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猫の家

それからは、その行為が快感になった。

誰にも注目されない自分が、目にも止まらなかった自分が、猫を虐めてる間だけは奴隷を使役する女王様にでもなれた気分だった。

何をしても、罵声を浴びせても、反抗できない相手なら何でもできた。


(バレちゃいけない。バレちゃいけない。)


家族の目を盗んで、猫を虐めた。

家族にバレないように繰り返される行為にスリリングな刺激があり、猫を虐める内容も袋に詰めて困ってるのを見るだけでも楽しかったのに、手から伝わる生き物を壊す感覚や視覚的な刺激を求めて虐める内容は過激になっていった。


(不倫ってこういう感覚なのかな。)


確かにこれはやめられない。

明日から取り上げられてしまったらと思うと絶望的な気分になる。


何も知らない家族は子猫を凍らせた冷凍庫から解凍した食材で料理を食べ、猫を溺死させた洗濯機で洗った洗濯物を着た。猫の血を落とした風呂場で体を洗っている。


その、仕掛けた悪戯に気付かれないときのような爆笑を噛み殺す感覚が筆舌に尽くしがたいほど愉快だった。


(ザマァミロ!)


ケタケタケタケタ、自分じゃない自分が体を震わせて嗤っている気がした。


手に掛ける猫の数が増えていく。

町内で野良猫が少なくなったのは加織のせいだと誰も気付かない。

当たり前だ。

だって、人間は加織をナメているのだから。

何かしてるなんてやり玉に上がるはずがない。

何を言っても良いと思って、何を言っても言い返すなんて思ってないんだ。

そんな人間が、猫を虐めているなんて思わない。

加織が何をしているかなど、何も気にならないだろう。


(まるでダークヒーローみたい。)


真の姿を隠して、人知れず町の害獣を懲らしめてる。

それもまた、都合のいい解釈による快感だった。

家族はもちろん加織のやってる事を知らない。

興味も関心もない。つまらない対象でしかなかったから。




家にいるけど家族じゃない。

いてもいなくてもどうでもいい存在。



止める人間のいないまま、その事実から目を反らすように、加織の猫虐めは猫殺しに洋装を変えていった。


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