1話 渚朝「趣味という名の最大の武器を」
日常が始まるっ——!!!
20XX年、宇宙戦争が始まった。蜘蛛のような宇宙人、蛸のような宇宙人、鼠のような宇宙人、そして人のような宇宙人、さまざまな種族により戦争が始まる。光る銃や光る剣ばかりを握っていた彼らだったが、そんな中、敵軍と恋に落ちた男がいた。ロッコイと言う男は、タチカワという女性に恋をした。純粋な地球人の女性、そして、宇宙の荒くれの奴隷として働いていた男ロッコイ、二人は恋に落ち、やがては終戦の大きなカギとなって行く。愛が世界を包み、幸せへと物語は進んだ。
そんな物語がある。数十年前に流行した映画だ。タイトルは『宇宙戦争:超新星』。
「……感動した。なによ、その男気……かっこいいじゃん」
ポロポロと涙を流すのは、坂原華音という女。黒い清楚な髪は少しウェーブがかっており、その細い体は少し力を入れれば折れそうなほどである。そんな彼女は、暗い部屋でぬいぐるみを抱きしめながら映画のエンドロールを見ていたのだが、しかしどうにも感動してしまったようだ。
「うう……。すごいよう、砂漠での告白、幼馴染との死別、そして世界の選択を真っ向から否定したのも……王道だ、王道過ぎる……。だが、そこがいいっ! 世界を敵に回してもオレの女を守るところ、くうー! 憧れるっー!」
「華音!」
ビクリと驚き総毛立たせる華音。
ドンッと壁を叩く音が響き、勢いよく部屋のライトがつく。現れたのは坂原華音の姉であった。
「お、お姉ちゃん……」
「リビングで……夜に……大声……出すなー!」
「ひいー!」
刹那、怒号とも呼べる0XX年、宇宙戦争が始まった。蜘蛛のような宇宙人、蛸のような宇宙人、鼠のような宇宙人、そして人のような宇宙人、さまざまな種族により戦争が始まる。光る銃や光る剣ばかりを握っていた彼らだったが、そんな中、敵軍と恋に落ちた男がいた。ロッコイと言う男は、タチカワという女性に恋をした。純粋な地球人の女性、そして、宇宙の荒くれの奴隷として働いていた男ロッコイ、二人は恋に落ち、やがては終戦の大きなカギとなって行く。愛が世界を包み、幸せへと物語は進んだ。
そんな物語がある。数十年前に流行した映画だ。タイトルは『宇宙戦争:超新星』。
「……感動した。なによ、その男気……かっこいいじゃん」
ポロポロと涙を流すのは、坂原華音という女。黒い清楚な髪は少しウェーブがかっており、その細い体は少し力を入れれば折れそうなほどである。そんな彼女は、暗い部屋でぬいぐるみを抱きしめながら映画のエンドロールを見ていたのだが、しかしどうにも感動してしまったようだ。
「うう……。すごいよう、砂漠での告白、幼馴染との死別、そして世界の選択を真っ向から否定したのも……王道だ、王道過ぎる……。だが、そこがいいっ! 世界を敵に回してもオレの女を守るところ、くうー! 憧れるっー!」
「華音!」
ビクリと驚き総毛立たせる華音。
ドンッと壁を叩く音が響き、勢いよく部屋のライトがつく。現れたのは坂原華音の姉であった。
「お、お姉ちゃん……」
「リビングで……夜に……大声……出すなー!」
「ひいー!」
刹那、怒号とも呼べる声が響いた。その声の主は、坂原華音の母である。
「二人とも、うるさくて寝れないじゃないのー!」
「ひえっ、すみません!」
坂原姉は反論する。
「お母さんが一番うるさいよ!?」
「なんじゃと!」
ぼこぼこと喧嘩を始める母娘。それを遠くから見つめる坂原父と坂原妹。二人はまたかと言わんばかりに、苦笑いを浮かべた。
ふと、彼女はこんなことを呟く。
「誰かと語り合いたいな……」
数時間前、『宇宙戦争:超新星』という名のDVDを持った赤井なじみが一草渚朝の家を訪れていた。
「オレ……昨日坂原さんを探し回って疲れたんだけど」
そんな勝手なことを言う幼馴染に、赤井なじみは自信満々にこう言い返す。
「最近、私映画にハマったの。で、私の家ブルーレイの再生機ないからあんたの貸してよ」
「え、やだよ」
「それじゃ、一緒に見ようね」
家に上がり込む赤井なじみ。そんな彼女に、一草渚朝はこう言った。
「そんなー」
その声は、この閑静な住宅に響く。今日の日付は四月十二日。天気は晴れ。日記をつけようにも、初めて高校の授業を受けた以外に書くことがないような一日であったが、放課後にまさかのイベントが舞い降りてきた。
そんなイベントも終わり、次の日がやって来る。
「あっ坂原さん! 好きです、付き合ってください!」
「うん、無理」
「がーん」
朝、校門で彼女に出会ったので告白した。結果撃墜。だが、それもなかなか乙である。
そんな、ただの日常が始まります。
□■□■□
「……以上で朝のホームルームを終わる。そうだ、部活動の申請は私に言いに来いよ。届け出をやる。それと、小鉄甲太楼!」
「はいっ!?」
オレの中学からの友達、高校デビューを果たした小鉄君は突然指名され焦ったように返事した。鬼の担任はこう言う。
「ネクタイ、歪んでいるぞ」
「……了解です」
そう言い残して、担任は教室を出た。十分間の休憩が始まる。
オレは小鉄のもとに向かった。
「おこられてやんの」
「怒られてない。あれはオレのことが好きだから言ってるんだろう」
「自意識過剰だなー」
遠くから声が聞こえた。これは馴染みある声だ。
「うん、昨日見たよ、『宇宙戦争:超新星』! 面白かった、貸してくれてありがとね」
なじみの新しい友達はその箱を受け取り、こう言った。
「全然いいよ。それよりも、面白いなら私も見て見ようかなー」
「見てないの?」
「うん、これお兄ちゃんのだから」
「絶対おすすめ!」
そんな会話。昨日の記憶が蘇る中、オレは彼女を見逃さなかった。
『宇宙戦争:超新星』という単語に反応した坂原さんを。
これはもしやキッカケになるのではないだろうか。そんなことを考えていると、小鉄が連絡先を自慢してきた。
「昨日の放課後に三人から貰えたぜー」
そういえば、坂原さんの連絡先知らないな。そう思いながら、オレはこう言う。
「何人からブロックされたの?」
「二人」
「プラス一だな」
「だな」
オレ達は男同士の握手をした。
□■□■□
さてさて、坂原さんに話しかけようとしたが、気づけば教室から消えていたので今日の昼休みは一人で過ごすことにした。小鉄は言うまでもなく、失敗率の高いナンパに挑戦している。火を見るよりも明らかだが、いつか火傷するだろう。友達として、消火器は用意しておく。
「一草くん」
「あ、江永」
江永亭徒、三日前に出会い、昨日、一昨日、一昨昨日と一緒に食事をしたことでなんとなく仲良くなっている。今日で四日目。口では言わないが、今日も一緒にご飯を食べるのだろう。約束などしなくともいいのだ。そんな、なんとも奇しき関係だ。
「一草くんは何食べる?」
「今日はうどんの気分」
「いいね、うどん。センスがいい」
「だろー」
「じゃあ僕もうどんにするよ」
「毎回オレと合わせるよな」
「嫌だった?」
「いや、別に」
オレ達は買ったうどんが乗ったオボンを持って空いている席に面と向かって座った。
「いただきます!」
「いただきます」
うどんを啜る音がただ流れた。
「ごちです」
「ごちそうさまでした」
オレ達はそう言って空になったお皿を返した。帰り道でこんな会話をする。
「一草くんは部活とか入るの?」
「あー、考えてなかった。江永は入るの?」
「いや、入らないよ。逆に図書委員に入るからね」
「図書委員? ああ、あの図書室の受付」
「そう、受付、整理、本を買ったりなどいろいろ仕事をするんだ」
「へー、今度遊びに行くよ」
「ほんと!? 一草くんに進めたい本が沢山あるから用意しておくよ!」
「おう!」
そんな会話をしているともう教室。オレ達は別れた。
すぐさま坂原さんを見つけてオレは叫ぶ。
「坂原さん大好きー!」
「もう!」
赤井なじみと一緒にいた坂原さんはプンスカ怒ってそう言った。おや、何故一緒にいるのだろう。
そんなことを考えていたオレを見た後、彼女は窓ガラス越しに移る江永に興味を移していた。そしてこう呟く。
「なんであいつが……」
オレは口を開いた。同時に赤井なじみがこう言う。
「小鉄が呼んでたわよ」
「え、あ、はい」
オレは大人しく小鉄のもとに向かった。二人はどんな会話をしているのだろうか。少し気になる。
「やっほ、小鉄」
「渚朝ー」
椅子に座りながら横に立ったオレに抱きついてくる彼は、泣きながらこう言った。
「ヤバいよー、先輩たちに悪い噂されてたー」
「え、ああ」
どうやら火傷したようだ。オレは消火器を振り回すように辛辣を振り回した。
「そんなもんさ」
「何の解決にもならなかった!?」
そんな昼休みを終え、そのまま流れで学校も終わる。放課後がやって来た。
特に何もないまま終わる。学校が始まってはや四日。もう生活のルーティーンができてしまい、マンネリ化の波が襲ってきた。
これが続くと人生が空虚なものになってしまう。やはり人生において必要なのは幸せや悲しみといった刺激なのだ。
刺激と言えば青い石。
オレは家のベッドの上で寝そべりながら、それを光に透かして見た。
「始鉱石。青く輝く力」
あの時のように、強く握ってみても何も起きなかった。まだ何も分からない。
ただ面白いのが……。
オレは石を勉強机の中に入れ一階にあるリビングへ向かう。そしてリビングで親に小言を言われながら牛乳を飲んだ。おもむろにズボンのポケットに手を突っ込んでみる。
そこには青い石があった。
確かに机の中に入れた。だが気づけばオレの手の中に。
こういう石なのだ。オレについてくる石。
ワープでもしているのだろうか。
このパソコンのエンターキーほどの大きさの石はオレを求めてくれている。
そっとポケットに入れた手を出した。いやはや、尖っている部分が皮膚に当たって痛い。
部屋に戻って過ごしていると、ふと赤井なじみの忘れ物に気づいた。
これは赤井なじみが使っていたペン。明日返せばいいかと思いながらも、なんとなく今日坂原さんと何を話していたのか気になり彼女の家に向かうことに。
オレはそのペンを持って家を出た。玄関を通り、小さな門を開ける。道路に出た。そこから直角に右に曲がり歩く。すぐに家の入口が現れるのでそこにあるインターフォンを鳴らした。つまり、お隣さんである。
「はい」
お淑やかな声が聞こえる。これは赤井なじみの母の声だ。
「渚朝です、娘さんの忘れ物を届けに来ました」
「あらあら、分かったわ今すぐ開けるね」
インターフォンからの声は止まり、中から赤井なじみの母が現れる。ご飯を作っている途中だったのかエプロンをしていた。実年齢よりかなり若く見えるが、彼女はオレの母と同い年だ。
「ありがとね、渚朝くん。あ、髪の毛はねてるよ」
優しく髪を触られた。撫でられるように髪の癖を直される。先ほど変な体制で動画を見ていたせいだな。
「よし、かっこよくなった」
「ありがとうございます」
「いえいえ。あ、なじみー、渚朝君来てるわよー」
玄関に入り、赤井なじみの母はそう言う。二階から「は!?」という声が聞こえた。
「上がって、上がって」
そう言われたので、オレはなじみがいる二階へ向かい、彼女の部屋の前まで来た。そしてノックをして、こう言う。
「入っていい?」
「ダメ!」
オレは馬鹿にするような声でこう言った。
「なんでー?」
「今、下着姿!」
まさしく怒号。イヤホンでも耳栓でも必要だろう、それほどに耳に悪い声だった。
しばらく待っていると、汗だくの赤井なじみがドアを開けて来た。服はたぶん中学の頃に着ていたジャージである。
何かを気にしているのか、彼女は少しドアを閉めた。
「何の用!?」
「ペン、返しに来た」
「ん!」
部屋のドアを完璧には開けず、顔だけのぞき込んでくるような感じ。そんな恰好の中、彼女は手をこちらに伸ばしてきた。オレは大人しくそこにペンを置く。
「以上ね」
「あ、はい」
ほのかに風を感じる。窓を開けているのだろうか。いやそんなことはどうでもいい。
勢いよくドアを閉めようとしたその手を上から覆いかぶさるようにして掴む。そしてオレはこう言った。
「まだ話したいことあるんだが!?」
「はあ!? もういいでしょうが!」
「いやいやいやいや」
「あらあらあらあら」
後ろから声が聞こえた。なにやら、熱を感じる。そうだこういう人が怒ったら……怖いんだ。
オレは振り返る。そこにいたのは赤井なじみの母だった。
「なじみ、入れてあげなさい」
「……うう、了解」
てことで、何やら複雑ですが中に入れました。
オレは部屋に入る。そしてこう言った。
「散らかってるね」
「うっさい!」
「凄い汗かいてる」
「もう、筋トレ中だったの!」
「あははー」
いつしかオレは筋肉量でなじみに負け、喧嘩では絶対勝てなくなるんだろうな。
そんななじみさんは呆れたようにこう訊いた。
「で、何か用?」
オレは床に座って訊いた。
「今日さ、坂原さんと話してたよね」
赤井なじみはオレの横に座り、冷めた声でこう言った。
「また坂原さんの話?」
「うん、オレ好きなんだ!」
「あははー、純粋な目。……まあ、趣味の話よ」
「趣味?」
「そう、趣味」
オレはウズウズしてしまい、駆け引きなど忘れ勢いよくこう訊いた。
「坂原さんの趣味って何なの!?」
赤井なじみは不貞腐れたようにこう言う。
「教えない」
「なんで」
「なんでも」
「そんなー」
オレは肩を落とす。そんなオレに向けて、彼女はか細い声で呟くようにこう訊いてきた。
「私の趣味は知ってるの?」
オレは呆れたようになじみのベッドに背中を預け、天井を見つめて数えてみた。
「幼稚園の頃はプチキュアにハマってて、小学の頃は占いとか文房具とかにハマってた、中学の頃は、部活が違ってて教室も違ってたからあんまり関わりはなかったけど、音楽とかドラマとかの鑑賞にハマってたのは知ってる。今は……映画だっけ?」
そう言い終えて、なじみの方を見る。彼女はクッションを顔に当てて表情を隠していた。
「……間違えた?」
オレがそう訊くと、なじみはこう答える。
「全問正解。まあ、不足してるところはあるけど」
「あちゃー、幼馴染ポイント下がっちゃった」
「なにそれ」
彼女は笑っていた。次第に笑顔が見えるようになり、完全にクッションを下に置いた後、彼女は少し色っぽい顔で教えてくれた。
「映画。彼女映画にハマってるみたいよ」
「……!」
これは最大の武器となる。彼女の趣味を知ったオレは早く映画について調べたくなり、「家に帰る」となじみに伝えた。
「あ、それと」
赤井なじみの声など聴かず、一草渚朝はこの部屋を去ってしまう。そんな一草渚朝に向かって、一人になった赤井なじみは噛みしめるように小さな声でこう言い放った。
「ほんと、教えなきゃよかった」
そして自分の胸に手を当て、彼女は体を強張らせてこう言う。
「でも、渚朝の初恋だから」
時は進む。加速した時間は思考を外れ、気づけば放課後というある種のタイムスリップを起こしていた。四月十四日、金曜日、放課後。昨日赤井なじみの家に赴いた一草渚朝はどうにかして映画の話を坂原華音としようと考えていたが、何も思い浮かばず、ただ思考を巡らせているだけだった。何度シュミレーションしても失敗する。しかしこれは机上の空論。彼の行動力の前には無力なのである。
「坂原さん!」
廊下でばったり会い、オレは彼女に声をかける。だがそこには赤井なじみも一緒にいた。二人は飲み物を持っている。
「……なじみ? それに坂原さん、何してるの?」
オレがそう訊くと、赤井なじみと坂原さんは目で会話し始めた。頷く赤井なじみ、仕方がないなと言わんばかりに口角を上げる坂原さん。
ついには、なじみが口を開いた。
約三十分前。
「失礼します、薬弥先生に用があって来ました。……いますか?」
赤井なじみは職員室のドアを叩く。その後、穏やかでもあり誇らしくもある声が聞こえた。
「いるぞ、何か用か?」
男子たちが鬼の担任教師などと言ってバカにしているが、この一週間を過ごし、私はこの先生に好感を抱いた。いい先生だと言えるほど優しくそして厳しい。私は幸運な生徒だ。
そんな薬弥先生に呼ばれ、職員室の中に足を踏み入れる。そして先生の前に立ってこう言った。
「部活について話したくて……」
「おお、いいな。入るのか?」
「いえ……」
私は覚悟を決めてこう伝えた。
「作りたいんです」
「ほう、なんという部活を?」
「……『映画鑑賞研究部』です」
ピクリと、先生が反応したようにも見えた。
「ほう映研か。いいじゃないか、話は通しておく。そうだな、月曜日には結果を伝えるよ」
「ありがとうございます」
そして時は戻る。赤井なじみは回想を聞き終えたオレにこう言ってきた。
「ってことなの。私が言いに行くからって理由で坂原さんにジュース奢ってもらったんだよー」
自慢げに葡萄の炭酸ジュースを見せるなじみ。オレは坂原さんを見た。
「なるほど。坂原さんも……」
そこまで言って、オレはちょっと考えた。現実の時間よりも早く思考する。その結果、オレは一つの答えを得た。
「なじみ」
「……なに?」
涼しい風が吹いた。放課後、野球部の声が聞こえる、吹奏楽部の楽器の音も聞こえた。そんな中で、オレは彼女に伝える。
「オレも入りたい、その部活」
ずっと一緒にいた赤井なじみ。気を許す仲だからこそ、一緒に何かをやってみたい。オレは彼女がいる部活に入りたかったのだ。なじみは呆れたようにため息を吐いて、その後微笑みながらこう言った。
「坂原さんがいるからでしょ。ラブだねー、ラブ」
「ちょっと!」
坂原さんからのツッコミが入る。そんななじみはこう続けた。
「でもありがとう、楽しみ」
「おう」
この放課後、オレは大きな一手を打った。どう考えても功を奏するだろう。この選択は、オレの学校生活を大きく変える。
そう、これこそが刺激だ。
ふと思い、坂原さんに訊く。
「坂原さんは入るの?」
「うん」
なじみは茶化すようにこう言った。
「嫌がらないんだねー」
坂原さんは口角を上げこう言う。
「一緒に活動すれば、この前のお礼もしやすいかなって」
「そゆことか」
指をパチンと鳴らす赤井なじみさん。オレはこの空気が好みだ。
そんな中、ゴホンと咳を鳴らし赤井なじみはこう言った。
「しかし問題があります」
「ほえ?」
彼女は、神妙な面持ちでこう言った。これは、ある種のカルマであり、いわばテンプレともいえるような展開であった。
「部活始めるのに、あと三人は必要だそうです」
部活って学校生活においてでかい影響を及ぼすよね。