第27話 違法奴隷解放 2
ミハエルはだらし無く後ずさるログを無視して担いだ頭陀袋を静かに降ろす。
そして中にはブロンドのショートヘアーの可愛らしい女の子が気を失っていた。
『可哀想に・・・怖かったよね・・・』
女の子を頭陀袋から出してやり頭を優しく撫でる。
ミハエルは撫でた手を握り締め立ち上がるとログに向かって歩き出す。
『お前等は何故こんな酷い事を平気で出来るんだ?!お前だって親がいるんだろう?!
親が子をどんな思いで育てるか知らないのか?!
・・許さない・・・今までどれだけの子供達が売られて行ったんだ・・・ここでどれだけの子供達が・・・泣いていたんだぁぁぁぁぁ!!!』
ミハエルの怒りが頂点に達する!!
ログはミハエルの身体から発した魔力に吹き飛ばされ壁に叩き付けられる!!
どごぉぉぉぉん!!
『がふぅぅぅぅぅ!!!』
(ぐっ・・ぐふっ・・こ、こいつは・・・子供じゃ・・ない・・・子供の格好をした・・神だ・・・俺達は・・神の逆鱗に触れてしまったんだ・・・・あぐっ・・)
どさっ・・・
ログはそのまま気を失い倒れ込んだ。
ミハエルが牢屋の前に立つと中には子供達が身を寄せ合い震えている姿があった。
こんな子供達を・・・お金の為に親から取り上げるなんて・・・許さないぞ・・・
ミハエルは精一杯の笑顔を作る。
『もう大丈夫。皆んなお家へ帰ろう!!』
ミハエルは牢屋の格子を両手で掴み左右に飴のように広げる!!
バキバキバキバキッッ!!!!
8人の子供達は勢いよく飛び出してミハエルに抱きつく!!
『あぁぁぁぁぁぁん!!!!怖かったよぉぉぉぉぉぉぉ!!!』
『ゔぅぅぅぅぅぅ・・・お母さぁぁぁぁぁーーーん!!!会いたいよぉぉぉぉぉ!!!』
『うあぁぁぁぁぁぁぁん!!!!』
子供達が安堵して堰を切ったように泣き出した。
『皆んな!!もう大丈夫だから!もう少しだけ頑張ろう!』
ミハエルはさっき助けた女の子の元に行くと女の子を起こす。
『大丈夫?』
女の子はミハエルの腕の中で薄く目を開くと目を丸くして暴れ出した!
『きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!何するのぉぉぉ!!!!離してぇぇぇぇぇ!!!!』
ミハエルを押し退けて壁の角に張り付いて怯えている。
『落ち着いて。君は攫われたんだよ。覚えていない?』
女の子は記憶が蘇り、はっ!とした顔で周りを見渡すとミハエルに詰め寄る!
『ここはどこ?!お母さんは?お父さんは?!』
ミハエルは頬を緩ませて女の子の肩に手を置く。
『大丈夫だよ。今から皆んなで帰る所だよ。
・・ただ・・・』
ミハエルは立ち上がり子供達を見る。
『聞いて欲しい。まだ上には悪い奴らが沢山いるんだ。この騒ぎを聞き付けて集まってきている。だから僕達で悪い大人をやっつけるんだ!!』
『えっ・・・無理だよ・・僕弱いし・・』
『そうだよ・・あいつ等の中には〈神の使人〉もいるんだよ・・・
『ゔぅぅぅ・・お母さんぁぁぁぁん!!!』
まあ、そうなるよね・・・
すると子供達が嘆く中さっきの女の子が立ち上がった。
『あんた達!!帰りたく無いの?!うるさいから泣かないで!!』
女の子は檄を飛ばしてミハエルを見る。
『私はサーシャよ。あなた、もちろん何か作戦があるのよね?』
へー!結構気が強いんだね・・・
ミハエルはサーシャの目を真っ直ぐ見据えて微笑む。
『僕はミハエル。もちろんだよサーシャ。奴等に子供の恐ろしさを叩き込んでやるんだ!!』
サーシャは口角を上げて悪い顔になる。
『で、どうするの?』
(よし!ここは全力で行こう。)
ミハエルは4つ目の指輪を外す。
『ふふっ。こうするのさ!!古代魔法〈フル・ポテンシャル〉!!!!!!』
子供達にかざした手から眩い光が満溢れ子供達を包んでいく!!まるで子供達が太陽のような光を放つ!そして光が子供達に吸い込まれるように消えて行った。
そしてミハエルは4つ目の指輪をはめる。
『ふう。君達の能力を一時的に引き上げたんだ!!これで君達は〈神の使人〉だって敵じゃ無いよ!それと念のために護衛も付けるね!』
『す、凄いよ・・力が溢れてくるよ!!』
『ほ、本当だ!!これなら・・・』
『えい!!!』
女の子が試しに壁を軽く小突いた・・・
どかぁぁぁん!!
ビキビキビキッ!!!
女の子の小さな拳を中心に石壁がクレーター状に凹みヒビが走った!!
『う、嘘・・・軽く当てただけなのに・・・』
他の子供達も目を見開き唖然とする。
『分かったかい?今君達は悪い奴等を懲らしめる勇者だよ!!
早く悪い奴等をやっつけて家に帰るんだ!!行くよ!!!』
ミハエルが手を前に出すと子供達も真似して手を重ねて行く!!
『悪い大人を成敗するぞぉぉぉぉぉぉ!!』
『『『『『『『おーー!!!』』』』』』』
すると階段の上から声が響く!!
『おい!!ガキ共が逃げるぞ!!捕まえろ!』
男達が階段を降りてくる!!
『ここは僕が先頭で行くよ!!それ!〈ロック・バレット〉!!!』
ミハエルの背後から大きな数十個の岩が男達を襲う!!
どごごごごごん!!!
『ごがぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
男達が豪快に吹っ飛んでいく!
『今だ!!皆んな駆け上がれぇぇぇぇ!!』
『『『おーー!!!!!!!!!』』』
ミハエルを先頭に子供達が階段を駆け上がり地上に飛び出した!
すると屋敷の前には50人程の男達が待ち受けていた。
『おいおい・・ガキ共だけじゃねーか!!どう言う事だこりぁ?!』
『見張りはどうしたんだ?・・・まさかガキにやられたんじゃ無いだろうな?!』
『まぁ、取り敢えず飯の種が逃げようとしてるんだ。面倒な事は後で考えようぜ!!』
『そうだな・・おい!ガキ共!!手間を取らせるなよ!!どう足掻いたって逃げられないだよ!!ひゃーはっはっはっはぁぁぁぁ!』
ミハエル達は冷めた目で高笑いする男を見ていた。
相変わらず悪意の大人は目障りだね・・・
『ミハエル・・あいつは私がぶっ飛ばすわ!』
サーシャが目尻をピクつかせながら男を睨む。
『あぁ、頼むよ。それと助っ人を紹介するよ!古代魔法〈ストーン・サーバント〉!!』
ミハエルが放った岩に手をかざすと数十個の岩が動き出し人型に変わっていく!!
ずごごごごごごごごご・・・・
『な、なんだあれは?!岩が・・岩が・・あ・・あれは・・〈ロックゴーレム〉?!』
男達の目の前に3mを越える〈ロックゴーレム〉20体が立ちはだかる!!
『紹介するよ!僕の友達!ゴーレム君達だよ!!仲良くしてね!!』
ミハエルがニッコリ笑う。
しかし子供達は目の前で起きている事が理解出来ずに呆然としていた。
『ミ、ミハエル・・・君?あなたは何者なの?・・・こんなの見た事ないわ・・』
ミハエルは指で頬を掻きながら苦笑いをする。
『まぁ、よく言われるけど取り敢えず奴等をやっつけよう。いいね?』
『・・・分かったわ!ここを出れたら・・わ、私と・・・ごにょごにょ・・・』
何か聞こえたような気がしたが無視をする。
『来るよ!!皆んな!!成敗開始だ!!!』
『『『『おーーーー!!!!!!!』』』
子供達は地面を蹴り悪意の塊に襲い掛かるのだった!!
『なんだあのガキは?!アイツは要注意だ!〈ロックゴーレム〉は俺達に任せろ!!
お前等はガキ共を捕まえるんだ!!』
そして悪党達は絶望的な戦いに踏み出すのだった。
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