麻衣は、この機会を逃すまいとばかりに、鋭い声を上げた。「たとえその子が悠斗さんの子供だとしてもどうだっていうのよ?!私は悠斗さんの婚約者なの!この、素性の分からない私生児が鷹司家の敷居を跨ごうだなんて、絶対に許さないわ!」彼女は、怜司が蓮の父親だと嘘をついたことを知らない。玲奈を陥れようと必死だった。


その時、「もうよせ!」と、重々しい声が響き渡った。


怜司が毅然とした態度で一歩前へ出ると、玲奈と蓮を背に庇うように、皆の中心に立った。彼の表情は、先ほどの情熱的なキスとはまるで別人のように、冷徹で揺るぎない。「蓮が鷹司家の血を引いているのは間違いない。だが、悠斗の子供ではない。」


その言葉に、リビングにいた全員が呆然とした。玲奈もまた、衝撃で息を呑み、怜司の背中を見つめる。彼が、あの時言った言葉を、この場で、まさか…!


怜司は、その視線を鷹司夫人から悠斗、そして麻衣へと向け、そして再び玲奈の瞳に合わせた。彼の目は、まるで「私を信じろ」と語りかけているかのようだった。「蓮は、私の息子だ。」


その瞬間、リビングは死んだような静寂に包まれた。


「怜司、あなた、何を言っているの?!」鷹司夫人が、顔色を真っ青にして叫んだ。


悠斗は、信じられないという顔で叔父を見つめる。「叔父様、そんな…!五年前、玲奈は僕の婚約者だったんです!まさか叔父様と彼女が…!」彼の声には、絶望と裏切られたような感情が混じっていた。


**玲奈は、怜司の背中越しに、彼の肩を強く握りしめた。彼の「嘘」はあまりにも衝撃的で、あまりにも大胆だ。しかし、同時に、彼女の心は深く深く揺さぶられた。この男は、自分と蓮を守るためなら、自らの名誉も、家族との軋轢も、一切を顧みないというのか。彼の視線に込められた「私を信じろ」というメッセージは、玲奈の心の奥底に深く響いた。この場で悠斗の子供だと主張すれば、蓮は永遠に悠斗と麻衣の間の争いに巻き込まれる。彼の言葉は、蓮を、そして自分を、この泥沼から救い出す唯一の道だと、玲奈は直感した。**


「それが、真実だ。」怜司は、一切の動揺を見せず、冷たい声で言い放った。彼の瞳は、強い決意に満ちていた。「まさに君たちの婚約披露宴の夜。玲奈が酒に酔い、私が家まで送っていった。その時、関係を持った。後に彼女は妊娠に気づき、一人で去ることを選んだ。そして五年を経て、私のもとに戻ってきたのだ。私は、蓮の父親として、全ての責任を負う覚悟がある。」


「馬鹿なことを言わないでください、叔父様!」吉田麻衣が、怒り狂ったように叫んだ。「そんな、都合の良い話があるものですか!あの女は…!あの桜庭玲奈は、最初から鷹司家を乗っ取ろうと…!」


その時、重々しい足音が響き、奥の階段から鷹司会長がゆっくりと降りてきた。その威厳ある姿に、リビングの空気は一層張り詰める。会長は怜司と玲奈、そして蓮を交互に見つめ、その瞳には厳しさが宿っていた。


「怜司。」会長の声は、低く、しかし有無を言わせぬ響きを持っていた。「お前は、今、何と言った?その子が、お前の子供だと?」


怜司は会長の視線を真っ直ぐに受け止め、深く頭を下げた。「はい、父上。蓮は私の息子です。そして、私は桜庭玲奈を愛しています。彼女と結婚し、蓮に完全な家庭を与えたいと願っています。」


会長はしばらく沈黙した後、麻衣を見た。「吉田さん。これ以上、無関係な発言は慎め。ここは、鷹司家の内部の問題だ。」麻衣は悔しさに唇を噛み締め、それ以上何も言えなくなった。


会長の視線が、再び玲奈に向けられた。「桜庭さん。怜司の言葉は、真実だと認めるのか?そして、お前は、怜司と結婚するつもりがあるのか?」


全ての視線が玲奈に集中した。蓮は、玲奈のドレスの裾を強く握りしめ、不安そうに彼女を見上げている。玲奈は、怜司の、そして子供の将来がかかった重大な選択を迫られていた。怜司の嘘を受け入れれば、彼女は鷹司家の人間として、より大きな力と庇護を得られるだろう。それは、復讐を果たす上でも、蓮を守る上でも、最も確実な道だ。だが、それは同時に、彼女自身の独立した意志を、どこか押し殺すことにもなる。


玲奈は怜司の顔を見上げた。彼の瞳は、彼女に全てを委ねるかのように、しかし同時に、彼女の決断を尊重するかのように、深く静かな光を宿していた。玲奈は深呼吸を一つし、凛とした声で答えた。


「鷹司会長。」玲奈は、会長の目を真っ直ぐに見つめた。「蓮が鷹司の血を引くことは、間違いありません。そして、私と怜司様との関係については…私の母と父の仇討ちを完全に果たし、全てを清算した上で、改めてお答えいたします。今は、その復讐を果たすことに、全ての力を注ぎたい。それが、亡き両親への、そして私自身への、最後の誓いです。」


玲奈の言葉は、怜司の嘘を肯定しつつも、鷹司家に安易に屈することなく、自身の意志と独立性を明確に示していた。彼女は怜司の差し伸べた手を掴んだが、同時に自分の足で立つことを決して忘れなかった。


会長は玲奈の言葉を聞き、その揺るぎない意志に、微かに目を見張った。彼は玲奈をもう一度見つめ、それから怜司に視線を移した。「…怜司。彼女の決意を尊重せよ。だが、お前も、鷹司家の人間である。その決断の重さを、肝に銘じておけ。」


怜司は玲奈の隣で、静かに頷いた。彼の表情には、玲奈の選択を受け入れたことへの満足と、そして彼女の揺るぎない強さへの深い敬意が宿っていた。


玲奈は蓮を抱きしめ、怜司と共にその場を後にした。彼女はまだ、全てを明かしたわけではない。しかし、復讐への道は、今、怜司という最も強力な味方を得て、新たな局面を迎えていた。



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