猫の家
「早く跡取りが欲しいってお袋も気を揉んでるんだよ。」
やがて夫婦の間に子供ができた。
「女の子なの?跡取りなら男の子が良かったのに。」
「女の子なんてお嫁に出ちゃうじゃない。」
「夫婦の相性が悪いと望んだ形で出来ないわよね。」
「まぁまぁ、子供なんてすぐできるよ。」
「男の子生まれるまで子供作れってさ。」
「お袋も勝手だよな。子供育てるのにいくら掛かると思ってるんだよ。」
やがて娘が生まれ、千絵と名付けられた。
「私が千鶴なんだから、子供も似た名前にしなくっちゃ。」
「お袋が一文字入れろって五月蝿いんだよ。」
「しょうがないだろ。お袋には普段から助けて貰ってるんだから。」
「お袋が良いようにしとけば、ゴタゴタせずにすむんだよ。」
「反感を買って、女の子だからって可愛がられなかったら困るだろ。」
祖母となった義母は孫を可愛がった。
「千絵ちゃん。」
「千絵ちゃんはお父さんにそっくりね。」
「千絵ちゃんはお母さんみたいな陰気な子にならないようにしなきゃ。」
「千絵ちゃんは将来、お婿さんを取ってね。」
千絵はすくすく育つ。
「加織さんてば、千絵の苦手なものばっかり無理矢理食べさせようとして。」
「あの子のこと愛してないからって、千絵に当たらないでちょうだい。」
「加織さんがだらしないから叱られるのに、千絵のせいにしないで。」
「千絵、おいで。おばあちゃんがおやつあげるから。」
「千絵、おばあちゃんのこと好き?」
「千絵ちゃんはお花を習わせるの。きちんと塾に通わせなきゃ。」
「だって好きなことだけさせてたら、加織さんみたいになんにもできない子になっちゃうわ。」
「お袋は言い出したら聞かないんだよ。お前も知ってるだろ。」
「お前がしっかりしてれば、お袋だって文句言わないんだよ。」
「子育てを手伝ってくれてるんだから良いじゃないか。」
「お前は文句ばっか言ってないで、家の事しろよ。」
「まともに家の事も出来ないくせに、意見ばっか言うな。」
「疲れてるんだよ。」
「家に帰ってきて、愚痴ばっか聞かされる俺の身にもなれよ。」
千絵が少し大きくなって、保育園のママ友から言われた。
「それってモラハラじゃない?」
「何で言い返さないの?」
「言い返さないからナメられるのよ。」
影口でママ友から言われた。
「でも千絵ちゃんママって何も言えなそうだもんね。」
「健気ー。」
「ああ言うのは健気じゃなくって、意志が弱いって言うの。」
「結局自律してないからああなるのよ。」
「育ち良さそうだよね。人と争ってこなかった感じ。」
「いじめられちゃうタイプ?」
「こわーい。家の子もああならないようにしなきゃ。」




