第三話 異文化
「想像できねえ…」
「私もです。」
自分の周囲が自分と違う言葉を話してて、その中で生きて行く。
圧倒的に言語の情報を制限された中で、買い物ひとつできる気がしない。
何より、孤独感や孤立感に耐えられる気がしない。
「…でも、竜骨さんも近い物があるんじゃないですか?」
「…」
「幽霊なんて、万人が見えないじゃないですか。だから、共感を得にくいって言うか…。」
一般的に見て、幽霊が見えない人間の方が多い。シックスセンスなんて言われるように、霊感は第六感的感覚だ。
竜骨と初めて会ったマンションの内覧の時ように、あんな風に幽霊が簡単に見えてしまったら、寿命が縮んでしまう。
そんな光景を日常的に見ている人の心情が、それで平静を保っていられる感覚が、武には理解しがたかった。
「私は外人じゃねえよ。」
「そう言う意味じゃ…」
不機嫌でもなく、憮然と竜骨が応えた。
また無言だろうと思っていた武は、思いがけず返ってきた反応に自分から話題を振っておいて何と言って良いか解らず、中途半羽に言い掛ける。
竜骨は、年は武と大して変わらないが、佇まいや言葉遣いは礼儀を欠くと言うより、むしろ反発してるいわゆる不良のような印象だ。
その口調も去ることながら、相手の意思を汲もうとする様子が見えない。と言うより、他人の反応を気にしない、と言うべきだろう。
いったい、どうしてそんなに他人に無頓着でいられるのか。
年を重ね、社会に出ると常々思う。
自分の言動は他人にどう思われるのか。
他人にどう評価されるか。
心証は悪くないか。
社会的に、自分の与えられた役割を逸脱していないか。
そんな他人の反応に気を配るくらいなら、空気を乱さぬように労力を注いで、与えられた役割に準じている方が楽なのだ。
ある程度、他人と折り合いを付けていく方が楽。
それは自分を圧し殺すとか大それた事ではなく、大人になっていくうちに身に付く単純な処世術だ。
円滑に円満にしておく方が誰も不快な想いをしない。
なのに、竜骨は度が過ぎるほどに浮世離れしている。




