第五話 誘い(後編)
(…こいつ、あのおっさんの霊を餌にしてたのか?)
"君を壊したら、天叢雲剣が見れるのかな?"
竜骨の、首を掴む手に力が籠る。
頸動脈が閉まり、視界が暗くなっていく。
「てめぇ…目的は何だ?!」
ようやく絞り出した竜骨の言葉に、黒い人影は一瞬黙る。キョトンとしているようだった。
"目的だって?見てみたいじゃないか。天叢雲剣。単純にさ。"
黒い人影は応えると、竜骨の身体に指先を突っ込んだ。
「ッッ…ぐがあぁっ………」
竜骨の喉から潰れた断末魔が漏れる。
腹膜を突き抜け、臓器の隙間に指を潜り込ませ、黒い人影の指先が背骨を撫でる。
血は出ない。組織も裂けない。
ただ、まさぐられる不快な感覚。
"ここにあるの?"
その時、パシッッと乾いた音がした。
いつの間にか部屋に入ってきていた武が、竜骨を掴んでる黒い人影の腕を叩いたのだ。
「な…」
竜骨を掴んでいた黒い影の腕がボロリと崩れる。
「竜骨サンっ…」
竜骨の手に、武が榊の枝を手渡す。
「お願いします!!」
黒い人影の腕から逃れ、榊の枝を受け取った竜骨
はフローリングに着地し、榊の枝を振り上げた。
「クシイナダの比売にかしこみかしこみまをす!」
カン!と竜骨は振り下ろした榊の枝をフローリングに打ち付けた。




