第46話 魔族(6)
【ディルグシュ・アインシュタイン視点】
僕の名前はディルグシュ・アインシュタイン。
最年少でSSSランクになった、最強の男――とちまたでは噂されている。
そのおかげで、可愛いパーティーメンバーを侍らせることにも成功した。
僕のパーティーメンバーのヴィエナとコトコ――二人とも最高の美人だ。
それでいて、二人はめっぽう強い男に弱い。
だから、僕は二人のことを好き放題にできる。
しかも二人は、冒険者としても最強だった。
だから、僕は実質なにもせずに美味しいクエスト報酬を得られるわけだ。
そう、僕の強さはすべてうそっぱちだ。
どうやったか?
簡単さ。
僕はあらゆる魔道具を狂わせることができる。
まあ、僕の魔力の波長は少し特別でね……。
一時的に、魔力を増幅させて、魔力が大量にあるようにみせかけることができるのさ。
みんなこれに簡単に騙される。
あとは僕のこの見た目と声。
まあ、これは整形したんだけどね……。
いまどきはお金を出せば、整形魔法でなんでもできる。
この甘いマスクと声が謎の説得力を産み、みんな騙されるんだ。
僕が最強だってね。
それにしても、冒険者ギルドできいたあの名前――ノエルとかっていったっけ?
どうやら僕と似たようなことをしているやつがいるみたいだね。
魔力測定器を破壊させるなんて、この僕のように、魔力を大量にあるように錯覚させるインチキでも使わないかぎり、ありえない。
そのくらい魔力測定器は丈夫な機械なんだ。そんじょそこらの魔道具と同じではない。高級品だ。
あれは職人の手でつくられた、なかなか壊れないしろもの。
そんなものを壊そうと思えば、僕みたいにあり得ない数値にまで魔力を増幅させるインチキを使うか、それか――まあこれはありえないけど――実際にありえない数値の魔力を持っているか、しかない。
後者はもちろんありえないから、きっとノエルとかいうやつもズルしたんだろう。
まったく、まさか僕と同じ能力を使えるやつがいたなんてね。
しかも、僕と同じ手口で詐欺を行っている。
そんなやつ、ゆるせないよね?
だって、僕にしかない能力だから、みんな騙せているんだよ?
もしそいつがへまをして、バレて、仕組みが世間に知られたら?
そしたら、いずれ僕の立場も危うくなる。
そうなるまえに、なんとか僕の権力で、そのノエルとかいうクソを叩き潰しておかないとな……。
そんなある日のことだった。
王様から呼び出しを受けて、僕も魔王討伐に参加することになった。
まあ、報酬がおいしいから、当然やるよね。
でも、僕は実際には戦わない。
うまいことうしろのほうで、それっぽい動きをしているだけだ。
そうしたら、知らないまに仲間が倒してくれるからね。
僕の魔力は、存在するだけのかさましの魔力でしかない。
それは威嚇には使えるけど、実際には意味のない魔力だ。
もちろん魔法に使うこともできないし、身体強化に使うこともできない。
ただの見せかけの魔力ってわけさ。
まあ、人を騙すのには最適だけどね。
こうやって僕は上り詰めてきたんだ。
僕は戦わなくても、勝てる。
だから魔王討伐に参加した。
僕が実際に魔王軍と戦うことになるなんて、それはありえない。
そのはずだった――。
――なのに。
なんで僕は今、魔王と戦ってるんだ……!?
◇
【魔王視点】
このディルグシュ・アインシュタインという男……こいつを私のターゲットに決めた。
こいつはどうやら人間界ではそこそこ名の知れている男のようだが……。
しかし、私がみるに、あまりにも魔力が少ないではないか。
こやつの魔力は見せかけのものでしかない……。
私ほどの高貴な魔族ともなると、それがわかるのだ。
こいつの魔力はみせかけ。
そう、だったら、私にも倒せる。
私は、いきなりディルグシュ・アインシュタインのもとに攻撃をしかけた。
ディルグシュ・アインシュタインとの戦いはすぐに終わった。
私が少し闇魔法を撃ちこむと、ディルグシュ・アインシュタインはあっけなく死んでいったのだ。
おそらくこいつはただの詐欺師だな……。
普通の人間や魔族であれば、こいつの魔力にびびって、こいつを攻撃せずにまわりのものを攻撃するのだろう。それか、恐れて逃げ出すか。
それに、どうやら回避力だけは実際に高いみたいだな。
だが、私の闇魔法は必中の攻撃。
絶対に狙った獲物に当てることができるのだ。
しかも、ラッキーなことに、ディルグシュ・アインシュタインを倒すと、その横にいた女二人は、泣き出してしまったのである。
よほどディルグシュに心酔して、崇拝していたのだろう、絶望の表情を浮かべておるわ。
本来であれば、この女二人は私よりもはるかに強い。
しかし、もはや私のこの見た目に怯え、さらにはディルグシュを失った絶望で、戦意喪失しておるわ。
そりゃあ、こいつらからしたら、ディルグシュより強い私に勝てるはずがないと思うだろうな。
しかも、私は最初に魔王だと名乗った。
「ふははは……! 死ねぇ! か弱き人間どもが!」
私がゆっくりと強力な魔法を詠唱すると、本来強いはずのその女たち二人もあっけなく死んだ。
「ふはははは……! なんだ、思ったよりも楽勝ではないか……!」
やはり、天は私に味方しているようだ。
みな、私の都合のいいように、この世界は動いている……!
この調子なら、大丈夫だろう。
やはり、私は最高に運がいいのだ。
私がやればすべてがなぜかうまくいってしまう。
そういう運命にあるのだ。
こんなことなら、仲間を失うまでもなく、最初から私が動けばよかった……。
まあいい、この調子で、次は霧雨の森羅とやらをつぶしにいこう。
こいつらさえ倒せば、人間側の戦力は大幅にダウンする。
「ふははは待っていろ! 霧雨の森羅……!」




