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あのノートを真逆にしちゃた 星新一

退屈しのぎのオマージュです。

さらっと読んで忘れてね

白いノート

男、Aは、退屈していた。

世界はすでに、ほとんどのことが自動化され、不必要な労働は機械に任せられていた。人々はただ、消費し、快楽を追求するだけの存在になっていた。


そんなある日、Aはぷらぷら歩いていると空から何かが降ってきた。それは一冊の白いノートだった。Aはそのノートを拾う。表紙には何も書かれていなかったが、最初のページには丁寧な文字で何やらルールらしきものが記されていた。


このノートに名前を書かれた人間は生き返る。


ただし、名前と顔、そして生前の行いが書いた者にわかる者でなければならない。


Aは最初、悪趣味なジョークだろうと笑った。しかし、彼はひどく退屈していた。もしこれが本物なら、世界はもっと面白くなるのではないか。


彼は、誰を蘇らせるべきか考えた。死んだ祖母、偉大な芸術家、歴史を変えた学者、人々に勇気を与えた指導者。しかし、Aの知識は、浅く、曖昧なものだった。歴史上の人物の偉業は、ネットの短い記事や、誰かが編集した動画でしか知らなかった。


彼は、退屈しのぎに最も有名で、最も歴史に大きな影響を与えたとされている人物を蘇らせることにした。どうせ誰かのいたずらだろうと思い、完璧な善人を探すより、確実な人物を選ぶべきだと考えたのだ。


ペンを握り、Aは自信をもってその名前を書き込んだ。そして、彼が知っている限りの生前の行いも、曖昧な言葉で添えてみた。

彼は退屈しのぎにはいささか物足りなく感じた。


その瞬間、部屋の片隅に、見慣れない男の姿が現れた。

その男は、口ひげを蓄え、軍服のような服を身につけていた。彼は静かにあたりを見回し、そして不敵な笑みを浮かべた。


「お前は一体、誰を蘇らせたんだい?」


背後から声がした。振り返ると、そこにいたのは、透き通るような白い翼を持つ存在だった。天使?いや、ノートを落とした者だろう。


Aは、興奮とわずかな恐怖で、息を呑んだ。

「世界を大きく変えた人物です。彼なら、この退屈な世界に活力を与えてくれるでしょう」


Aの言葉を聞くと、天使は何も言わなかった。ただ、深く、深く、ため息をついた。そのため息は、何万年もの歴史の重みを含んでいるようだった。


天使は何も言わず、ふっと姿を消した。


部屋に残されたのは、Aと、そして不敵に微笑む男。

Aはまだ知らなかった。天使の完璧な善意が、完璧に退屈な世界を、完璧に混乱させる引き金になることを。


死神


髭を蓄えた男は、何の躊躇もなく白いノートを手に取った。彼はまるで、戦線からの情報を確認するかのように、そのノートのルールを注意深く確認していた。


「これは素晴らしい。私の帝国には欠かせないものだ」


Aが呆然と見つめる前で、男はペンを横から奪い、次々と名前を書き始めた。それはかつての部下たちの名前だった。名前を書くたびに、部屋の空気は重くなり、男たちが次々に姿を現した。彼らの顔は、ノートに書かれた行いの通り、冷酷で、狂信的な光を宿していた。

男は、Aを無視して、蘇った部下たちに淡々と指示を出した。

「諸君、我々の計画はまだ終わっていない。この新しい世界で、再び理想を築き上げるのだ」

男の言葉は、この平和に慣れた世界では聞いたことのない、熱と力に満ちていた。Aは、自分のささいな退屈しのぎが、とてつもない代償を伴うことにようやく気づき始めていた。

彼が作り上げたはずの「面白い世界」は、すでに彼の コントロールを離れ、誰も予想しない方向に進み始めていた。

髭を蓄えた男の後ろで死神がりんごを持って笑っているのが見えた。

最後まで読んでくれてありがとうね。

あのノートより怖い結末になるんだろうなーって感じでおしまい。、

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