第0話 白龍協会
第0話 白龍協会
とある世界の人類は、魔族の大規模侵攻により、窮地に立たされていた。しかしある日突如現れた謎の組織『白龍協会』が開発した魔族殲滅人型兵器AHEDシリーズによって窮地を脱した。
AHEDシリーズは次々と魔族を倒していき、人類は勢力圏を魔族進行前の7割まで戻していた。
「AHED-08の量産は良好、狙撃手型のAHED-09、全機能を改善し最新型AIを搭載したAHED-10の開発に順次取り掛かっています、リビア会長」
「そうか、分かった。私は、エンジンの改良をするから機体の開発を引き続き頼んだ。」
「分かりました、では失礼致します。」
そう言って去っていく部下を見送る。魔族の侵攻の勢いは、だいぶ衰えたとはいえ油断はできない。
成人男性と同スペックのAHED-01、エンジンを改良し01の3倍のパワーを出せる02、医療技術を搭載した03、素材を軽量化し偵察に特化させた04、武道家の動きを学習させたAIを搭載した05、身軽さを重視しつつパワーを出せるようにした06、水中戦に特化した07、それぞれの機体の長所を活かしつつ短所を減らし量産を可能にした08、そして現在開発中の09と10を含め、どの機体も独自開発した魔力ネットワークに繋げてあり動きを制御・監視し不具合が起きないようにしてある。
いきなりこの世界に来た時は、焦ったがいわゆる召喚者特典の『機械製作』を利用しなんやかんやあって今に至る。
〜白龍協会兵器開発部〜
「09の開発は進んでいるか?」
「はい、リビア様。狙撃精度はほぼ100%に安定しています。新型スナイパーライフルの開発も順調で人間用の量産型、09専用の物、共に生産可能段階まできています。」
「分かった、09のプログラムの最終調整は俺がやるからCPUを俺の部屋に運んでおいてくれ」
「了解しました。」
〜白龍協会戦闘部隊『白龍の翼』〜
『カルヴィ隊長!大変です!』
『どうした?そんなに慌てて』
「それが、たった今魔族領に接しているリステアに、魔王軍四天王の1人が現れた上にファルグレアが魔族と手を組んだとの報告が!」
「なにっ!?あの愚王め遂にやりやがったか、友好的な魔族とならまだしも、侵攻してくる魔族達と手を組むとはとんだ馬鹿野郎だな。それで戦況は?」
「ファルグレアの兵自体は警備していたAHEDと我々の兵で抑えられていますが、四天王にかなりの数のAHEDを壊されています。」
もう少しで09、10が完成する、それさえ完成すれば撤退させることができるはず⋯⋯
「出動可能機体を全てリステアに向かわせろ、2番隊と3番隊は食料を持ってリステア兵を支援しにいけ。俺も準備ができ次第向かう」
「隊長も向かわれるのですか?」
「あぁまだどの四天王か分からんが少々因縁があるのでな」
「分かりました、至急手配致します。」
「あぁ、頼んだ」
〜白龍協会本部会長室〜
「リビア会長、04の偵察により得た情報から推測するに四天王は、煉獄将イグニだと思われます。」
煉獄将イグニ、その名の通り炎系統の魔法を得意とし剣術と組み合わせ戦う四天王の1人相手にするには少々やっかいな奴だ。
「魔法兵エルグラム、魔法騎士フェルミオン⋯⋯それぞれの試作壱号機を出せ、あれがあれば負けはしないだろう。それとAHED-10にこの装置を取り付けておいてくれ」
「これは、なんですか?」
「異世界から魂を呼び寄せる装置だ。正確には、弱っていたり消滅しかけの魂を呼ぶ装置だがな。AHED-10のAIはまだ調整不足だ、万が一暴走でもされたらせっかくの機体を壊さねばならなくなるからな、それなら異世界人にでも任せたほうが良いからな。」
「異世界人は信頼できるのですか?それに良い性格の人間の魂を呼べる保証はあるのでしょうか?」
「信頼できる筋によれば、悪いことをした者の魂は例外なく地獄の王の下で裁かれ管理されているらしい、だから、おそらくは大丈夫だ。」
最も召喚されるときになぜか流れこんできた情報だがな、まぁ良いだろう。
「では、出撃の準備ができ次第出発致します。」
「あぁ、頼んだぞ。」
まさか四天王が出しゃばってくるとは流石に予想外だったな、量産に成功してたのが救いだな。せっかく異世界に来たんだ、ゆっくり過ごすためにも攻撃的な魔族には消えてもらおう。
〜リステア王都〜
「まさか、こんなことになるとは思わなんだ。」
「フェルミオン陛下、お逃げ下さい。ここは我々白龍協会が食い止めます」
「しかし…」
「白龍協会リステア支部長として全会員の言葉を代表して言わせていただきます。我々の目的は、敵対する魔族を倒すこと、その過程で死ねるなら本望です。」
「分かった、この王都は任せたぞ。」
「必ずや敵を撃退してみせます。」
「燃えろ!燃えろ!全て燃え尽きよ!ここは新たな地獄となるのだ!」
「魔族の姿を確認至急排除します。」
「ほう?我に挑む者がいるとは⋯⋯名を名乗るがよい」
「私は、魔族を倒すために造られたAHED-06改。名前などありません」
「そうか、では無様に壊れるがいい!」
「戦闘体制に切り替え…ガガッ」
「所詮この程度か、つまらぬな。」
『毒龍斬り毒龍!』
「ぬおっ!?少しは骨のあるやつがいるようだな、名を名乗れ。」
「結構本気で斬ったんだがな…俺は、白龍協会戦闘部隊『白龍の翼』隊長カルヴィ・ブラックだ。」
「この世界で産まれた者が例外なく与えられ、魂に刻まれる技能、通称魂技。その奥義を見せてやろう、魂核解放『紅蓮邪王剣』」
あれに触れれば一瞬で瀕死だ、見ただけでそれが分かる。
俺の魂核解放とあいつの魂核解放の相性はかなり悪い、かと言って何もしなければ即お陀仏だ。一か八かやるしかないか。
「魂核解放『白霧幻夢』」
そう言い放つと体が霧となり空気に溶けていくそして空気と完全に同化していく。
「なるほど、考えたな。確かにそうすれば攻撃は当たらん。それならばこの一帯を熱波で吹き飛ばすのみ!。『焔王断葬!』」
灼熱の剣が地面を叩き熱波が吹き荒れる
「これでどう…ゴフッ!?馬鹿な、なぜ?…」
「とっさにお前の周りに移動して助かったよ、自分の技で自分がダメージを食らうとは考えられられないからな。最も右腕は吹き飛んじまったがな」
「ククッ、そうか…では見せてやろう、本当の魂核解放というものを、邪魂解放『邪焔龍刃丸』」
生命の核である魂を燃やし崩壊させる闇の剣。魂が壊れれば生命は肉体を維持できず、消滅する。それが我が真の奥義『邪焔龍刃丸』
「塵になるがいい!邪炎斬」
「チッ!間に合えっ!アイスウォール!!」
即座に展開された氷の壁は、あまりの高熱にジュウジュウと音を立てながら溶けていった。
「(どんだけ熱いんだよ、あの剣そろそろアレに来てもらわないと死んじまうぞ)」
その時、大きな銃声が響き渡った。
「ゴハッ!?ゴフッゴフッ、これは狙撃!?一体どこから…」
再び銃声が響き渡り、次の瞬間イグニの体から氷の華が咲き氷で覆われる。
「(あれ特級の水魔法、フロステリア…アレが間に合ったのか!)」
「魔法騎士フェルミオン試作壱号機、ただいま到着しました。敵の排除に移行します」
「特級魔法…なかなかの威力だったぞ、この姿になるのは40年ぶりだぞ?そのことを誇りに思いながらくたばるがいい。」
そう言い放つイグニの体が赤色に変わっていき角が生え、腕が四本の悪魔のような姿になった。
「ありゃ一体何なんだ?」
「あれは、獄炎の魔人イグニです。200年前の魔人戦争で20万を超える人間を殺したと言われる魔人です。」
「丁寧な解説どうも、魔人か……道理で強い訳だ。こりゃ倒すのは骨が折れそうだな。」
〜王都南部〜
向かってくる魔族を倒す、倒す、倒す、ひたすら倒す、何時間、何日たっただろうかあの事故で命を落とし、意識がずっとぼんやりとしているうえに体が勝手に動く感覚がある。意識ははっきりとしないが、不思議とこの世界についての情報が入ってくる感覚がある。
その時視界の端で魔族が小さな女の子を殺そうとしているのが目に入った、その瞬間おぼろげだった前世の記憶が蘇ってきた。あの子を助けなくては見殺しにはできない、そんな想いが強くなっていく。
『魂の覚醒を確認、機体の主導権を召喚者に移行します。召喚者サポート用AI起動します。』
突然、勝手に動いていた体を動かせるようになった。
その瞬間少女に迫っていた魔族を殴り倒した。
「なんで急に体を動かせるようになったんだ?」
『その疑問にお答えします、この機体は召喚者用に造られた物で覚醒まではAIにより動かされるようになっていましたが、召喚者の魂の覚醒後は主導権が移行されるよう設定されていました。』
「なるほど、でこの声はなんだ?」
『私は召喚者サポート用AIです。覚醒後の召喚者をサポートします。早速ですがこの近くにいる獄炎の魔人イグニの討伐をしてもらいます。』
「随分といきなりだな、まぁやってみるか。」
そうして俺はイグニの元へと向かった。
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千堂家の字を千銅に変更しました。2025/08/09