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クラウンズ  作者: 快良
7/7

〜旅館殺人事件〜

瑠斗が過去を明かしてくれてから4日程が経ち、旅館に泊まるのも明日が最終日で、今から寝ようという時間だ。

「明後日で最後かぁ〜早かったなぁ〜」

「そうだな…。なあ、ちょっと聞いてもいいか」

最近ずっと考えていたことがあった。

「なんで最初の事件の時はコイツ頭おかしいのかってぐらい飄々としてたクセに、爆発事件の時から妙に焦る場面が増えた気がする…というかなんというか…。なんでなんだ?」

「自分でもわからないけど…。僕はきっと…。水斗を兄に重ねていたんだ。水斗の前でだけは全てをわかったように…みんなの想像する天才であれなくてもいい…って思っていたい。ただの子供でありたい…。推理ショーは楽しいよ。でも…全てが最初からわかってるような皆の理想の天才のように魅せるのは面倒くさいよ。面白い事件を求める?馬鹿馬鹿しい。人を救えればそれでいいさ。書類仕事が苦手なのは本当。それでも…事件を解くことをだるいだなんて思ったことは一度たりともない。この仕事は僕の唯一の生きる希望。これで満足した?じゃ、寝よ寝よ!」

こんな暗い話を俺はさせてしまったのかと、少し反省した。後悔はしていない。

「じゃあ、おやすみ…」

といいかけたところで女性の劈くような悲鳴が聞こえてきた。

「何事!?」

「ただの痴話喧嘩とかであってほしいもんだが…」

「…。そうだね。」

少し間を空けたのが気になったが、気にしないことにしよう。さっきの重い話のあとだ、少しぐらい反応が遅くなることもあるだろう。

俺と瑠斗はすぐさま部屋を飛び出して、音の発生源を探った。

「声はどこから聞こえた?」

「多分声の響き方からして…ここが12階だから…11階かな…。わかんないけど…。待つ時間が惜しい、階段で降りるよ」


10分後


浴衣で走るのでさえ難しいのによくそんなに喋れるな…。軽く感心しながら階段を下った。

俺らが階段を降りきると、その近くに女性の死体が転がっていた。

「これ、は…。」

俺が唖然としていると瑠斗が捜査を始めた。

「服装的にここの従業員か…。クラウン様に報告後、警察に連絡しよう」

そういってスマホを取り出した、のだが。

旅館のwifiにもモバイルデータにも繋がらず、外部との通信が断たれてしまったのだと気付くのにそう時間は要さなかった。

「通信が切断されてるようだが…どうするんだ?」

「あ〜…通信機の方も駄目だ。外部との連絡はまず不可能だ。…仕方ない、まずは捜査を進めるとしよう。しばらくはここは安全だろうから、水斗はここの人を呼んできてくれ」

前まではいやいやながらに身体を動かしていただろうが、今はなぜだか動く気になれる。

「…死ぬなよ」

そう一言残して走り出した。


ここは十階か…。

「痛ッ」

いってぇなオイ…。浴衣がよれたか…?

「早く一階に行かなきゃなのに、こんなとこで転ぶとは…」

ん…?


水斗を見送った後、僕は死体を観察した。死因は恐らく腹に刺されているナイフだろう。ただ、刺し傷が何ヶ所もある事から犯人はド素人か恨みからか。

周りをよく見ると、悲鳴が聞こえた割に争った形跡がない。花瓶なども飾られている....この花瓶は、恐らくここで争えば倒れるはずだ。なのに倒れるどころか花びらすら散っていない。

それに血もここで刺し殺したにしては少なすぎる。

とするとどこかから死体を運んできた…?なんのために…。


急いでフロントに向かうと、フロントの前には人が集まっていた。

「あぁ、助手様ですよね!アインスの探偵、瑠斗様の助手様!」

フロントにいた従業員が急いで駆け寄ってくる。

「あれ?瑠斗様は…?」

「あぁ、今事件現場で死体を調べている。俺は外との連絡ができなくなっていた為にこうして従業員を呼びにきた」

「そうでしたか!ですが…こちら、今は通信切断に関してのクレーム対応に手一杯でして…。伺うことはできないかと…。ここは山奥ですし地元の警察が到着するのにも最低でも明日と…。」

「そうか」


やばい、水斗の帰りが遅すぎる…!いくらフロントが混んでてもこうも遅いのは…。僕のせいだっ…。また僕は水斗を危険に晒して…!

「瑠斗、どうしたんだ?」

もしかしたら、コイツは。

「水、斗…?どうして。」

「いやぁ、従業員がいっぱいいっぱいでこちらに割くことができないって…。」

「…そうか。」

そして僕はソイツの腕をそっと掴む。

「…そっちから来てくれて助かるよ。変装を使いこなし数々の完全犯罪を成り立たせた探偵の宿敵…。トーカ。」

「流石はアインスだ。」

「水斗はどこにいる?水斗さえ無事ならこの際お前は見逃しても構わない。」

「…アインスの探偵サマはそんなにも助手に依存してるのかい?…君には特別に私の素顔を明かしてあげよう。…そういうなにかに依存している者をぶっ壊すのが私の楽しみなんだ…。君は私を楽しませてくれるのかい?」

そう言って水斗の皮を剥ぐ。するとコイツの素顔が現れた。が、今はそんなことを言ってる場合じゃない。

「質問に答えろ。水斗はまだ生きてるんだろ。どこにいる。」

「え〜?私的にはここですぐ教えてしまうのは面白みがないんだよねぇ…。ねぇねぇ瑠斗くん…。」

…コイツ、なんで僕のピアスのことをっ…!?

「触るなっ…!」

さっきからのコイツの表情…。なにを考えてるのか全く読めない。

「はぁ、連れない奴だな。いいよ、君のだーいすきな水斗君は今頃10階ですやすや寝ているさ。今は見逃してあげるけど…次は君の大事な物を奪ってあげるから。あと、通信切断は私がやったんだよ。ごめんね、どうしても君と二人きりで話したかったんだ。…アデュー!」

今見逃したからってこの僕が水斗を危険に晒した奴をただで野放しにしておくわけないだろ。

…まあ、あんな奴のことは後でいい。今は水斗だ。

「待ってて、水斗っ…!」

僕はダッシュで階段を降りた。

そして僕は水斗を見つけた。水斗は奴の言葉通り寝ているだけだった。

「水斗っ…大丈夫…!?」

「ん、あ…?瑠斗…?ここ、は…。」

まだ記憶が混濁しているようだ。

「ここは十階だよ。そして…今回の事件はどうか知らないが…今後あのトーカが関わってくる可能性が高い。」

「トーカ…?誰だそれ」

「水斗はトーカも知らないのか。トーカは変装などの技術を用いていくつもの完全犯罪を成り立たせたとされる凶悪犯だ」

「そんな奴がこんな場所に…?」

僕だってあんな奴には会いたくなかったさ。

「あぁ。僕は奴に興味を持たれたらしい。恐らく今後も関わってくるぞ。」

アイツには関わりたくないが、あっちから来るなら撃退するしかない。

「とりあえずアイツの事は放っておいて、今はこの事件を解決しなくちゃ…。立てる?水斗」

「あぁ、大丈夫だ」


また心配かけさせちまったようだな。

少し悪いことをした気がする。

「俺としたことが…。とにかくソイツをとっ捕まえないとな。」

俺、なんか変なこと言ったか?

「…捕まえたい気持ちは山々だけど…。正直、この万全じゃない装備でアイツを捕まえるのは難しい。まずは帰った後、クラウン様に助力を求めてからかな。」

「じゃ、じゃあ、この事件はどうする?」

「この事件は多分アイツは関わってはいない。とりあえずこの事件はもう突っかかって来ないだろうし、フロントに行こう。」

「そうだな…。結局フロントにも行けなかったしな…。」


「今度は瑠斗様と一緒なのですね!事件の捜査はどうでしたか!?」

女性の従業員がこっちに駆け寄ってくる。

「今度は…?」

俺はまだここに来ていなかったはず…

「あぁ、そうだね、捜査は順調だ。ところで、事件の概要は聞いているのか?」

あ、そうか。そのトーカとかいう奴が俺の寝ている間にここにきたのか。

「いえ、事件があったというだけで…。なぜそんなことを?」

「いや、なんでもない。従業員さん、ひとつ頼みがあるんだけど」


「なんで厨房なんかに…?」

「それは後で話すよ。へぇ、ここは何人体制なの?」

「基本的には3、4人で…。」

どんどん物色し始める。本当に正義の探偵なのか疑いたくなる手付きだな。

「おい、ガキ。」

「うわぁっ!?なにするのさっ!」

俺は瑠斗の首根っこを掴んで持ち上げた。

「いくら探偵でも素手で厨房をベタベタ触りまくるのは良くないだろ。」

「まあ、それはたしかに」

「ほら、これ使え」

「なんでこんなビニール手袋なんて常備してるわけ?」

「俺が若干の潔癖が入ってるからだ」

潔癖というより、自分の中のルールが厳しいだけだが。

「う〜ん…。まあ、こんなもんでいいかな。」

結構関係値は深まってきたがやっぱり外で推理してる時のコイツの頭の中だけはわからねえな..。

「んで?事件についてはどれぐらいわかったんだ?」

「あとちょっと」

そういって歩き出す瑠斗の背中を追う。

「どこに向かってるんだ?」

「スタッフルームだよ」

「...従業員の中にいると見てるのか?」

瑠斗は小さく頷いた。


「なるほど...」

「なにかわかりそうか?」

「あとちょっと、かな。」

「動機はなんなんだ?」

「恐らく復讐か、怨恨か...ってとこかな。このロッカーはあのフロントで見た女性のものだけど....ほら、明らかにボコボコだから、蹴られていたんだろう。所謂いびりかな。ゴミ箱にもヘアゴムが捨てられているし...。ホテルで働く女性にとってヘアゴムは必需品だし、あの人の髪の長さなら結ばなければならない。かなり陰湿だとわかる。....!」

瑠斗がなにかに気付いたようだ。頭の中がよく回るからこそ説明するのが面倒くさいんだろう。

「じゃあ、関係者を集めようか」


「お集まりいただきありがとう。一応説明しておくけど僕はクラウンズのアインス探偵、春日瑠斗。

そして今から、このホテルで起きた事件の犯人を詳らかに説明していこうと思う。

まず、この事件の動機は怨恨だ。なぜ殺されるほど被害者が恨みを買ってしまったかというと、被害者は...そこの女性にいびりをしていたんだ。そうだね?」

「い、いえ..そんなことは...」

「本人はこう言っているけど、証拠がここにある。これは君のヘアゴムだ。これがゴミ箱に捨てられているのを発見した。大方、この被害者が捨てたんだろうね。そして極めつけは君の彼氏君だ。被害者はなんと、君の彼氏を寝取っていたんだ。それに気付いた君は衝動的に殺してしまった。だから一応この場に彼氏君も呼んだんだ」

「で、でも!それならなんで包丁を持ってたんです!調理場でもないのにッ!」

「はい、自白ありがとう。だって君は事件があったという情報しか聞いてないんだろう?自分でやってなければそんなの知ってるわけない。というか、君は色々杜撰だね。事件現場が調理場じゃない事とか、包丁で刺殺されてたとか。まあたしかに調理場じゃない場所で、どうやって包丁で殺したかという疑問はあるね。まあ簡単なことだ、君はフロントの受付だから基本厨房に入ることはできない。ならどうしたか。調べたら今日、丁度刃を欠けさせてしまった人がいた。もちろんその包丁はすぐゴミに出された。受付にいた君は、包丁らしきものがゴミに出されるところを見かけた。そして君は仕事が終わった後その包丁を取り出し、その後この被害者を刺し殺して少しでも容疑を広げるためスタッフルームから運び出した..。これが事件の概要だ。さて犯人、なにか反論は?」

「そ、その包丁が丁度それだって証拠は!?私が使ったっていう証拠は!?」

「ちなみにその包丁はこれだ。」

「なん...で」

「君のロッカーに入っていた。どこまでも杜撰だ。ちなみにこの血塗れの包丁を壊してしまったという人物に見せたところそれだと言った。さあ、反論はあるか?」

女性は力なく崩れる。

「これにて事件は閉幕だ。わざわざ呼んで悪かったね彼氏君。君の彼女...いや元カノかな?がしでかした出来事を知って欲しかったんだ。」

「い、いえ...ひとつ、いいですか。俺は...心までアイツに感化されたわけじゃない。心は今でも...。」

「...そうか。水斗、この女性を拘束してくれ。警察が着くのは明日だから」

全く人遣いの荒い奴だ

「しょうがないな...。すみませんね、お嬢さん。こんなところでなければ拘束なんてせずすぐに警察に引き渡してやれるのに。」


1週間後


「いやあ、あの事件は疲れたよねえ、事前にクラウン様に連絡できなかったせいでお金にもならなかったし。変な奴には目をつけられるし。」

たしかにあの事件は疲れたな...ただ転んだだけだと思ったら寝させられて、しかもその間にトーカとかいう野郎が俺に変装していた...とか、色々意味がわかんねえ。

「瑠斗的に今回の事件はどうだったんだ」

「どう...って?」

「だから、その...なんだ、こう...犯人に対して思うこととか」

俺は...少し同情...というのだろうか、そんな感情を抱いていた。それは俺だけなのかと、少し気になった。

「犯人...ね。可哀想だとは思うよ。でも殺人はいけない。彼女にとって彼氏という存在がどれだけ重かったかは計り知れないが...彼女はきっと彼氏を柱にしていた。他人という柱に全体重をかけながら生きるのは危ない...ってことかな。その人自身にとっても、柱にされる人物にとっても。」

「それは...」

まるで自分に言い聞かせるような口調で、聞いてて苦しくなってくる。

「だから僕も、いつかは...。」

「別に柱側は迷惑ともなんとも思ってないがな。ただそこにいる、それだけ。ただ、自分が誰かの柱となれているのなら、嬉しい。ただそれだけだ。...なんか、重い話させちまって悪いな。」

「っ...泣いて、いい...?」

「はっ....」

全く、俺は...。またコイツを泣かせてしまったみたいだ。

...コイツは、他人という柱に寄りかかってるのが自分だけだと思ってんのか?コイツも案外アホだな。頭こそ良いものの精神年齢は年相応で、突飛な行動も目立てば悩みもする。瑠斗は俺を兄のように感じていると言ったが俺もコイツを弟のように感じているのかもしれないな。

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