第三話 異文化
「行った事ないから解んねえけど、戦争から帰ってきた人間に近いんじゃねえ?」
「へ?」
「戦争って殺されるか殺すかだろ。自分が死んでもおかしくない所にいて、自分も相手を殺せる立場で。そんな状態で、おんなじ言葉や文化を持つ"そんな事"を知らない人間の中に入っても、感覚がずれて、周りと一緒にはならない。だって、自分はそれがあるって、起こり得るって解ってるんだから。たぶん、そんなんじゃねえの。」
他人事のような口調だが、竜骨は饒舌だった。
武は横目でチラリと竜骨を見る。
視界の端に写る視線は、また前方を睨み据えている。不機嫌な横顔だ。
「周りの情報が制限されてるって点で言えば、私だけ当たり前に解っている事を、知らなくて平気でいられる周りの方が外人だよ。」
それからは、また竜骨は黙ってしまった。
無言のまま駐車場に車を停める。
一階の店舗郡用の駐車スペースとは別に、住居用の駐車スペースは建物の裏手にある。
待ち合わせまでにはあと10分ほどある。
「ちょっと待ちましょう。姪っ子さんが来たら、一緒に行きます。」
エンジンを切り、武は竜骨へ声を掛けた。
竜骨は返事をせず、じっと天井を見上げてたかと思うと、おもむろに車から降りて駐車場を横切った。
駐車場のすぐ裏手は墓地である。
「竜骨さん?」
竜骨のあとに続いた武は、竜骨に声を掛ける。
「…住人は、何か困ってるのか?」
「え?はい…。姪っ子さんから代理で電話があったのですが、帰ると幽霊がいることがある、と。」
「幽霊は部屋の中に出るって?」
何やら口調が強い。
「いえ、そこまでは…」




