第二話 リュウコサン
(鑑別…そっか。不具合なら不具合に対応できるけど、幽霊ならどうにかしようとしてもできないって割り切って、そこにコストをかけずにすむ…。)
武は一人納得した。
「…。悪いけど、そんなに暇じゃないよ。どうでも良いから、早く契約の書類書かせてよ。」
話は終わりと言わんばかりに竜骨は応接用のソファーから立ち上がった。
「バイト代出しますよ。」
ピクリ、と竜骨の動きが止まる。
「…いくら?」
「竜骨さんの働き次第ですけど、うちが抱えてる人死にが出た事故物件は4件あります。それを鑑別していただけたら15,000円。」
「…。」
竜骨さんの眉間の皺が深くなり、社長を睨んだ。また歯ぎしりでもしそうな顔である。
「…わかった。」
小さなため息混じりに言うと、竜骨はバッグから手帳を取り出した。
「次の土曜日なら、時間がある。」
「では、会社に10時集合でお願いします。物件は並木に案内させますので。」
「へ?俺?」
「何でこいつと?」
社長の言葉に武と竜骨は同時に聞き返した。
「並木は竜骨さんの仕事ぶりを見たんだろ?僕には霊感ないからな。」
「そんなのお…私だってないですよ。」
武は社長に食い下がる。
「こちらとしても管理上、一般の方一人で行かせる訳にもいかないだろう。こちらからお願いするんだから、竜骨さんをエスコートしてあげなさい。」