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第189話 古龍四柱の口伝と現実

アグニシアの分体を先頭にミハエル達が階段を降りて行く。階段の先には扉は無く眩い光が漏れていた。ミハエル達は緊張の面持ちで階段を一段一段と降りて行くといつの間にかアグニシアの分体が消えてミハエル達は眩い光の中に足を踏み入れた・・・


「うえぇっ?!こ、ここは・・・」


光の先は真っ赤な絨毯が敷かれた大きな部屋であった。中には大きくこの字型に並べられた真っ赤な高級そうなソファが置かれその中央には岩を磨いて造られた大きなテーブルがセンス良く置かれていた。そして壁際には何故か大きな窓が並び地下にも関わらず陽の光をふんだんに取り込んでいた。


「こ、ここは・・ふ、噴火口の底だぞ・・・な、なんで窓から外が見えるんだ・・・」


「・・えぇ・・な、なんでだろうね・・・」


ライナードとカリンは窓の外に広がる景色を呆気に取られて見つめていた。後から入って来たリベルト達も息を飲み立ち尽くしていた。


「・・・な、なんだよこれ・・・こ、ここは地下だよな・・・?」


「え、えぇ・・そ、その筈ですが・・」


「・・・わ、私も初めて来たから驚いているわ。恐らくあの窓に空間魔法を付与して窓と外界を繋げているのよ。」


神界から来た冥界蛇イグでさえも目を丸くして窓の外に広がる青空を眺めていた。


皆が呆気に取られているといつの間にかミハエルの目の前に女性と分かる膨大な魔力の塊が跪いていた。そして一際大きな魔力を纏う真っ赤なビキニアーマーの女性が顔を上げると横に並ぶ女性達も顔を上げてミハエルを優しい目で見つめる。


(えっ・・あ・・・ま、まさかだよね・・・)


ミハエルは跪く女性に驚きながら圧倒されて一歩退がる。


「使徒様。先ほどは大変失礼致しました。私はこの世界で夏を司る炎帝龍アグニシアと申します。お見知り置きを。」


「使徒様。分体で失礼致します。私は春を司る風帝龍シルフェリアでございます。」


「使徒様。お初にお目に掛かります。私は冬を司る氷帝龍クラシリアでございます。」


「使徒様。私は秋を司る地帝龍グランベリアでございます。今、この世界は私の季節です。ご要望があれば何なりと。」



「う、嘘・・・こ、古龍四柱が・・・同時に目覚めたというの?!だ、駄目よ!!こ、この世界は・・・この世界はどうなるのよ!!」


イグは震えながら後退ると窓の外に目をやる。しかし景色は変わらず青空の下で小鳥が飛び交い平和そのものであった。


「ど、どうして・・・」


膝を震わせながら立ち尽くすイグに炎帝龍アグニシアが立ち上がり近付く。


「貴女は神界の住人ね?はぁ。神界の者は我等を破壊龍か何かと勘違いしているのかしら?確かに気持ちよく寝てる時に突然起こされたら機嫌が悪くて力を少しだけ解放してしまう事もあるけど・・・我等は創造神ゼムビウス様からこの世界を護るように召喚されたのよ?なのにこの世界を滅亡させる事なんてある訳がないじゃない!!」


「でもさぁーアグニシアの寝起きの機嫌が悪くて地上の一部を焼け野原にしたから神界の住人にそう思われたのよ?!」


蒼いドレスの風帝龍シルフェリアの分体が腰に手を添えて悪戯っぽくアグニシアの顔を覗き込む。


「うくっ・・またその話を・・」


シルフェリアに同調するように純白のドレスを着た氷帝龍クラシリアの分体が静かに立ち上がり冷たい目でアグニシアを見る。


「そう・・そのおかげで神界では私達を起こすと世界が終わるとか言われるようになったの・・・そんな事ないのに・・・」


「くっ・・使徒様の前で・・・」


「そうなんです。使徒様。アグニシアが最近お昼寝をしている時に寒気がする程の神力を感じて起こされるってイライラしてたんです。先程も私達は止めたのですが・・・そのまま飛び出して行ったのです・・・はぁ・・使徒様でなかったらまた地上の一部が焼け野原になるところでした・・・」


茶色のドレスを着た地帝龍グランベリアの分体がゆっくりと首を横に振る。すると顔を真っ赤にしたアグニシアが三人の前に飛び出した。


「もう!!使徒様の前で内輪の恥を話すでない!!使徒様が困っているではないか!!」



ミハエル達は想像と違い目の前で年頃の娘のように会話する古龍四柱を呆気に取られて眺めていた。



「な、なあ・・・こ、これが古龍四柱か?そ、想像と大分違うような・・・」


「そ、そうよね・・もっと・・こう威厳があるというか・・近寄り難い雰囲気を想像してたんだけど・・・言伝えと現実の違いが激しいわね・・・」


「う、うん・・・僕もそう思っていたよ。と、取り敢えず何とかしないと・・・」


ミハエルは揉めている古龍達の前に進み出る。


「あ、あの!!い、いいですか?」


「「「「あっ!!」」」」


ミハエルの神力が籠った言葉に古龍四柱がミハエルを見つめたまま固まった。


「も、申し訳ありません!!お見苦しい所をお見せ致しました!」


「し、失礼致しました・・・」


「わ、私とした事が・・・」


「お恥ずかしい限りです・・・あ、あの!し、使徒様!立ち話も何ですからあちらでお寛ぎください!皆様もさあ!」


グランベリアは失態を誤魔化すように大きく真っ赤なソファに促すと他の三人も道を開ける。


「そ、そうですね!!さ、さあ!こちらです!」


「あっ!わ、私はお茶をご用意致しますわ!!」


「わ、私も・・て、手伝うわ。」


ミハエル達は促されたふかふかのソファに腰を下ろし古龍達が慌ただしく動き回る様を違和感を感じながら眺めているのだった。




「お前等・・ちょっと待ってろ。」


ドルゲルはミハエル達が地下に消えて行くのを確認するとゆっくりと辺りを確認しながら

階段に近付いて行く。


「まさか本当に最下層にこんな場所があるとはな・・・全くあいつの妄想は現実になるのか・・・」


ドルゲルは何気なく階段の淵に立った瞬間、地下から立ち昇る力の波に後退る・・・


「ぬぐっ・・・な、何だ・・こ、この魔力は・・・馬鹿げた魔力が・・三つ増えているぞ?!な、何故だ・・・」


「ドルゲル様!どうされたのですか?」


ドルゲルが振り向くとレオガルドとミラジリアを含めた5人の獣人が待ちきれずに駆け寄って来た。


(・・・どうする・・・取り敢えず様子を見るか・・・いや・・あまり時間はないぞ・・・くそっ!えぇい!どうにでもなれ!!)


ドルゲルはレオガルド達を一瞥して階段の先へと目線を移すとレオガルド達が階段の前で立ち止まる。


「こ、これは・・・」


「しっ!声を出すな。様子を見ながらゆっくり降りるんだ。いいな?」


「は、はい・・・こ、この下にアグニシア様が、お見えになるのですね・・・」


レオガルドはドルゲルの声に合わせて声のトーンを下げると階段の先を遠い目で見つめた。


「そうだ。覚悟を決めろ。行くぞ。」


「はっ!元より覚悟は決まっています!」


「ふん・・・」


ドルゲルは自分に言い聞かせていた。ドルゲルは微かに震える膝を抑え階段を降りて行く。その後をレオガルド達がドルゲルの足並みに合わせて降りて行く。そしてドルゲルは差し込む光が足元に届く寸前で立ち止まる。


(よ、よし・・ここで少し待て。俺が様子を見て来る・・・)


(は、はい・・・)


レオガルド達が静かに頷くとドルゲルは細心の注意を払い壁に張り付き中の様子を覗こうとしたその時であった・・・若い少年の声が響いた・・・


「ねえ?そんな所に隠れてないで出て来たら?」


「なっ?!?!?!」


その瞬間ドルゲルの心臓の鼓動は耳元で聞こえる程に跳ね上がったのであった・・

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