第四話 見えるもの
竜骨を助手席に乗せ、次の物件へ向かう車中で、武は口を開いた。
「それにしても…」
ハンドルを握りながら武は呟く。
「俺、幽霊の声全く聞こえませんでした。」
はっきりと姿は見えたのに、幽霊の声や訴えたい事は何一つ解らなかった。
「契約者の方も、幽霊が何言ってるか聞こえなかったんですかね?」
「どうかな。単純に日本語が解んなかっただけな気もするけど。日本語の解る親戚に相談してりゃあヒントになったかも知れねえな。」
竜骨はククッと喉を鳴らした。
「幽霊が出て来て一生懸命何か言ってきたけど、外国人の幽霊だったから何言ってるのか解んなかった。って、幽霊版のスベらない話だな。」
楽しそうなその口調で、先程の喉を鳴らす音が笑ったのだとようやく武は解った。
「面白くないですよ…。」
武の言葉に、わずかに竜骨はムッとしたようだ。
「ウケるだろうが。並木サンてジョーク通じねえのな。」
「竜骨さんの笑いのツボが特殊なのでは?」
先程よりスムーズな会話のやり取りにほっとして、武は質問してみた。
「それで笑ってたんですか?」
「あ?」
「ほら、マリアさんが幽霊見えないって解ったあと。」
「ああ…。あれは…」
思い出した様子で、竜骨はにまりと口の端を歪める。
「強い神様がいるって思ったからだよ。」
「強い神様、ですか。」
「そ。何か良いだろ、強い神様って。ドキドキしねえ?こんな強いヤツがいるんだって。」
武はよく解らず、答えに窮した。
「…竜骨さんみたいに霊感がある人には、神様って常に見えてるんですか?お寺とか、神社とか。」
「寺は、見たことねえな。神社にはいるよ。でも大概霞みてえな存在感の陰キャが多いな。幽霊の方が輪郭ハッキリしてんよ。」
(神様に陰キャって……)




