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猫の家

人間同士の暴言・猫に対する暴力表現があります。

苦手な方・気分が悪くなりそうな方はここまでで戻ることをお勧めします。

自己責任を持ってお読み下さい。

秋谷加織あきたに かおりは32才の主婦だ。夫と娘、夫の母と暮らしている4人家族だ。


夫とは親戚の紹介で結婚した。

派遣をしながら家事手伝いをしていた加織が20台後半になり、体裁と将来を心配した親戚が半ば強引に結婚を決めた。

それでも円満な家庭を築けるはずと加織は努力していたが、夫は妻である加織の行いを逐一評価した。

はじめは、二人で出掛ける時に「出掛けるまえの準備が遅い。」とか、買い出しで「買い物の時間が掛かる。段取りが悪い。」と言ったものから、だんだんと変化した。


「味がおかしい。」と料理に調味料を足す、昼に来客があって夜に洗濯物を畳んでいると「洗濯物なんて昼間片付けろ。本当にとろいな。」、加織が掃除をしたあとも「何年やってるんだ、掃除くらいきちんとしろよ。他にやってることもないんだから。」と掃除機をかけ直す、と余計な一言や行動が増えた。毎日毎回。加織の行動が批判される。

はじめは数回、理不尽やできない理由を伝えてみたり、「私だって頑張ってる」と言葉にしたが、夫からは


「お前がきちんとできてないから俺が言ってやってるんだろ。」

「他の人はこれくらいやってるぞ、普通。」

「何でできてないのに自分を擁護できるんだよ。」

「頑張ってるって言うけど、頑張るのなんて当たり前だろ、仕事なんだから。」

「本当にお前、愚痴っぽいよな。」


と、言葉が返ってきた。

義母は、余計な一言しか言わない人だった。


「こんな洗い方して水がもったいない。」

「洗濯物の干し方が悪い。」

「一番風呂なんてお湯が固くて入れないわ。」

「私がお姑めさんといた頃はこんな掃除の仕方許されなかった。」

「加織さんの服は地味でダメね。」

「妻がしっかりしないと夫が侮られるのよ。」

「もう独り身じゃないんだからちゃんと自覚しなさい。うちの子に恥をかかせないでね。」

など、加織の粗捜しと批判が止まらない。

そして口癖のように言われるのだ。


「加織さんはここの家の人じゃないから。」


その度に孤独感が苛んだ。


(私がちゃんとしないからいけないんだ…)


ある時暗鬱な気分で庭で洗濯物を干しているとき、野良猫が塀の上でちんまりとしながら寝ているのが見えた。

ぽかぽかとした陽気の中、気持ち良さそうに目を閉じている。


(…猫は気楽でいいな…)


ふとそんなことを思いつつ、その姿に和んでいるとハッと我に帰った。

いけない。ぼーっとしていると、また叱られてしまう。と、パタパタと縁側から家の中に戻る。

家に入ろうとして、ふと、気持ちに暗い物が落ちた。

まだ思考とも、感情ともつかないそれは名前も明確な想いとしての形も持たない。

そんな不明瞭で確かな暗いものが加織の中に澱のように溜まっていった。


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