第43話 フェンリル討伐 4
フェンリルは本能で感じていた。一番最初に倒さなければならない相手・・あの小さい身体から感じた緊張感・・本来なら・・・避けたい相手・・・でも行くしか無い・・・
フェンリルは全力で後ろ足に力を込めて覚悟を決めて飛び出すのだった。
ミハエルが動き出したフェンリルを見据える。
十中八九狙いは僕だね・・・いいよ!予定通りだ!!
「2人共!来るよ!!フェンリル討伐開始だ!!」
「おう!!」「了解!!」
僕は今ここで出し切る!!
ミハエルが最後の魔力を解放する!!
「いけぇぇ!!これで全部だぁぁぁぁ!!!!」
ずおぉぉぉぉぉぉ!!!!
ミハエルの身体を中心に爆発的に光の柱が立ち登る!!!その勢いでフェンリルは怯み足が止まる。
「いくら速くてもこれならどうだぁぁぁぁ!!!!」
「〈フレイムランス〉!!〈アクアランス〉!!〈アイスランス〉!!〈アースランス〉!!!!!!」
ミハエルの叫びと共に空を覆う程の巨大な魔法陣が展開される!!その魔法陣が幾重にも重なり更に広がる!!!そして魔法陣には数千を数える各属性の槍が装填されていた。
「う、う、嘘・・・嘘って言って!!!よ、四重詠唱ぉぉぉぉぉぉ?!?!?!?!それも・・・無詠唱・・・もう・・いや・・・私が・・この子達に魔法の何を教えれば良いの・・・私が教えて欲しい・・・そ、そうよ・・教えてもらおう・・・うん・・」
ジュリアン先生は混乱してぶつぶつと呟いていた。
するとラミエル先生が肩に手を置く。
「ジュリアン先生・・・私も同じです・・・驚きすぎてもう笑うしか無いです・・・ふふっ・・・ほら・・見て・・全身の震えが止まらない・・・」
ラミエル先生は無意識に震える手を見せるのであった。
フェンリルは覚悟した・・これは逃げられないと・・ならば被弾を覚悟して全力で走り抜けあの化け物を仕留めると・・・フェンリルは力を溜めるべく姿勢を低くし勢いよく飛び出したのだった!!
「覚悟が決まったね・・・じゃあ!ここまで辿り着いてみろぉぉぉぉ!!!!」
ミハエルが腕を振り下ろすと数千の槍がフェンリル目掛けて襲い掛かる!!
ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドォォォォォォ!!!!!!!!!
フェンリルが身を低くして槍の豪雨に突っ込んで行く!!しかし身体が大きい分被弾する数も増えていく!!
しかし被弾して傷つき血を流しながらもお構い無しにミハエルに向かって真っ直ぐ向かって来る!!ダメージが無いのかと錯覚するほどであった。
す、凄いね・・・出来ればこれで倒したかったけど・・・
ミハエルはアスランとヴェイグに目で合図を送りお互いに頷く。
さあ・・・来い・・勝負だ・・・
数千の槍の豪雨を血だらけで押し通りフェンリルが直ぐそこまで迫って来る!!
フェンリルの覚悟と気迫がひしひしと伝わり寒気すら覚える。
・・・来る・・・
フェンリルが槍の豪雨を抜け最後の力を振り絞りミハエルに向かって突進する!!
しかしダメージの蓄積により目に見えてスピードが落ちていた・・・
「今だぁぁぁ!!!ゴーレム君!!」
ミハエルの号令で左右からゴーレムが飛び出しフェンリルの大木のような前脚にしがみつく!!!
フェンリルは意表をつかれて一瞬怯んでしまう!
「アスランッッッ!!!!今だぁぁぁぁぁ!!!」
アスランは覚悟を決めて走り出す!!
「やってやるぞぉぉぉぉぉ!!!〈加速〉!!」
スキル〈加速〉により素早さの2倍の猛ダッシュで大地を蹴る!!そして跪付いたゴーレムの肩を踏み台にしてフェンリルに向かって飛び出した!!!
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!もうどうにでもなれぇぇぇぇぇ!!!」
アスランは指輪の付いたリボンをしっかり握りフェンリルに手を伸ばす!!
しかし次の瞬間!アスラン見た光景は大きな口を開けて待ち受けるフェンリルの姿であった。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
アスランが絶叫するがここは空中・・・
バクンッ!!!!!
アスランはフェンリルの口の中に消えていった・・・
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!アスランが!!アスランがぁぁぁぁぁぁ!!!
あああーーーーーっっっ!!!!!」
ラミエル先生が叫ぶ!
「うぅ、、私は・・私は・・7歳の子供に守られて・・7歳の子供に戦わせて・・・アスラン・・・うあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ラミエル先生が肩を落とし地面に手をついて号泣する!
しかし気が付いて戦況を見ていたフェリスが面倒臭そうにラミエル先生を見る。
「先生!!!落ち着いて!!ミハエル君がそんなヘマするわけないじゃ無い!!恐らくあれも作戦のうちよ!!
その証拠に2人共動揺なんかして無いでしょう?」
「フ、フェンリルに食べられるのが作戦?!意味が分からないわ!!!!」
ラミエル先生が涙でぐしゃぐしゃの顔を上げて抗議する!!
「もう!!黙って見てて!!ほら!!」
フェリスがミハエル達に指を差す!!
フェンリルがアスランを口に収めた瞬間!!ステータスが激減する!!
「ヴェイグ!!!仕上げだぁぁぁぁ!!!後は・・・任せた・・・」
ミハエルは最後の指示を叫ぶと親指を立てながら魔力切れでそのまま倒れ込んだ。
「おう!!!任せろぉぉぉ!!いくぜ!!〈限界突破〉!!!からのぉぉぉ〈捨身〉発動ぉぉぉぉ!!!!」
ヴェイグはスキル〈限界突破〉で全てのステータスを2倍に引き上げ〈捨身〉により防御力を攻撃力に変換し上乗せして、そのまま走り出す!!!
そしてゴーレムの肩を踏み台にして剣を振りかぶりフェンリルに向かって飛び出した!!
「うぉぉぉぉぉぉぉ!!!くたばれぇぇぇぇ!!!犬っころぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ずばぁぁぁぁぁん!!!!!
ヴェイグは振りかぶった剣をそのままフェンリルの頭に突き刺しその勢いで地面に叩き付けた!!
「ギャインッ!!」
ステータスが激減したフェンリルは呆気なく目の光が消えこと切れるのであった・・。
「どうだぁぁぁぁ!!鳴かしてやったぜ!ザマァみろ!!」
ヴェイグが動かなくなったフェンリルを見下ろし罵声を浴びせていると、だらしなく開いた口から涎だらけのアスランが這い出して来た。
「ぶはぁぁぁ・・・死ぬかと思った・・・本当に食べられるとはね・・・それにしても・・臭い・・」
するとミハエルが辛うじて立ち上がりフェンリルの元へ行き膝を付く。
「お前は・・本当は戦いたくなかったんだよね・・」
ミハエルは目に涙を溜めてフェンリルを撫でていた。
「な、7歳の子供達が・・・フェンリルを討伐・・誰が信じるの・・・?」
「でも真実よ・・私達は・・7歳の子供達に守られた・・・助かったのよ・・・」
ジュリアン先生とラミエル先生は、目の当たりにした事実と助かった嬉しさで複雑な気持ちでへたり込んでいた。
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