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第193話 従魔契約

(こいつは・・九本の尻尾・・・九尾の狐だ・・・初めて見た。これもイグさんと同じ神界の魔物・・さっきの奴の仕業か・・・さて、おとなしく神界へ帰ってくれると良いんだけど・・・)


ミハエルが指輪を外しエンペラー・ナインテイルの前に進み出ると階段からライナードとカリンも飛び出して来た。


「うおっ!!す、凄い迫力だ・・・九本の尻尾がもふもふだな!それに・・・凄くかっこいいな!」


「本当!!これが神獣・・・綺麗な黒毛が素敵・・・」


二人に恐怖は無くエンペラー・ナイトテイルの迫力と美しさに興味津々であった。しかし三人の圧倒的な神力に周りにいる一本から四本尻尾のナイトテイル達は失神してパタパタと倒れて行く。五本尻尾以上のナイトテイルも威嚇する事も忘れて怯えていた。


「・・むっ・・むう・・な、何・・こ、この矮小な筈の人間共から感じる圧倒的な神力の本流は・・き、貴様・・・一体何者だ?!」


エンペラー・ナインテイルは自分の何十分の一のサイズのミハエルに身構え全身の毛を逆立てていた。


「初めまして。僕はミハエル。ただの人間だよ。それよりここは君のいる所じゃないんだ。素直に神界へ帰ってくれないかな?」


「・・・う、嘘だ!そんな神力を持つ人間などいる訳がない!!そ、それに・・このまま神界へ戻れば再び宝玉に封印される・・・もうあんな窮屈で退屈な場所はごめんよ・・・ならば・・・」


身構えたエンペラー・ナインテイルの足元から影が広がりナイトテイル達を黒い沼に沈め自分の眷属達を回収して行く。


「皆んな!何か仕掛けてくるよ!」


「おう!」

「うん!」


ライナードとカリンも身構える。


「私は神界には帰らん・・・この地上で好きに生きるのだ・・・邪魔はさせん!!」


大地をを踏み締めたエンペラー・ナインテイルの巨大な身体から禍々しいオーラが立ち昇る。そして九本の尻尾が巨大化し扇状に広がると尾の先端から立ち昇る濃密で膨大なオーラをエンペラー・ナインテイルの頭上に集約していく。


「使徒様!奴はここを破壊するつもりです!!」


アグニシアがエンペラー・ナインテイルの企みに気付き立ち上がる。しかしミハエルは焦る事なく大きく成りつつある漆黒の渦を見上げていた。


「そうだね・・・分かってる。でもアグニシアさん達は手を出さないでね。」


「はっ・・はい。・・・し、使徒様・・・何か考えがあるのですか?」


「うん。僕はねアグニシアさんと会って初めて自分が〈創造神の使徒〉だって知ったの。そしたらその力も理解したんだ・・・」



【創造神の使徒】

・創造神ゼムビウスが創造せし神獣を使役する事が出来る。

・神力を媒介としてあらゆるものに干渉し創造する事が出来る。



(今まで知らなかったから分からなかったけど認識して改めて感じると周りの小石一つから目の前の狐さんまで魔力の流れが手に取るように分かる・・・そう・・分かるだけじゃなく手に取れる・・・)


ゼノアはエンペラー・ナインテイルの頭上にある膨大な神力の渦に手を翳す。


(うん・・・これだ・・)


ずばぁん・・・


ゼノアが翳した手を握ると膨大な神力の渦があっという間に霧散し消え去った・・・


「は、はあぁぁぁぁぁぁ?!な、何?!何が起こったの?!わ、私の・・・テンペスト・トルネードが・・・き、消えた・・・?!な、何故?!」


(あれ?口調が変わった?)


「お、お前!!何をしたの?!」


「ん?あぁ・・・僕の神力であなたの神力に干渉して神力の繋がりを切った・・・こんな感じかかな?」


「わ、私の神力に・・・干渉・・ば、馬鹿な・・・そ、そんな事をしたら私の神力が逆流して逆にお前が・・・はっ!お、お前・・さっき・・確か・・そ、創造神の・・・使徒とか言って・・・」


エンペラー・ナインテイルは目の前の小さな少年の正体に気付き黒い額に冷たい滴を垂らす。九本の尻尾は垂れ下り後ずさって行く・・・


そして驚いたのはエンペラー・ナインテイルだけでなく古龍達も虚空を見上げ唖然としていた。


「あ、あれ程の神力の塊を・・・一瞬で・・」


「ねえ・・普通あれだけの神力に干渉したら神力が暴走するんじゃないの?」


「・・普通ならそうなる。だけど使徒は奴の神力の元を止めた・・」


「そう。神力の供給が絶たれた奴の魔法は使徒様の膨大な神力により無害な物に創造された・・・」


「・・・という事は使徒様の前に立つ者は魔法が使えない・・・全てが無効化される・・・」


アグニシアの言葉に古龍達はゼノアの背中を誇らしげに見る。


(流石・・我らの使徒様・・・この地上で使徒様の前に立てる者は居ない・・・)



「おーい!ナインテイルさんよ!どうするんだ?このまま帰った方がいいと思うけど・・・」


ライナードが決断を迫るように神力を滲ませるとエンペラー・ナインテイルは更に後ずさる・・・


(・・・うくっ・・あ、あの後ろにいる奴らも力を押さえているようだが相当な手練・・・その上魔法は使えない・・・だけど神界には帰りたくはない・・・ならば・・・背に腹は変えられん・・・)


「ねぇ・・・エンペラー・ナインテイルが・・・小さくなってない?」


「うん・・・小さくなってるね・・・」


カリンが指差すと確かにエンペラー・ナインテイルがみるみる内に小さくなり仔犬程の大きさになった。


「・・・か、可愛い・・・」


思わずカリンが呟く・・・


ミハエル達の前には黒い毛玉の様な身体で九本のもふもふの尻尾をブンブン振る小さなエンペラー・ナインテイルがちょこんと座っていた。


「きゅぅぅん・・・使徒様ぁ・・私もお供にしてくださいな?」


小さくなったエンペラー・ナインテイルが愛嬌を振り撒くようにつぶらな瞳を閏るませながら首を傾げた。


「えっ・・・お供に・・?」


「・・そ、そう来たか・・・」


ミハエルとライナードが呆気に取られているとカリンが目を輝かせて小さなエンペラー・ナインテイルに駆け寄り抱きしめた。


「可愛いぃぃぃぃ!!!もふもふぅぅぅぅ!!」


「・・・あ・・お、おい!カリン・・・そいつはさっきまで敵対していた神界獣だぞ・・・そんな簡単に・・・」


「いいじゃない!!お供にしましょう!!すぐしましょう!!ねっ?ねっ?ミハエル君!いいでしょう?!」


(そ、そうよ!そうしないと神界に連れて行かれる・・・かと言ってここから逃げ出す事も無理・・・例え逃げ出せたとしても・・目立つ事も出来ずに怯えながら日々を過ごす事になる・・・)


カリンがエンペラー・ナインテイルの思いを知ってか知らずか頬擦りしながら期待に満ちた眼差しをミハエルに向ける。


「えっ・・・確かに今は悪意は感じられないけど・・・」


ミハエルが意見を求めるようにアグニシアを見る。


「ふっ・・・使徒様の懸念は分かります。今後、其奴が裏切るかも知れないという事でしょう。ならば従魔契約を結べば良いでしょう。」


「従魔契約?」


「そうです。従魔契約をする事により主に従順になるのです。しかし神界獣の従魔契約は創造神の使徒様しか出来ません。」


「・・・そうなんだ・・・」


ミハエルがふとカリンに目を向けると目を輝かせ期待の眼差しで見つめるカリンとエンペラー・ナインテイルと目が合った・・・


「うん。分かったよ。一緒に行こう。」


「やったぁぁぁ!!もう名前も考えたの!!ナイル!ナインテイルを縮めてナイルよ!」


「うきゅゅゅ!!」


(助かったわーー!これで封印される事もないわ!)


カリンはナイルを両手で持ち上げはしゃぐ。ナイルもまた嬉しそうに九本の尻尾を振り回すのであった。

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