〜東京都爆発事件・解決編〜
まず、二つの事件は全くの別物だ。だから、それぞれの犯人を推理で答えまで導かなければいけない。
そもそも僕は忘れていたんだ。冬馬の得意とするものは尾行だ。ピッキング、ハッキングはお手の物。
冬馬の別名は「見えない影」。
影のようにどこまでもひっついてくるのに姿がまるで見えないことからつけられた別名だ。
アイツがクラウン様のスマホやパソコンの連絡などを盗み見れたとすると全て繋がる。クラウン様の私的な家になにか自分の見られたくないものなどが保存されていた場合それを消すためにようやく住所を手に入れたから爆弾を仕掛けた。そしてたまたま僕らがそこの扉を開けてしまった。そういうことだろう。だとするなら…。
『クラウン様。後で僕の家に来てください。重要な話があります。』
僕はクラウン様に連絡をいれた。多分これで釣れるはずだ。
その間にもう一つの事件に関しても整理しておこう。恐らくあれは上原大地の仕業だろう。あの発言をしておいて白はないはずだ。後は証拠と動機の確認だけだ。そもそも上原大地は今までも事件を解決する時に大分危ないやり方をしてきたから、こんな暴挙に走ってもおかしくはない…。
クラウン様が来たようだ。
瑠斗の奴、なにがしたいんだ?いきなりクラウン様に会うなんて…。
「言ったものは持ってきてくれましたか?」
「あの事件に関しての話だったな。」
「はい。水斗から話を気になる話を聞いたので。」
「…そうか。あの事件の概要は前まではあの家に保管していたのだがついこの間今の家に移したから残ってたんだ。ほら。」
「ええ。ありがとうございます。厳重にこの家で保管させて貰います。どこに仕舞おっかな〜、ここの棚とかにしておこっと。」
はっ、杜撰な奴だ。僕が聞いてるとも知らずに。
この「見えない影」の僕が盗聴器を仕掛けてないとでも思っているのか。あの資料を保管するだなんて瑠斗もついてないな。いくら瑠斗でもあの資料を見られるわけにはいかないんだ。
流石はアインスの探偵だ。逆にこんな紙が送られてきてしまうとは。
『僕の推理に間違いはないよ。
特別に僕の別名の所以を見せてやる』
「はは、こりゃおもしろい。私の真似事か…。この私が犯人であると見抜いたと?」
翌日。
これで全ての盤面が整った。
「さぁ、推理ショーの時間だっ…♪」
「まず、この場にいるのはクラウン様、水斗、僕、ツェーンの上原大地。それから盗聴器の先に冬馬。そうだろ?って、盗聴器から声は出せないか。
そもそもこの事件は同一犯の犯行に見えたがただの偶然の産物だ。まず僕がどうやって犯人を炙り出したかをご説明しよう。
これをみてくれ。…おや?上原大地、どうしたのかな?随分と焦った表情をしている。これは封筒だ。封筒自体はなんら変哲もないただの封筒。だが…みてくれ。これは僕のピアス。ボイスレコーダー機能付の。じゃあ昨日撮れた音源を流してみよう。
『はは、こりゃおもしろい。私の真似事か…。この私が犯人だと気づいたと?』そう、これは上原大地の声だ。僕は昨日この封筒の中に取れないようにしてこのピアスを入れた後、この内容の紙を入れた。僕は探偵の悪い癖、独り言が激しいってのを利用したんだ。そしてこの上原大地は最初の事件…つまり、予告をした方の犯人な訳だ。
もう一つ。水斗が被害にあった方の事件の犯人はかの『見えない影』の仕業だった。まあそれに気付けたのは他でもない上原大地のおかげだがね。多分この二つの事件が同一犯ではないことを伝えたかったんだと思う。かの有名な『見えない影』はピッキング、ハッキングや尾行を得意とする。これで気付いたんだ。クラウン様のスマホやパソコンがハッキングされてるってね。だから昨日、クラウン様を『重要な話がある』と言って呼び出し、冬馬の目的を探った。冬馬の目的は1ヶ月ほど前にやらかした事件の記録の隠滅。最初その事件の記録はあの家に置かれていた。だがそのほんの数日前にデジタルに残していた。それを新しく刷り直してもらった。僕は釣りをしたわけだが、まんまとかかってくれたよ。
そしてその紙をわざと聞こえるように『この棚に入れておこうかな〜』と言った。そしてまんまとその棚を漁る姿を僕のピアスは捉えてくれたよ。そら普通の監視カメラなんて冬馬には効かない。でもピアスには気を配らないだろう。しかもその棚の反対側には僕のピアスを飾るゾーンがあるからね。たとえそんなピアスがあることを知っていたとしてもどれがカメラ付ピアスかなんてわからないさ。その映像は今、僕の耳にある。いやぁ、最初は難解だと思ったが気付いてしまえばなんてことはなかった。
これが…『絶望の神童』と恐れられた男の本髄だ。
十分に味わえたか?絶望の味を。
じゃあ事件はこれにて閉幕!おっと…冬馬、逃げるのは良くないなぁ。そこに居るのはわかってる。この神童から逃げられると思うなよ。水斗を傷付けた罪、その身で償え。」
最後の瑠斗は今までの雰囲気からは感じられないような恐ろしさを感じた。それにアイツの別名なんて初めて聞いた。
「どうしたの?水斗」
あの恐ろしさは瑠斗の本性なんかじゃない。
そんな気がしてならない。
「いや、なんでもない。」