第五話 誘い(後編)
走り出した馬のような突風が吹き、稲の匂いが漂う。黒い人影も、壮年の男の首吊り死体も消えている。
竜骨はぜぇぜぇと息を吐いていた。
武は竜骨に歩み寄り、膝を着いた。
「…竜骨サン、大丈夫ですか?」
「じゃねーよ。」
良くない顔色で竜骨が応えた。
「…俺ももうダメです。」
「テメェはクタバレ。散々迷惑かけやがって…」
「ひどい!」
そこまで言い合うと、はぁ~っと二人は揃って半笑いの溜め息を吐いた。
「終わったんでしょうか…」
「あたりまえだ。もう終わりだよ、こんなバイト。」
竜骨は立ち上がる。
「まぁ、でも散々迷惑掛けられたけど、最後は助かったよ。」
「いやぁ…」
竜骨本人を前に竜骨の断末魔が漏れ聞こえたから、どうにか足が動けた事実を言葉にできず、武は曖昧に応えた。
武も立ち上がる。
「私は、幽霊が出ないっていわれても此処だけは住まねえ。」
「…俺も勧めずらいです。」
清浄な空気が漂う部屋を二人揃って見渡した。
「帰りましょう、竜骨サン。お疲れさまでした。」
「あぁ。」
武の言葉に竜骨は短く応え、703号室を後にした。
カシャン、と鍵の掛かる音が響いた。
第五話 誘い(後編) ー完ー
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この後、番外編を執筆します。




