第23話 違法奴隷
『セイルのさん!僕1人で行けるから大丈夫です。だからアンリルさん達と行ってください。』
『えっ、で、ですが・・・』
『セイルさん!ミハエル君はそんなに子供じゃあ無いわ!
1人で家に帰るぐらいの出来るわ!ほら!準備して行くわよ!!馬車を見てる人が居ないと困るのよ!』
アンリルが戸惑うセイルを一喝して引きずって行く。
『あ、あうっ!わ、わかりました。そ、それではミハエル様!お気を付けて・・・』
『うん!行ってらっしゃい!』
ミハエルはにこやかに手を振って見送った。
さてと・・3人・・さっきから悪意混じりの視線を送って来るのは何者かな?
ミハエルはしばらく街の中を散策して誘うように裏路地の袋小路に入ると悪意が高まる。
引っ掛かったね。
何も知らずに袋小路を塞ぐように男3人が現れる。
『おい!ガキ!俺達を誘ったな?その程度の力でいい度胸だな?』
先頭の筋骨隆々の男がニヤけながらミハエルを見下ろす。
へぇー。〈鑑定〉が使えるんだ・・・じゃあお返し!・・・んっ?!この人・・〈神の使人〉か・・・〈神の使人〉にはろくな奴が居ないな・・・
『はぁ、〈神の使人〉の癖にくだらない事に力を使って恥ずかしくないの?
もっと違う使い方があるんじゃ無いの?』
ミハエルは余裕ある態度で男を見上げる。
な、何?!こいつ・・・鑑定持ちか?!いや、だがこいつのステータスに〈鑑定〉は無い・・・まさか・・・〈擬装〉か〈隠匿〉持ちか・・・どちらにせよこの余裕・・〈神の使人〉の可能性も・・いや待てよ・・この歳で俺のレベルを越えているはずは無い・・・そうだ!ハッタリだ!
男は自分の推理を信じて死地へ踏み出す。
『おいガキ!!少々出来るようだが相手が悪かったな?!お前も分かっているよな?俺はレベル308の〈神の使人〉だ!お前に勝てる要素は全く無いぞ?
大人しく言うことを聞いた方が身の為だぞ?』
『ふふっ。おじさんこそ、そんなステータスで何を言っているの?論より証拠だよ!つべこべ言わずに掛かってきたら?』
ミハエルはさりげなく指輪を3つ外してアイテムボックスに入れる。
『くっ!生意気なガキだ!!力の差を教えてやるよぉぉぉぉ!!!』
男が拳を振りかぶり襲い掛かるが既にそこにミハエルは居なかった・・・というより見えなかったのだ。
『何処だ?!何処に逃げた?!』
『ここだよ!もしかして見えなかったの?これでおじさん達は逃げられないよ。』
気付けばミハエルが男達の背後に回り出口を塞ぐ事になった。
『ば、馬鹿な・・いつの間に・・・お前のステータスは・・・一体・・』
男がもう一度〈鑑定〉すると驚愕の表情を浮かべて後ずさる。
『な、なんだ・・そ、そのステータスは・・・魔力150万?!そ、その歳で・・お、お前は何なんだ・・・』
『ただの7歳の子供だよ。それより僕を襲った理由を聞かせてくれないかな?
素直に教えてくれるなら痛くしないけど抵抗するなら・・・ね?』
ミハエルが悪い笑みを浮かべながら歩み寄ると男達は後退り壁に張り付いてしまう。
『ま、待て!待ってくれ!!お、俺達は頼まれたんだ!!この街に入って来るガキを攫って来いって!!』
なるほどね、街の子供達を攫えば足が付きやすいって事か・・・
『ふーん。で、依頼主は誰?』
『えっ・・そ、それは・・・い、言えな・・・・げっ!!』
しゅらん・・・
一瞬鋭く周りの空気が切り裂かれた感覚がしたと思ったら男の鼻先に青白い刀身の先端が突き付けられていた。
『この剣いいでしょぉ?切れ味を試してみたいなぁ・・・何処かに素直じゃ無いおじさんは居ないかなぁーー?』
ミハエルは首を傾げてジト目で男達を眺めると男達は引き攣った顔をゆっくりと見合わせ頷く。
『あっあーーっ!思い出した!!メイグラ・メーランド伯爵だ!
なんでも子供達を奴隷商に売って儲けているって言ってたなぁ・・・』
男はあさっての方向を見ながら棒読みで口を開いた。
『ふーん。教えてくれてありがとう!』
ミハエルが鼻先に突き付けた剣を収めると男達がへたり込んだ。
奴隷商か・・いつ聞いても嫌な響きだな。でも合法ならともかく無理矢理攫ってる奴らが居るのか・・・なんとかしないと・・・
取り敢えずこいつらは眠ってもらおう。
ミハエルが男達に強めの〈威圧〉を放つと白目をむいて崩れ落ちた。
『さて・・そこの人!ロゼルドさんの所の人だよね?この人達を警備隊へ引き渡しておいてね!』
ミハエルが空に向かって声を掛けると頭を掻きながら建物の屋上から男が顔を出す。
『バレてたか・・・流石はミハエル殿。了解しました。こちらで引き渡しておきます。』
『お願いねー!』
ミハエルは男に手を振り路地を出て行った。
『ふぅ。見かけで判断するなと言ういい例だな・・・結局、〈神の使人〉を指一本触れずに弄ぶとは・・・』
気絶している男達を見下ろし苦笑いをするのだった。
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