第三話 異文化
箪笥の引き出しがつかえてるのか、竜骨は一番下の引き出しをガタガタやりながら、何事か唱えてる。
すーっ…
箪笥の引き出しが、つかえていたのが嘘のように滑らかな音を立てる。一番下の段は空だった。僅かに埃っぽさが漂う。竜骨は引き出しを出し切り、ひっくり返した。
「おい!」
引き出しの裏に貼られた何かを引っぺがし、玄関口に向けて掲げる。
「あったぞ!」
「…写真?」
竜骨が掲げた物を見て、武とマリアはポカンとする。結婚式の写真だろうか。遠目に袴姿の男と角隠しの女が写ってる。
「あ、この人…っ」
武は更に目を見張る。写真より窶れているが、日本兵その人だ。
竜骨は写真を持って玄関へ戻り、日本兵に突き付けた。
「あんたのだろ。持ってけ。」
"ありがとうございます…"
日本兵は涙をボロボロ流して消えて行った。
他の幽霊も吊られるように掻き消えていく。
昼間に流星でも見るような、圧巻する光景だった。
「…何だったんですか?」
武は竜骨の背中に問う。
「ここの住人はそもそも霊感があったんだろうな。加えて敬虔な信者だったモンだから信仰してる神様の加護で、この家が結界になってたんだ。あの幽霊、戦死してから最近ようやく成仏する気になったんだよ。ー子孫が費えたから。いざ成仏しようとしたら、自分家で使ってた箪笥を見付けたんだ。そこに奥さんとの写真があったから、成仏できなくなってたんだ。」




