第17話 決別
改めて見ると凄い力ね・・・これからミハエル君はどうなって行くんだろう・・・見てみたい・・・ミハエル君の成長を・・・
アンリルはミハエルの背中を真っ直ぐ見つめて微笑むのであった。
『ま、待て!!!お前達の屋敷に仲間が向かっているぞ!!大人しくしないと皆殺しだぞ!!!』
ロゼルドが腰を抜かしながら虚勢を張るがミハエルは微塵も動揺する事はなかった。
『無駄だよ。お前らのする事なんてお見通しだよ。僕が母さんに護衛も付けずにここへ来ると思ったの?
今頃お仲間は・・・どうなっているかな?』
『見えて来たぞ!!あの屋敷だ!早くしねぇとまたどやされるぞ!』
『それにしても女1人攫うのに10人もいるのか?』
『知らねぇよ!俺ちゃ言われた事をやるだけだ!
ロゼルドの部下達が屋敷の裏手の林まで迫っていた。
『よし、裏から忍び込むぞ。2人はここで見張りだ。・・って・・・おい!!聞いているか?!おい!!お前ら!!!!』
リーダーの男が怒りを露わにするが男達の目線は今まで岩だと思っていた物がゆっくりと立ち上がり迫り来る光景に釘付けだった。
『お、おい!あのでかいのは何だ・・・ヤ、ヤバイぞ!』
『ゴ、ゴーレムだ!!あれは〈ストーンゴーレム〉だぞ!!それに・・でかい!!!一体何体いやがる!!そこら中にいるぞ!!』
リーダーの男は部下達の目線を追う様に振り向くと身長3m程の灰色の巨体が立ち上がり眼光鋭く自分達に向かって迫っていた。
『な、何だ?!何故こんな所にゴーレムが居るんだ?!と、とにかく逃げるぞ!!』
だがゴーレム達はゴーレムと思えない程の素早さで男達の行先を遮る!!
『駄目だぁぁ!!!完全に囲まれてるぞ!!
何なんだ!!こんなの聞いて無いぞ!!』
そう。ミハエルは屋敷を出る時に古代魔法〈ストーン・サーバント〉により屋敷の周りに〈ストーン・ゴーレム〉を配置していたのだ。
ゴーレム達には〈悪意感知〉を付与して悪意を持って屋敷に近寄る者を排除する様に命令してあるのだ。
術者の魔法力に比例して強化される為、ミハエルの魔法力によってこのゴーレム達は国一つを壊滅出来る程の戦力となっていた。
〈ストーンゴーレム〉達は巨体とは思えない素早さで逃げ惑う男達に追いつき容赦なく拳を振り下ろす!!
ずどぉぉぉん!!
ずかぁぁぁん!!
どごぉぉぉん!!
『ぎゃぁぁぁぁぁ!!!』
『ぐはぁぁぁぁぁ!!!』
『げはぁぁぁぁぁ!!!』
男達は血反吐を撒き散らしながらまた1人また1人と力無く転がっていく。
『待ってくれぇぇぇぇ!!俺が悪かったぁぁぁぁ!!助けてくれぇぇぇ!!!』
男達は土下座をしながら許しを乞うが、そんな自分勝手な声などゴーレム達に届く訳もなく容赦無く拳が振り下ろされる。
ずこぉぉぉぉん!!!
『ごぶぁぁぁぁぁぁぁ!!!!』
ソフィアを攫おうとした男達はなす術も無く全滅し、ゴーレム達は転がる男達を引き摺り敷地の外へ投げ捨てると元の位置に戻って行くのだった。
『なっ?!何だと?!全滅?!どう言う事だ?!』
ロゼルドの後ろから慌てふためいてやって来た男の胸ぐらを掴んで揺らしている。
『や、屋敷の周りにどでかい〈ストーンゴーレム〉がうじゃうじゃ居るんです!!
奴ら・・・強過ぎるんですよ!!!』
『〈ストーンゴーレム〉だと・・・何故そんな所に・・・っ!・・護衛・・・か・・』
ロゼルドはミハエルの言葉を思い出し恐る恐るミハエルの方を見る。
ミハエルはニヤリと笑う。
『さあ!万策尽きて弁解の余地も無いよね?
お前らのように人を食い物にするクズはこの世には要らないよ!!』
ミハエルが力を込めて構えるとロゼルドが土下座に座り直す。
『まっ、待ってくれ!!恐れ入った!き、聞いてくれ!!
あんたは裏情報が欲しく無いか?!俺達はこの街だけじゃ無い!他の街にも幾つも縄張りがある!!困った時にはいつでも声を掛けてくれれば欲しい情報を提供する!!何なら顎で使ってくれてもいい!!
これからあんたが生きて行く上で役に立つと思うぜ!どうだ?俺達を使ってみないか?』
ロゼルドが恥も外聞も無く必死に5歳の子供に懇願する姿を見てアンリルはくすりと笑いミハエルの肩に手を置いた。
『私は良いと思うわよ。タダで裏情報が手に入るのは悪く無いわ。懲らしめるのはいつでも出来るわよ。
それよりそんな物をこんな所で放ったらこの辺りが廃墟になるわよ!』
ミハエルは少し考えため息をつくと〈フレイムランス〉を解除した。
『ふう。それもそうだね。・・ロゼルド・・だったっけ?
あんたの提案に乗ってあげるよ。その代わり今後、悪事に手を貸すような事をしたら次は無いからね?』
『お、おう・・・わ、分かった・・・』
ロゼルド達はへたり込み項垂れる。しかし同時に笑みが溢れる。
た、助かった・・・本当にヤバかった・・・だがこいつはいずれ大物になる。今のうちに繋がりを作っておけば・・・・面白くなって来たぜ!
ミハエルは気絶しているミランドを見下ろす。
『さてと・・後はこいつか・・〈ウォーターボール〉!』
ばしゃっ!!
『うおっ!!な、なんだ?!』
ミランドがびっくりして飛び起きると目の前にミハエルが軽蔑の眼差しで立っていた。
『ミハエル・・・』
ミハエルはミランドの言葉を無視して口を開く。
『さっきも言ったけど僕には父親は居ない。母さんだけだ。だからもう僕達に関わるな。
今度くだらないちょっかいを掛けたら容赦しないよ。』
『まっt・・・』
ミハエルはミランドが何か言い掛けたがそれを聞かずに踵を返して歩き出す。
そしてミランドは己の無力さと愚かさを知り肩を落すのだった。
〈?????〉
『〈闇のイルバス〉と〈光のメイシス〉か・・・懐かしいな。
荒んだ世界の秩序と平和の為に転生させたのだが・・まさかあんな事になるとはな・・・。
そうか・・やはりミハエル君は彼女の子孫だったか・・だとすると彼の子孫が何処かに居るはずだが・・・
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