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第四話 見えるもの

「山とか川にはたまにでかいのがいるよな。」


へえ、と武は感嘆の声を上げる。


(それはちょっと見てみたい…)


妄想が走り、橋の上から優美な竜の姿を遠巻きにみる姿を思い描く。


「でけえ毛虫みたいなの見たぜ。小学生くらいでさ。人間の指みたいな指がムカデみたいに生えてて、腹の方はエグかったな。」


(やっぱ見なくて良いや…。)


武は意気消沈する。


「…竜骨さんの霊感は、生まれつきなんですか?」


「さぁ?そうなんじゃねえの。」


どうでも良さそうに欠伸混じりに言いながら、竜骨は目を擦る。


「眠いんですか?」


「いつもだよ。執筆と学校のレポートであんま寝てねえの。」


隈の浮いた目元を揉みながら竜骨は言う。


「良かったらシート倒して、移動の間寝てて良いですよ。着いたら起こします。」


「マジで?助かるわ。」


竜骨はドアとシートの隙間をごそごそ探ると、シートを倒して目を閉じた。

1分後にはすぅすぅと寝息が聞こえてくる。


(疲れてるんだなぁ…。そりゃそうか。引っ越し準備もあるだろうし…)


相変わらず眉間にシワを寄せてる寝顔を一瞬見やり、よく知りもしない異性の寝顔を見るのはいやらしい気がして目線を反らした。


(…結局、鑑別って言いながら成仏もさせてくれたな…。)


成り行きだったのかもしれないが、幽霊が最後に安らかな顔をしたのを武も見ている。

結果的にあの幽霊は、救われたのだろう。


(よくわかんない人だな…。)


乱暴な言葉遣いと態度だが、色々言いながらも仕事はちゃんとしてくれる。

もっとも、突貫アルバイトとは言え賃金が発生する以上、きちんと仕事をしてもらわねばならないが。簡単に匙を投げたりしない辺り、根は真面目なのかもしれない。


ーベチャンッッ


けたたましい粘着音の後、ドゴォン!とボンネットに衝撃が走り、車体が揺らいだ。武は思わず車道脇に幅を寄せ、急停車する。


パァーーーーーッ!


車間を取っていたお陰で玉突きせずに済んだ後続車が、避難を体現するように長いクラクションを鳴らし、追い越して行った。


(………………)


思考が固まる。

息の仕方を忘れてしまったように、耳の奥で遠くから鼓動がガンガン響いてくる。



ウソダロ、ダッテ…



人が、落ちてきた。



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