第18話 義務教育
メルト村の前に大きな馬車が止まりセイルが降りてくる。
ここがメルト村か。良い雰囲気な村だな。
セイルが村の入り口に立つと見張りの男が声を掛ける。
『ここはメルト村だ。要件を聞こう。』
『私はクラインド王国から来たセイルだ。ソフィア様に伝言を伝えに来た。』
『分かった。確認するから少し待っててくれ。』
見張りの1人が村の奥へと消えて行く。そして暫くすると門が開き、そこには7歳になったミハエルが笑顔で立っていた。
『おぉ!!!ミハエル君!大きくなったな!見違えたぞ!』
セイルが我が子の成長を喜ぶようにミハエルの頭を撫でるとミハエルはニッと満面の笑顔で答える。
『セイルさん!こんにちは!母さんが待ってるよ!』
急かすようにセイルを案内するのだった。
ミハエルが扉を開けてセイルを招き入れる。
『母さん!セイルさんが来たよ!!』
『ありがとう。ミハエル。今行くわ!』
ソフィアはいそいそと台所から出て来て深々とお辞儀をする。
『セイルさん。ご無沙汰しております。今日は何か急ぎの用事ですか?』
セイルが勧められた椅子に座りながら話し出す。
『ソフィア様、そんな堅苦しい挨拶は無しにましょう。
今日はクラインド王からの提案を伝えに来ました。もし気に入らなければ断っても良いとの事です。』
ソフィアは目を丸くして首を振る。
『いえいえ!とんでもない!王様からの提案を断るなんて恐れ多いですわ!
で、その提案とはなんですの?』
『まあ、聞いてくれ。知っての通りクラインド王国では7歳から子供達の教養と集団行動と仲間意識を養う為に3年間学園に入る事になっている。
そこにミハエル君を迎えたいと言う事だ。
クラインド王曰く、今ミハエル君のいる環境はとても良い。しかし良過ぎる環境が当たり前になると悪意に対して過大な感情を抱き易くなる。
だから学園に入って仲間を作り色々な人間と関わって悪意に対して抵抗力を付けてやりたいとの事だ。
恐らく〈闇のイルバス〉の様になってほしく無いとお考えなのだ。
もちろん衣食住は私が責任を持って面倒を見ます!
ですが判断はソフィア様にお任せ致します。どうしますか?』
『・・・そうですか・・』
ソフィアはそう言うと少し寂しそうな顔をする。そして隣に座るミハエルの顔を覗き込む。
『ミハエルは学園に行きたい?』
ミハエルは葛藤していた。
学園に物凄く興味を惹かれている自分がいる。しかし3年もソフィアを1人にしてしまうのは心配でならなかった。
ミハエルは答える事が出来ずにチラリとソフィアの顔を見る。
するとソフィアはそれを察して微笑みながらミハエルの頭を撫でる。
『ふふっ。お母さんの事なら心配いらないわよ。ミハエルが沢山道具を作ってくれたから大丈夫!
行ってみたいんでしょう?顔にそう書いてあるわよ。』
ふっ・・流石は母さん・・・最初から受けるつもりだったんだね。
ミハエルはソフィアの想いを胸に目を輝かせる。
『うん!!行きたい!』
ソフィアはミハエルの元気な返事を聞いて覚悟を決める。
『セイルさん。聞いた通りです。その提案をお受けします。
王様によろしくお願いしますとお伝えください。』
セイルの表情が緩んでホッとした顔で笑みが溢れた。
『おお!クラインド王もお喜びになる!!早速なんだが10日後に迎えに来るので準備をして待っていて欲しい・・・』
バァァァン!!
『ちょっと待ったぁぁぁ!!その話!私も行くわ!!』
いきなりアンリルが転がる様に飛び込んで来た!!
アンリルは自分の研究室兼自宅を引き払ってメルト村へ移住していたのだ。
もちろんミハエルの元に居れば研究が進むと踏んだからである。
『セイルさん!私もミハエル君の護衛兼相談役でついて行くわ!!良いわよね?』
こんな面白そうな事無いわ!!絶対について行くわよ!
『ま、まあ・・・ミハエル君が良ければ・・だがな。』
アンリルさん・・意地でも付いて来るつもりだね・・・色々と教えてくれるから良いけど・・・
『ア、アンリルさん!どうしてあなたがついて行くの?!』
ソフィアが頬を膨らませてアンリルに詰め寄るが、アンリルは腰に手を添えて胸を張る。
『ソフィアさん。私はミハエル君の近況報告をする事で研究費を貰っているのを忘れたの?
それにミハエル君に悪い虫がつかない様に監視も出来るし相談役もできるわよ!どう?役に立つと思わない?』
アンリルがドヤ顔でソフィアを上から見ると
ソフィアはその勢いに少し怯んでしまう。
・・・あなたが1番大きな悪い虫なのに・・でも・・何も知らない所へミハエルを行かせるなら・・・相談相手ぐらいには丁度良いかもしれないか・・・
ソフィアは諦めて肩を落すとアンリルににじり寄り下から見上げる。
『はぁ、行くなと言っても聞かないわね・・仕方ないわ・・その代わり月1回は近況報告に来る事!!でないと認めないわよ?これを無視するならミハエルにお仕置きしてもらうからね?い・い・わ・ね?』
アンリルが顔をこわばらせながらミハエルをチラリと見る。
『うっ・・・わ、分かったわ・・。約束するわ・・』
・・・ミハエル君のお仕置きは駄目よ・・〈威圧〉だけで魔獣を仕留めるんだから・・あんなの喰らったら・・・死ぬわ・・・
ミハエルは村の男達と狩に行くようになりレベルが514に達していたのだ。
ミハエル
Lv 514
【称号】光の末裔
攻撃力 2596782
防御力 3119861
素早さ 4158453
魔力 15785781
魔法力 31571562
【加護】〈世界神の加護〉
〈光の加護〉
【スキル】〈アイテムボックス〉〈経験値1000倍〉〈ステータス上昇値1000倍〉〈全状態異常無効〉〈スキル消去〉〈スキル防御〉〈スキル付与〉〈全魔法使用〉〈光属性魔法・極大〉〈悪意感知〉〈索敵〉〈看破〉〈擬装〉〈威圧〉〈薬の極意〉〈錬金の極意〉〈体術の極意〉〈剣の極意〉〈弓の極意〉
レベルが上がったミハエルはとんでも無いステータスになっていた。
そしてアンリルはミハエルを鑑定しながら思う。このまま普通の7歳の子供達の中で生活して大丈夫なのだろうかと・・・。
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