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第93話 グラム一家

「それにしてもメイシスの覚悟は相当なものだったわね・・・〈ディスインテグレート〉はレベル9の古代魔法よ。

その上、編み出されて間もない魔法は世界に馴染まず莫大な魔力を使う事になるわ。そして足りない分は・・・生命力で補う事になる。

だからメイシスは魔力消費を抑えて剣で立ち向かったのね。・・・最初からイルバスと一緒に消える為に・・・」


アンリルがフォークでソーセージをつつきながら想いに浸る。


「そうだね。古代魔法にはあらゆる呪縛を解く魔法もあるけどそれはレベル10の魔法なんだ。恐らくメイシスのレベルでは使えなかったんだと思う。

メイシスは人間界を護る為に〈ディスインテグレート〉を命と引き換えに使ったんだよ。

今この世界が平和なのはメイシスのお陰だよね。」


「でも・・今その平和を壊そうと〈暗黒神ルビラス〉が復活するのよね?・・・だけどね・・私はあまり危機感がないのよね・・・」


サリアがコップを傾けながら皆の顔を見回しミハエルで止まる。


「あー・・サリアもそうか!あの戦いは確かに凄かったけど・・なんか・・内心何とかなるように思えたんだよね・・」


ライナードはソーセージが刺さったフォークを揺らしながらミハエルを見る。


「うん。ここで言ってはいけないかも知れないけど・・メイシスとイルバスの強さが霞んで見えたの・・・」


カリンが上目遣いでミハエルを見る。


「そうなのよ!!私もそう思ったの!!多分それは・・いえ!確実に私達はもっと強い人と一緒にいるからよ!!・・・ねぇーーっ?」


サーシャがミハエルの顔を笑顔で覗き込む。


「えっ?!何?!」


皆の視線にたじろぐミハエルにアンリルが追い討ちを掛ける。


「ミハエル君も気付いているでしょう?当時のメイシスやイルバスよりミハエル君の方が遥かに強いのよ。あの場にミハエル君がいたならイルバスなんてデコピンで一撃だったわよ。〈暗黒神ルビラス〉だってもう神じゃないんでしょう?

ここにいる皆んなは地上に降りた馬鹿な神がミハエル君にぶっ飛ばされるイメージしか浮かばないのよ。・・・ねえ皆んな?」


「その通り!ここから更に鍛えたら神にでも勝てるかもね・・・」


サリアが肩をすくめて笑う。


「僕も同意見だよ。だけど油断はせずに僕達も強くならないとね!」


「私もそう思う。ミハエル君よろしくお願いします!」


ミハエルは照れながら頭を掻くと皆を見渡す。


「うん。確かに僕もそう思ったよ。だけど今度の相手は元神なんだ。絶対に油断は出来ないし、どんな手を使ってくるかも分からないからね。だから皆んなも強くなってもらうよ!〈暗黒神ルビラス〉に地上に転生した事を後悔させてやろう!」


皆が同時に頷く!


「面白くなって来たじゃない!!ルビラス復活がなんだか待ち遠しいわ!早速出発よ!!」



ミハエル達が宿屋を出て歩き出すと街の雰囲気に違和感を覚える。


(なんだろう・・街の中の悪意が・・・)



「あうっ!」

どさっ・・


近くでお婆さんが躓いて転んだ。


「あっ!お婆さん大じょ・・・」


サーシャが駆け寄ろうとすると、いち早く厳つい男がお婆さんの元へ駆け寄る。


「おい!!ばばぁ!!」


「ひぃ!!」


お婆さんは突然厳つい男に怒鳴られて縮こまるが男は手を差し伸べてお婆さんを立たせる。


「怪我は無いか?!気を付けろよこの野郎!!」


そしてキョトンと立ち尽くすお婆さんを後にして男は肩で風を切りながらその場から去って行った。


サーシャは男の背中を無意識に見送っていた。


「ねえ・・ミハエル君・・・どうなってるのかな・・凄く違和感を感じるんだけど・・」


「う、うん。実はここに来た時より悪意の数が格段に減っているんだよ・・・多分・・」


「あ・・あそこでも・・・」


ライナードが指を差す方を見ると、ごつい男が泣きながら歩いていた子供に詰め寄っていた。


「おい!ガキィ!!!どうしたぁ?!てめぇ迷子か?!」


「あ、あう・・えぐっ・・うあぁぁぁん!」


男の子は男の見た目と勢いに頷きながら泣き出してしまった。


「お、おい!!男が泣くんじゃねぇ!!テメェの親はどんなツラァしてんだぁ?!俺も探してやらぁ!!」


ごつい男が男の子をひょいと肩に乗せると大声を上げながら歩き出す。


「おい!!このガキの親ぁぁ!!さっさと出て来やがれぇぇ!!ガキを1人にするんじゃねぇぇ!!!!」


街の住人も厳つい男の見た目と言葉遣いと行動のギャップに困惑しながらその様子を望観していた。



アンリルが頭を掻きながら察する。


「あー・・・グラム一家だわね・・相当凝りたみたいね・・慣れない親切をしてるから違和感が全開なのよ・・・」


「あぁ、やっぱりそう言う事か・・まあ・・悪い事じゃ無いから良いけどね・・・」



ミハエル達が街の出口に近付くと正面に厳つい男達が横一列に並んでいた。


「あんた達!!何のつもり?!またぶっ飛ばされたいの?!」


アンリルが一歩前に出ると男達は背筋を伸ばしキレ良く45度に頭を下げる!


「ミハエル殿!!おはようございます!!」


「えぇっ?!何?!」


突然動いた男達にアンリルが構えるが意外な行動に呆気に取られる。


すると真ん中にいた背の高い男が前に出る。


「お初にお目に掛かる。俺はグラム。一家を取り仕切っている。この度の非礼を詫びに来た。この通りだ。」


グラムはビシッとキレ良く頭を下げた。


「あ、うん・・分かってくれたら良いよ・・じゃあ・・急いでいるから・・」


ミハエルは嫌な予感をよぎらせながらその場を立ち去ろうとする。


「待ってくれ!!」


グラム一家が一斉にミハエル達の前に跪く。


やっぱりか・・・


「ミハエル殿の噂はクラインド王国のロゼルドから聞いている。あいつは俺の旧友なんだ。

是非!このグラム一家も末席に加えて欲しいんだ!この通りだ!!」


ミハエルがチラリとアンリルを見るとアンリルは気怠そうに口を開く。


「まあ、良いんじゃない?努力はしてるみたいだし・・ただし次に来た時に変わってなかったら・・・覚悟する事ね。」


アンリルが仕方なく許可を出すとグラムの表情が緩む。


「おぉ!!勿論だ!俺達も拠点があるから声を掛けてくれれば手助けになると思うぜ!これが拠点の場所だ!」


グラムが懐から丸めた地図を取り出してアンリルに渡した。


「分かったわ。じゃあね。」


アンリルが先頭で歩き出すと男達が左右に並び綺麗な45度の礼を決める。


「「「お気を付けて!!!」」」


なんか照れ臭いな・・・


街の外に出て馬車に乗り込んでいるとサーシャが街の入り口付近にある露店で何かを買っている姿があった。


「サーシャ!早く!行くよ!」


「あー!!ごめん!今行くーー!!」


サーシャは買い物が終わると小走りで馬車に乗り込むと直ぐに馬車が出発した。


「サーシャ、何を買ってたの?」


「へへー!見たい?」


サーシャは鞄から大切そうにそれを取り出す。

それは綺麗に色付けされ堂々と剣を構える木彫りのミハエルであった・・・そして足元の丸い台座には『正義の暴力ミハエル』と刻まれていた。


ミハエルのこめかみがピクつく・・・


「な、何この人形は・・・こんな物を売り出してるのか・・・戻ってお仕置きしてあげようか・・・」


「良いじゃない!私は気に入ったわよ!」


サーシャは色んな角度から眺めてニヤけている。


「ふふっ!ミハエル君!!!これで名前と顔が知れ渡るわね!!」


アンリルがニヤけているとサーシャが鞄に手を入れる。


「アンリルさんのもあるのよ!・・はい!」


「えっ?!今なんて・・・」


アンリルが振り向くとサーシャの手にはやたらと悪い顔をして魔法を打ち出だそうとしている木彫りのアンリルが握られていた・・・

そして台座には『暴君アンリル』と刻まれていた。


「ぷぷっ・・・アンリルさんも知れ渡るね・・・」


ライナードとカリンも顔を逸らして肩を揺らしていた。


「くっ!・・あいつら・・お仕置きよ!!!今すぐ戻ってぇぇぇぇぇぇ!!!」


アンリルの怒声が空に響き渡るのであった・・・


皆様の評価、感想をお待ちしております。

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