第35話 アスラン・ローランド
アスラン・ローランド
Lv 15
【称号】騎士
攻撃力 2790
防御力 1690
素早さ 1270
魔力 178
魔法力 379
【加護】〈武神の加護〉
【スキル】〈攻撃力・大〉
〈剣の極意〉
〈加速〉
〈騎士〉か・・・かなり訓練を積んでいるね。
こういうタイプは自分に誇りを持ってるからね・・・知らないうちに、知らない所でってやつかも・・・
『ミハエル君。君はロベルトさんを知っているよね?』
アスランが突然口を開いた。
『えっ?!メーランド伯爵の執事のロベルトさん?』
『そうだ。君のせいで罪に問われた僕の尊敬する師匠のロベルトさんだ!』
そ、そこかぁぁぁぁ!!!確かにロベルトさんは尊敬されそうな人だからね・・・でも。
ミハエルも真剣な表情で話し出す。
『アスラン君。君はあの屋敷で何が行われていたのか知っているの?』
『そんな事は知らない!!師匠は旅立つ日に僕に言った!クラインド王国最強は自分ではなく君だと!!
旅から帰ったら君に仕えると!!
師匠がお前なんかに負けるはずがないんだ!!何かずるい事をしたんだろう?!』
アスランは冷静さを保としていたがロベルトを尊敬するあまり声を荒げてしまう。
これはまた違う方向の我儘だね・・・でも嫌いじゃないな・・尊敬する人か・・
ミハエルは冷静な口調でアスランに話し出す。
『アスラン君。まずあの屋敷でメーランド伯爵が何をしていたのか説明させてくれない?』
ミハエルの冷静な口調にアスランは自分が取り乱した事を気付き息を整える。
ミハエルはそれを答えと受け取りメーランド邸での出来事を話して聞かせた。
『ひ、酷い・・・』
『なんてグズなの・・』
『こ、子供達がかわいそう・・』
三姉妹は涙を溜めて絶句していた。アスランも言葉も無く俯いていた。
『ロベルトさんはずっと悩んでいたんだよ。主人の恩義と子供達の将来を奪っている自分にね。
だからロベルトさんは子供達を取り戻す旅に出たんだ。
アスラン君のロベルトさんを尊敬する気持ちはわかるよ。だからこそロベルトさんの決断を理解してあげて欲しい。
それに僕はロベルトさんと対峙しただけで戦っていないんだよ。
ただ分かっているのはロベルトさんがめちゃくちゃ強いって事だけだよ。
僕も〈神の使人〉で初めて尊敬出来る大人に出会って嬉しかったんだよ。
アスラン君。分かってくれないかな?』
アスランは師の葛藤を初めて知り自分の無知を呪った。
『知らなかった・・・師匠が・・そんな・・辛かったなんて・・あの優しい笑顔の下に・・何も知らずに笑っていた僕は・・・』
肩を震わせ涙を流すと決意したかのように顔を上げる。
『ミハエル君。教えてくれてありがとう。僕の勘違いを許して欲しい。』
アスランは握手を求めて手を出す。
『もちろんだよ!さすがロベルトさんの弟子だね。他の奴等とは違うね!』
ミハエルもアスランの手を取り笑い合う。
『ミハエル君!今度手合わせしてくれないか?師匠が認めた腕を見てみたいんだ!』
『僕の方こそお願いするよ!』
今ここに同年代の男同士の和解と友情が芽生えた瞬間であった。
ミハエルは心から嬉しく思いうっすらと涙を浮かべるのであった。
『あぁ・・男の友情よ・・かっこいい・・』
『えぇ、ミハエル君・・なんだか大人みたい・・』
『ミハエル君・・・かっこいい・・・』
三姉妹が光悦した顔で呟きミハエルを獲物を狙う目で見つめていた。
悪意とは違う寒気を感じ身震いするミハエルであった。
よし!この際はっきり誤解を解いておこう。
『皆んな聞いて欲しいんだ。実は賢じゃ・・・』
バタン!!
『兄様!!あいつだ!!あいつにやられたんだ!!ギタギタにしてやってよ!!』
タイミング悪くヴェイグが兄様を連れて帰ってきた・・・
こ、こいつ・・・ちょっとイラッとしたよ・・・
ベイル・クレイン
Lv 25
【称号】狂戦士
攻撃力 7069
防御力 2689
素早さ 3693
魔力 280
魔法力 589
【加護】〈闘神の加護〉
【スキル】〈攻撃力・大〉
〈捨身〉
〈限界突破〉
ふん!あのガキか・・余裕だな。
おっ!可愛い女の子がいるじゃないか?!ここは俺のすごい所を見せてやるか!!
ベイルは自分が負けるとは1ミリも思わず女の子達しか目になかった。そして更に調子に乗り出した。
『おい!そこのガキ!俺の弟に手を出したらしいな?!
お前なんか俺が出るまでも無いがケジメは付けるぞ!
お前の攻撃なんか効かない事を教えてやる!
全力で攻撃してみろ!!受けてやる!!』
もちろんミハエルは全力で攻撃できるはずもなく考える。
面倒くさい奴だね・・・でも・・今後の為に・・
ミハエルは指輪を2つ外す。
『確認するけど本当に一撃受けるんですね?あなたが言ったんですよ?どうなっても知りませんよ?止めるなら今ですよ?』
ミ、ミハエル君の纏う力が上がった?!側にいるだけで震えが止まらない・・・
アスランは師匠の言葉を思い出す。
『ミハエル様を見た目で判断するな。』
アスランは声も出せずに生唾を飲み込む。
『ふん!ガキが生意気だぞ!お前の全力なんか知れていr・・・』
ずどぉぉぉ!!
『お前もガキだよ。』
突然目の前に現れたミハエルのボディーブローが問答無用でベイルのみぞおちに突き刺さった!
『ぶべぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
ベイルは弟の前で胃の中の物をぶち撒けてその中へ顔面を沈めた。
『えっ?!兄様?!兄様?!なんで?!どうして?!』
ヴェイグが焦りベイルに駆け寄るがどうしていいか分からずにオロオロしている。
み、見えなかった・・・今までミハエル君は目の前にいたのに・・・師匠が認めた男・・多分まだ本気じゃない・・・ミハエル君・・君は一体・・・
『君の兄様もこの様だけど君はどうする?』
ミハエルがヴェイグに歩み寄る。
『あ・・う・・ひ、卑怯だぞ・・ずるいぞ!いきなり攻撃しやがって!!』
『うるさいよ。お前達の言い訳なんて聞かない事にしたんだよ。何を言っても無駄なんだよね。会話をするだけ無駄なんだよ。』
歩み寄るミハエルの圧力に後退りヴェイグは教室の壁に張り付く!
『あ・・う・・く、来るな・・・』
『さあ・・どうするの?僕に頭を下げるか、兄様のようになるか・・・どうする?』
なんで!!どうして!!こんな奴がいるんだ!兄様の影で好き勝手出来ると思ったのに・・・
ヴェイグは都合良く兄を利用し自分の地位を確立して好き勝手するつもりだったのだ。
『よ、よし!俺の用心棒にしてやる!名誉な事だろ?!貴族の用心棒だぞ!?』
すると三姉妹とアスランが静かに首を振る。
『馬鹿よね。』
『本当に。』
『死んだわね。』
『救いようが無い・・』
ミハエルは静かに拳を構える。
『・・・断る!!!!』
ずどぉぉぉ!!!
ミハエルの拳がヴェイグのみぞおちに突き刺さる。
『ごうぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』
ヴェイグも兄と一緒に汚物の中に顔面を埋めるのであった。
ミハエルはクレイン兄弟を見下ろす。
『お前達・・貴族だからって調子に乗っては駄目だよ?僕にはそんなもの関係ないから。これから権力を振り翳して弱い人達を傷つけたら僕が許さないよ。覚えておいてね。』
しかしそうは言っても聞かないのは分かっていた。反省よりも自分の我儘を優先する人種なのである。
ミハエルは諦めたように2人を見下ろすのであった。
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