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第167話 炎帝龍アグニシア

「ふはっ!!ここは・・・」


冥界蛇イグが目を開けると知らない天井に驚き飛び起きた。


「あら?お気付きになりましたか。ご気分はいかがですか?」


「え、えぇ・・・まあ・・大丈夫みたいね。死ぬかと思ったけど・・・えっと・・それよりあんた誰?ここは何処?」


イグが部屋の中を見回しなが顎をしゃくり目の前の女性に気怠く話す。


「あっ・・はい。申し遅れました。私はソフィアと申します。ミハエルの母親です。」


「ほへっ・・・?」


(い、今・・ミ、ミハエルの母親って言った・・・?ミ、ミハエル・・って・・あの子供の母親・・・あの化け物を産んだ・・・人間・・て事は・・・あの化け物よりも・・・わ、私・・い、今・・ど、どんな態度で・・何を言ったっけ・・・あわわわ・・」


イグは知らぬ間に止める事が出来ない震えが全身を襲う。初めて会った時に膨大な神力に包まれた時の事を思い出し顔面蒼白で身体中にねっとりとした嫌な汗が噴き出す・・・そしてソフィアが深々と頭を下げて顔を上げた笑顔のソフィアと目が合った・・・しかしイグはソフィアの笑顔に勝手に戦慄を覚え、なり振り構わずベットから転げ落ちると最速で土下座体制になり全力で床に頭を擦り付けた。


「ひゃ、ひゃうわぁぁぁぁぁ!!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!!し、失礼な態度でごめんなさいぃぃぃぃぃ!!!い、命だけはぁぁぁぁ!!わ、私にも帰りを待つ子供がおりますぅぅぅぅ!!な、なにとぞ命だけはぁぁぁぁぁ!!!!」


ぐりぐりぐり・・・


「・・あらあら・・そんなに床に頭を擦り付けたら跡が残りますよ?それにしても余程怖い思いをしたのですね・・・大丈夫ですよ。誰も何もしません。顔を上げてください。」


困った顔のソフィアが声をかけるとイグは動きを止めて震えながら赤くなった額を恐る恐る上げる。そして上目遣いでソフィアの顔を見上げた。


「ほ、本当?・・・た、立ち上がった瞬間に”ふははは!!許す訳ないだろう”とか言って首が飛んだりしない?」


ソフィアはあまりにも怯えたイグに吹き出してしまった。


「ぷふっ・・・大丈夫ですよ。そんな事しませんよ。だから立ってください。みんなが下で待っていますよ。」


「じ、じゃあ・・・」


イグはソフィアが目を離さずにゆっくりと警戒しながら立ち上がるとソフィアの和やかな雰囲気に安心して肩の力を抜いた。


「ふうぅぅ・・・」


どばぁぁぁん!!!


「ひゃうわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


勢いよく扉が開きミハエルが顔を出す。見ればイグの心臓の鼓動が跳ね上がり全身の毛を逆立て引き摺り切った顔で固まった。


「お母さん大丈夫?なんか騒がしかったけど・・・あれ?イグさんどうしたの?」


ミハエルが動かないイグに声を掛けるとそのままイグはベットに倒れた・・・


どさぁ・・・


ソフィアがイグの顔を覗き込む。


「あらまぁ・・・目を開けたまま寝ているわ・・・余程疲れていたのね。もう少し寝かしておきましょう。」


ソフィアはイグの足をベットに乗せると毛布を掛けてミハエルと部屋を出て行くのであった。




コンコン・・・


「はーーい!!」


鐘の音でクラインド王国からの使者が来たのを知っていたミハエルが入口の扉を勢いよく開けると予想通り目の前にセイルが笑顔で立っていた。


「やあ!ミハエル君!元気そうだね!」


「セイルさん今日は!・・・あっ!リベルト王子もこんにちは!お久しぶりです!」


「おう!ミハエル殿!久しいな!元気だったか?」


「はい!この通り元気です!!さあ中へどうぞ!」


「ありがとう。それじゃあ失礼するよ。」


セイルとリベルトが中に入るとソフィアが優しい笑顔で出迎える。


「セイルさん。お久しぶりです。・・・あのお連れの方は・・もしやリベルト王子様でしょうか?」


ソフィアはクラインド王の息子達とは面識が無かった。しかしミハエルから王子達の事を聞いていたので失礼の無いように気を遣いながらリベルト王子に目を向けた。

するとリベルトはソフィアに目を向けたまま顔を赤らめていた。


「リベルト王子?大丈夫ですか?」


セイルがリベルトに声を掛けると肩をビクッと跳ね上げ慌てて声を上げる。


「あっ・・そ、そうだ。お、俺はクラインド王国第一王子リベルトだ。だが気遣いは無用だ。ミハエル殿は俺の師匠だからな・・・それにしても・・噂に違わず・・お美しい・・・」


リベルトは意図せずいつの間にか心の声が漏れていた。


「あら。王子様からお世辞でもそんな事を言って頂けるなんて嬉しいですわ。ありがとうございます。」


ソフィアはニッコリ笑い歳下の男の子の社交辞令と受け流して微笑み返すとリベルトが顔を上げる。


「い、いや!お、お世辞ではない!ほ、本当に・・・お、お美し・・・こ、今度・・お、俺と・・ごにょごにょ・・・」


顔を赤く染めて言葉を濁すリベルトを見ていた者達はいやがおうにも気付く・・・


「「「リベルト王子・・・歳上好みか・・・」」」


(・・通りで同年代の女性に見向きもしない訳だ・・・)


セイルが納得したように頷いていた。



「さ、さて!本題に入ろうか。さあ。リベルト王子もここへ掛けてください。」


「お、おう。そうだな・・・」


セイルは惚けるリベルトを席に着かせ自分も席に座るとテーブルの上に両手を組む。


「さて。今日私が来たのはクラインド王からミハエル君への依頼を伝えに来たんだよ。」


「依頼?」


「そうなんだ。ここから南へ馬車で一週間程行った所に龍峰山という大きな山脈があるんだよ。この山脈はクラインド王国とスレイド王国を龍が横たわるように跨いで伸びているんだ。そして獣王国バルバードとの国境にもなっているんだ。獣王国バルバードに行くにはこの山脈を越えなければならないが行き来が大変なんだよ。その上ここ最近龍峰山の火山が活発化して魔物達が麓に溢れて通れなくなってしまったんだ。そこでスレイド王国から共同で魔物の沈静化を計りたいと要請があったんだ。」


「そうだ。クラインド王国とスレイド王国との交易は獣王国バルバードにとっても重要なんだ。このまま魔物が溢れて街道が崩壊すれば立て直しも困難になってしまう。そこでクラインド王はミハエル殿に白羽の矢を立てたんだ。」


リベルト王子も加わり話を進めようとすると階段から軋む音がする。


「・・・それは多分、炎帝龍アグニシアが目覚めたわね・・・」


階段を降りて来たのは先程までベットで寝ていた(気絶していた)冥界蛇イグであった。


「・・・ミ、ミハエル君。あの方はどなたですか?それに炎帝龍アグニ・・・?」


セイルは突然の事でこちらに近付いてくるイグに釘付けになる。


「炎帝龍アグニシアよ。龍峰山に住むこの世界最強の古龍の一角よ。この最近で目覚めたのは確か・・・400年ぐらい前だったかしら。だとすると・・目醒めるのが早いわね・・・」


イグが首を傾げながら虚空を見つめ記憶を辿っていた。


「・・・う、美しい・・・そしてなんと妖艶な・・ミ、ミハエル殿・・この美しい女性を紹介してくれないか・・・」


リベルト王子は立ち上がりイグに見惚れていた。


「あ、う、うん。こ、こちらは神界からこの地上を調査に来た神界獣のイグさんです。」


(あちゃぁ・・ミハエル君・・包み隠さず言い過ぎだよ・・・)


(そ、そうね。でも普通に受け入れている私達もどうかと思うけどね・・・)


ライナードとカリンがひそひそとツッコミを入れているとセイルの静止を振り払いリベルトがイグの前に進み出る。


「お、王子?!ちょっ・・」


「俺はクラインド王国第一王子リベルトだ。イグ殿・・・なんとお美しい・・・こ、この後もし良ければ・・・あの・・その・・ごにょごにょ・・」


(なあ?!今あの人ミハエル君の話しを聞いていたか?!もしかして歳上だったら神界獣でも良いのか?!)


(・・・もう見た目でなんでもよくなってるのよ・・・それにかなりの奥手よ・・・完全に歳上女性に引っ張って貰いたいタイプね・・・第一王子なのに・・・)


ライナードとカリンがジト目でリベルトを見ていた。


「私はイグ。神界の森最強の冥界蛇イグよ。リベルトと言ったわね?そこにいては話が出来ないわ!席に着きなさい。」


イグはリベルト王子を冷たい目で見下ろす。


「は、はい!!」


リベルトはイグの冷たい目と口調に口元を緩ませてセイルの隣にキレよく座った。その場にいる者達がリベルト王子の女性の好みを知った瞬間であった・・・


(リベルト王子・・・こ、これは早急に王にご報告しなければ・・・)


(おいおい・・あの王子様冷たくあしらわれて喜んでるのか?!)


(うわ・・・奥手の癖に歳上好きのドMって・・・第一王子なのに・・・)


(リベルト王子・・気持はわかる気がするけど・・・お母さんだけは駄目だからね・・)


皆が頬をヒクつかせながらリベルトを見るのであった・・・


イグが襟を正し用意された椅子に座ると皆がイグに注目する。


(そうよ!!これよ!これ!人間を上から目線であしらうこの姿こそが神界獣である私の本来の立場なのよ!!ふふ・・そして私の知識を欲しているこの人間達の姿・・・うふふふ・・・なんとも言えず・・気持ちいいわ・・・)


表情が緩みにやけているイグにミハエルが首を傾げる・・・


「イグさん?!どうしたの?早く話してよ!!」


「はひぃ!!分かりましたぁ!!」


ミハエルの強めの声に余韻に浸っていたイグの背筋が一気に伸びる・・・


(もう・・・あの子苦手よ・・・)


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