序章 中坊に拳を
休止中のぺこちゃんと乙一さんのツイッターやりとりを見て、
「VTUBER関連の推理もの書いてくれないかな乙一さん」
↓
「乙一さんが書かないなら俺が書けばいい」
という簡単思考によって作られた作品。
今後も更新にご期待ください。できるだけ早めに完結させます。
チョークが黒板を掠る音、
殴り書きのノート。
机に伏せている隣に…
四角い空。
ここは、僕が中学生の頃の教室だろうか。
『カチカチカ、パタッ!』
チョークが折れた音がした。
教壇に視線を向けると、チョークを拾ってる島崎先生の姿が見えた。
島崎先生がいるってことは、今は多分中学1年生の二学期の頃だろう。
「はい、この様に、
表や図画は、論理的な思考を身に付けるために、必要不可欠な物ですと、私は思います。」
懐かしい景色と、懐かしい匂い。
「君たちはもしかしたら、既に数学の授業で習ったかもしれない。
図を描くと、本来難しいと思う問題は簡単に解けるようになる。」
記憶の中の島崎先生は、いつも水の滴るような美人でした。
「ですが、それは数学だけではない。
表と図、それらをうまく使いこなすことで、文脈をより精確に理解する、もしくはその文章の本質を発掘することができちゃいます。」
僕は島崎先生の授業で、決して居眠りなどしたことはない。
「えーーでは、教科書57ページ、下のこの文章。主人公の行動に対して、誰か表で整理してくれませんかな?」
「はいは~い」
そこで当たり前のように、手を挙げる僕。
それも教育実習に来たばかりの島崎先生に、僕を覚えてもらう手段の一つだった。
「あっ…いや、えーっと…」
「はいは~~~~い」
「……あぁ…
では、上管くん…お願いします。」
僕はクラスメイトたちの視線を浴びながら立ち上がり、
「ちゅーことは、先生。この表に先生の服を一枚一枚貼ったら、最後に先生の裸の姿を拝めることがでkッ!!」
いつの間に僕の目の前に来た先生が、僕の脳天に向かって拳骨を振り下ろす。
『トン!』という鈍い音と共に、目の前が白くなった。
暫くの思考不能。
ついに目を開くと、
そこが逆さまの、僕の部屋だった。
いや、逆さまなのは僕だった。ベッドから落ちたのだ。
「このエロガキッ!!!」
目が覚める直前に聞けた島崎先生からの感想一言、
それを脳内で噛みしめながら、僕は自分に文句を言う。
「今更思い出させんなよ…気まずいだろうが……」
それはそう。そんなことを今の時代でやったら、一発でアウトだから。
僕が中学生1年の頃、島崎先生が教育実習に来た。
3ヶ月の短い期間だったけど、美人な彼女は来校当初、一瞬で話題になった。
もううちの中学のマドンナ、いや、マリリン・モンローというべきか。
今でも時々思い出す、あのスタイルと美脚…とにかくあの時の中学生にとって、刺激が強すぎた。
僕のクラスでは国語を教えていたが、御覧の通りいつも僕みたいな奴がちょっかい出すので、ひょっとしたら本人にとってはあまりいい思い出じゃなかったかもしれない。
「…………」
夢の中に脳天で受けたあの一撃は、多分ベッドから落ちた時頭を打ったことの現れ。
実際に痛い。
だがおかげで、眠気はなくなった。
時計を見ると、6時53分。久々に休み取れたのに、何でアラームより先に起きたのだ、我が身体よ!
今日はこれから僕の当番、また残業地獄が垣間見える。
おっと、申し遅れました。
僕の名は上管看人、現在29歳。
警視庁捜査一課で働かせてもらっている、階級は警部補。
警視庁捜査第一課と言えば知ってる人も少なくはないだろうか、刑事課の中でも特に凶悪犯の事件を対処する部署でして、よくテレビドラマに出てくる。
が、見栄えがよくても、警察は公務員の中でも特殊な部門だ。事件が起きればいつでも対応できるために夜勤や24時間当番はよくあること、解決後も報告書類作成で残業は日常茶飯事。要するに苦労人です。だから今日みたいに自然に起きることはあまりない。それに加え夢の中で美人さんをからかえるなんて、僕にとって最高の目覚めと言えるかもしれません。
とまぁ、それが今の僕です。
朝早く起きても独身にとっちゃやることないので、携帯でラジオ聞きながら、署へ出発、GO!
「おはようございます。」
「おはよう、おはよう~~~」
仕事場に来た僕は、同僚たちとすれ違いながら自分の机に向かう。
「…あ、おはようございまぁす…ふー」
向かい側で机に突っ伏して眠そうな顔してるのは、僕より一つ下の安野正巡査部長。
「夜勤明けか、辛いね~タダシ~~」
「あぁぁ、死ぬ…ねむ。」
「まだこの前の強盗事件の書類書いてんのか?代ってやるから、あんたは休んでな。」
「あぁ、お願い、しまsぅぅ……」
……どうやら相当疲れてるみたいだ、即寝落ちした。いやはや仕方ない、警察とはそういう生き物だ。
僕は安野正巡査部長の生活リズムを案じながら、彼の机上に置いてある書類を手に取り、チェックし始める。
それが事件が起きていない時の、我が署の日常。
特に何もなければ、取るに足らない一般警察の一日はそうやって終わるはずだが…
ここは捜査一課、特に何も起きないわけがない。
午後18時47分、タダシが書類を提出して帰ろうとした時に、通報が来た。
死者が一人、死因はまだ不明。
僕は帰りそびれたタダシを見てゲラゲラと笑って、出かける準備をしてる時に、もう一報が入って来た。
死者は二人になって、後者は他殺かと推定。
「いやはや、穏やかじゃないねぇ~世も末だ。」
僕はそう呟きながら、同僚を連れて現場へ向かう。
本連載の「カンフーの殺り手(仮)」また休載してて申し訳ございません……
最近ようやく生活が安定しそうになって、先に早めに終われそうな作品を書こうと思ってまして…
多分待ってる人おらんと思うけど、ごめんって。
作者ツイッター:
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