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第81話 冥界神の加護

メイシス達と兵士達は魔物の軍勢を迎撃するべく決戦の地へ進行していた。


「この森を抜けたら奴等が見えて来る筈よ!」


「そうね!だけど森の中も油断は出来ないわよ!!・・〈ウィンデーネ〉!お願い!!」


サルビナが虚空に手をかざすと目の前に風が渦巻き少女のような風の精霊〈ウィンデーネ〉が透明な羽を羽ばたかせて優雅に顕現する。


「ウィンデーネ!お願い!森の中を見てきて欲しいの!」


(分かったわ!・・少し待ってね!)


サルビナの願いにウィンデーネは森の上空まで飛んで行くと両手を森にかざす。すると森全体が一瞬ざわつく。ウィンデーネが首を振りながら帰って来た。


(森の中は危険よ。約500体の魔物と強力な力を持った魔族が待ち受けているよ!)


「何ですって?!ありがとう!!助かったわ!!」


サルビナがウィンデーネに礼を言うとメイシスに振り返る!


「メイシス!罠よ!森の中に待ち伏せよ!魔族も居るわ!」


「何ですって?!予想より速いわね・・・先発隊ね・・・でも事前に分かって助かったわ!」


待ち伏せと聞いて兵士達も動揺して騒つく。


「このまま森に入れば奴らの思う壺だぞ・・」


「どうするんだ?!森の中で囲まれたらおしまいだぞ?!」



森の中か・・確かに待ち伏せには最適ね・・知らずに入っていたら・・囲まれて全滅もあったわ・・・でも迂回する時間は無いわ・・・それなら・・いっその事こと森ごと・・


メイシスが罪悪感を感じながら迷っているとサルビナがメイシスの肩を叩く。


「ねえ・・メイシス。1人で悩みすぎよ。こんなの何でも無いわよ!奴等は森に隠れているんでしょう?奴等が好手だと思って打った手は逆に悪手だって事を教えてあげるわ!」


「あっ・・・」


サルビナの言葉でメイシスは気付いた。そう、奴等は森の中にいるのである。精霊達が集う森に・・・メイシスは1人で考え込んでいた自分を恥じた。そして自分は1人じゃ無いんだと改めて思うのであった。


「馬鹿ね・・・私・・。・・うん!サルビナお願い!!」


「任しておいて!!〈ドライアード〉!〈ノーム〉!お願い!!奴等を殲滅して!!」


サルビナが声を上げると森全体が一斉に激しく騒めく!そして微かに魔物達の呻き声と叫び声にも似た鳴き声が響き渡るのだった。




「初めまして。私は〈冥界神の加護〉クルレラ。ようやく会えましたね。嬉しく思います。」


目の前に黒のローブを着た自分より少し背の高い黒髪の女性が口元を綻ばせながら佇んでいた。


カリンは目の前の女性と波長が合うのか特に驚きはしなかった。


「こちらこそ初めましてご先祖様。私はカリンと言います。私も会えて嬉しいです。」


気が付くといつの間にか目の前にモダンなアンティークのテーブルと椅子が置かれ、その上には白いティーセットが用意されていた。


「さあ、どうぞ。お茶でも飲みながらお話をしましょう。」


クルレラが優雅に手を差し伸べるとカリンは遠慮なく椅子に滑り込んだ。



「美味しい・・・」


カリンがお茶を一口啜る。


「そう。気に入ってもらえて良かったわ。今日はカリンさんに伝えなければならない事があるの。まず、私は貴方の先祖ではないの。」


「えっ?!」


カリンの目が点になる。

そしてクルレラは話を続ける。


「カリンさん。それはこれからお話しします。まず私達〈冥界神の加護〉を持つ者の宿命についてお話ししますわ。」


クルレラもお茶を一口啜るとカップを置いた。


「宿命・・ですか?」


「そうよ。これは約1200年前の闇と光の戦いから始まった事なの。

人間は死ぬと冥界に導かれて集まるの。そこで振り分けられて獄界で罰を受ける者。天界で生まれ変わる者。稀に転生。ごく稀に冥界に行く前に他の神に導かれる者もいるわ。

だけど基本的には冥界に導かれてくる者が殆どなの。

そこで〈暗黒神ルビラス〉が人間を大勢虐殺した事から冥界は大混乱に陥ったの。そして〈大冥界神ハーデス〉様は対処しきれなくなって皆を1番簡単な転生させる事にしたの。だけど転生させるには〈神の加護〉を付けなければならないのよ。だから自分の部下達の加護をつけさせたのよ。」


「あ、そ、そうなんだ・・・」


カリンは呆気に取られていた。今まで人が死んだらどうなるか疑問に思っていたのだ。それが今さらりと答えが出てしまったのだった。


クルレラは一気に話すとお茶を一口啜り軽く咳払いをすると話を続ける。


「でもその結果、獄界へ行くべき者にまで神の加護を与えて転生させてしまったの。ハーデス様は今後の地上の混乱に心を痛めて、これ以上ルビラスに殺戮をさせないように部下である私に加護を与えて地上に転移させたのよ。」


「えっ?!・・と言う事は・・・〈冥界神の加護〉って・・・まさか・・私は・・・」


「そう。〈冥界神の加護〉を持つ者は地上の過度な殺戮の監視と排除を宿命としているの。そして貴方は・・・」


クルレラは静かに立ち上がりカリンの前に跪いた。


「貴方は〈大冥界神ハーデス〉様の268女のカリス様です。数年後に復活する〈暗黒神ルビラス〉を排除する為に転生したのです。」


カリンは耳に入って来た言葉の意味を少しずつ咀嚼して行く・・・


「・・・ふぇ?!〈大冥界神ハーデス〉の・・娘・・?私が・・・?」


「そうです。間違いありません。」

クルレラが顔を上げて微笑む・・・


カリンは足先から急激に鳥肌が登ってくるのを感じて思わずティーカップを落としてしまう・・・


・・・パリーン


「え・・えぇっ?!うぇ?!えぇぇぇぇぇぇ!!!わ、私、私は一体どんな存在なのぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!!」


「・・って・・わっ!あっあっあーー!!!」


がたーん!!


カリンは衝撃の事実に仰け反った拍子に椅子ごと後ろに倒れるのであった・・・


皆様の評価、感想をお待ちしております。

よろしくお願いします。

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