第24話 ロゼルドの決意
ミハエルが細い路地に入り突き当たりに居る2人の男と目が合う。すると厳つい男の背筋が伸びて黙って扉を開けるが、もう1人の男がミハエルに近づいて行く。
『おい!!ガキが来るとk・・もが・もがっ・・くっ!・・何を・・・』
厳つい男が咄嗟に男の口を塞ぎ引きずって行く。
『ミハエル殿、失礼しました。中へどうぞ。』
『うん!ありがとう!』
ミハエルが笑顔で手を振ると、厳つい男も身をかがめて笑顔で手を振り返す。
そしてゆっくり扉を閉めた瞬間、両手で新入りの胸ぐらを掴み壁に押し付けて持ち上げる!
どぉん!!
『貴様ぁぁぁぁ!死にたいのか?!あ゛ぁぁぁ?!俺の許可なく口を開くんじゃねぇ!!!もう少し遅かったら俺もお前も壁のシミになってたんだぞ?!』
新入りの男は訳が分からず口を開く。
『な、何なんだよ!?みんなミハエル殿、ミハエル殿って!!ただのガキじゃないですか!?』
ごきん!!!
新入りの頭を拳骨が襲う!!
『いでぇぇぇ!!!』
『ガキって言うなぁぁぁぁ!!!いいか?!ミハエル殿に悪意を向けるな!!お前は新入りだから知らんのだ!!ミハエル殿の恐ろしさを!!お前如き睨まれただけであの世行きだぞ?!長生きしたかったら人を見た目で判断するな!!分かったな?!』
新入りは尊敬するガンイルの必死さに圧倒され半信半疑であったが首を縦に振った。
『は、はい・・分かりました。』
『よし!分かればいい!!交代の時間だ!行け!!』
『・・お疲れっす・・』
新入りは煮え切らない表情で建物の中に消えて行った。
『おい!新入り!ミランドさんの部屋に紅茶と菓子を持って行け!!』
『は、はい!!』
『おー!!ミハエル殿!!もうそろそろ来る頃だと思ってましたよ!こちらにどうぞ!』
ロゼルドと側近達が笑顔で迎えるとロゼルドがソファを薦める。
『さっきミハエル殿を襲った馬鹿共が居たと報告が入った所でしてね。
メイグラ・メーランド伯爵の件ですね?』
ロゼルドがテーブルを挟んで反対側に座るとノックの音が響く。
コンコン!
『紅茶と菓子を持ってきました。』
『よし。入れ!』
『失礼します・・』
側近が扉を開けると先程の新入りが立っていた。
げげっ!さっきのガキじゃねーか!それに何でみんな笑顔なんだ?!
・・・一体このガキが何だって言うんだ・・・よし・・俺が化けの皮を剥いでやる。
しかし新入りの男が部屋に一歩入った瞬間・・・突然膝から崩れ落ちて持っていて物を床にぶちまけた。
がしゃーん・・・!!
『がっ・・・ぐふっ・・ごふっ・・・・』
新入りはもがく事も出来ずに床に張り付いたまま痙攣していた。
『この馬鹿がぁぁぁ!!何をしてる!!・・・んっ?こ、これは・・・お前・・まさか・・・』
ロゼルドが恐る恐るミハエルを見ると首を傾げて新入りを見下ろしていた。
『ミ、ミハエル殿・・ま、まさかこいつが・・・』
『うん。僕に攻撃を仕掛けようとしてたの。ロゼルドさん・・・どういうことかな?』
ミハエルがロゼルドを見据えると全身の毛穴が開く程の圧力に襲われる!
『い、いや・・ま、待ってくれ!こ、こいつは新入りなんだ・・・多分、お、俺達が言っている、ミ、ミハエル殿の実力を疑ったんだ!』
『ふーん。で、試したって事?』
ミハエルは〈威圧〉を解除して新入りに訪ねる。
『ぶばぁぁぁぁぁ!!!!ごほっ!ごほっ!はぁはぁはぁはぁ・・・・』
新入りは床に張り付いたまま起き上がれずに失禁していた。
や、やばい!!やばい!!やばい!!ガンイルさんの言う通りだった・・・睨まれただけで・・あの世行き・・・はぁはぁ・・皆んなが笑顔なのは・・悪意を向けない為か・・・
新入りはゴソゴソと動いて何とか土下座の体勢になった。
『ミ、ミハエル・・殿、疑ってしまって・・すいませんでした・・・ごふっ』
そう言い残して土下座のまま気を失ってしまった。
『うん。いいよ。誰にでも間違いはあるからね。』
気絶している新入りに声を掛ける。
ロゼルドを始め側近達は笑顔で恐怖を隠しながら改めて笑顔を絶やさぬよう気を引き締めるのだった・・。
『あっ!そうそう!!ロゼルドさん!メイグラ・メーランド伯爵の事を教えてよ!』
『あっ、そ、そうでしたね。・・んっ・・ごほん・・え、まず、メーランド伯爵の噂は良くありません。聞くのは黒い噂ばかりです。特に最近は違法奴隷に手を出しているようです。ミハエル殿を襲ったのもその為だと思います。』
ミハエルはロゼルドの顔を見る。
『もしかして・・・ロゼルドさん・・協力してるの?』
ロゼルドは目を見開き高速で残像を残しながら首を振る!!
『いえいえいえいえいえいえ!!!!確かにここへは来ましだが丁重にお断りしましたよ!!本当ですよ!!』
『・・・なら良いけど・・所で攫われた子供達は何処にいるの?』
『は、はい。や、屋敷の地下に囚われているようです。これが屋敷の場所です。情報では明日取り引きがあります。』
ロゼルドが屋敷までの地図を差し出す。
ミハエルは地図を受け取り少しため息をつきながら俯く。
はぁ、ここまで知っていながら攫われた子供達の事はどうでもいいんだね・・・でも・・
ロゼルドは気付いているのだ。ここまでの情報を得ていながら何もしない自分達に苛立ちを覚える筈だと。だが、自分達にはどうしようも無い事だと知って欲しいと無言で訴えているのだ。
ロゼルドにとって賭けであった。ロゼルドは心拍数を上げながら黙って考えるミハエルを不安げに見ていた。
するとミハエルは無言で立ち上がる。
ロゼルドは目を見開きソファに張り付く!
『ロゼルドさん。ありがとう。ロゼルドさんにも立場とルールがあると理解しているよ!
これからも情報をよろしくね。じゃあね!』
ミハエルは笑顔で手を振りながら部屋を出て行った。
『ぶはぁぁぁぁぁ!!!!』
残されたロゼルド達は盛大なため息をつきながらへたり込んだ。
そして側近の1人が口を開く。
『ロゼルドさん・・ミハエル殿は本当に7歳の子供なんですか?あれ程のやり取りが出来る子供は見た事がないですが・・・』
『あぁ、俺も見た事ない。だが・・実際に目の前に居るんだ!!
だから俺は決めたんだ!!必ずミハエル殿はこの世界の中心的存在になる。その傍で存在するのは俺達だ!!ミハエル殿を支える組織としてな!!!』
ロゼルドの決意に側近達も頷きロゼルドの野望に賛同するのだった。
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