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第163話 神界の森の管理者

アンリルは両手を組むと空へ向かって気持ちよく伸びをする。


「んんーーー!!よしっ!やる事やったし!言いたい事言ったし!皆んな!帰るわよ!!」


「そうだな。長居は無用だ。・・・てか・・改めて見ると・・・派手にやったな・・これからの後始末が大変だな・・・」


ガインが肩の力を落として消え去った城跡を眺める。するとアンリルがガインの肩にバシッと叩くように手を落とした。


「まっ!気にしないの!!それに誰も死んでないから良いんじゃない?まあ、地下の宝物庫には国民から搾り取ったお金が唸る程有るんだから城なんてまた建てれば良いのよ!!それよりお腹空いたわ!フェニックス君!!サリドルの街にお昼ご飯を食べに行くわよ!!」


アンリルが振り向くとそこには既に巨大な炎の鳥へとなり待機しているフェニックスが居た。


「そう言われると思いましたよ。さあ!乗ってください。」


「あら!気が利くじゃない!皆んな早く行くわよ!!」


アンリルのあっけらかんとした声を耳にしながらドラガベルがだらしなく涎を垂らして転がるドルビナ皇帝を見下ろしていた。


(こうなって見ると哀れな皇帝よ。魔族にではなく同族の人間にやり込められるとはな・・・ふん!仕方あるまい。この姿を謝罪とするか・・・)


ドラガベルはドルビナ帝国との因縁を吹っ切るように振り返るとアンリル達の後を追うのであった。


そして皆を乗せて青空へと飛び立ったフェニックスに手をかざし眩しそうに見上げるリーゲルトの姿があった。


(・・・嵐のようにやって来て誰も殺める事なく去って行ったか・・・慈悲深く何者にも屈する事なく自分の正義を貫く力を持った者達か・・・ふっ・・眩しいな・・・)





暗黒神ドルゲルが重役が座るようなふかふかの椅子に身を預けて下界を映し出した大きな鏡をふんぞり返って眺めていた。


「ふん!あいつめ・・下界に行ったっきり何の報告も無いじゃないか・・・どれ・・奴は今何処に・・・っと」


(・・居たぞ・・ん?あいつは何をしているんだ?)



冥界蛇イグは緊張しながらミハエルとライナード、カリンと共にメルト村へと向かっていた。するとメルト村から流れてくる魔力と闘気が段々と強くなりイグの身体に纏わりつく。


(何?!・・・こ、この濃密な力は・・このミハエルという人間も後ろの二人も・・人間界でこんな力はあり得ないわ・・・一体この地上で何が起こっているの・・・?)


イグが濃密な力の中を進んで行くとやがてメルト村が見えて来た。そしてイグは目の前の光景に息を飲み立ち止まる・・・そこにはまるで大きな器からとめどなく溢れる水の様にメルト村から流れ出る魔力と闘気が蛇の神界獣であるイグの鋭い感覚器に警鐘を鳴らしていた。


(あ・・・う・・嘘よ・・私の魔法障壁が破られた?!まさか・・こ、この中で人間が生きていると言うの?!)


立ち尽くすイグに後ろを歩いていたライナードとカリンも立ち止まる。


「ん?どうかしたのか?メルト村は直ぐそこだぞ?」


ライナードの声にイグがビクッと肩を跳ね上げる。


「えっ・・えぇ・・そ、それは分かっているわ・・・そ、それより・・教えて。こ、この村は一体どうなっているの・・・?この村から溢れる力は異常と一言で片付けられない程異常よ!!一体あなた達は何者なの?!」


(えっ?異常?何が?!アンリルさんやサリアがいるならまだしも僕らもここに居るんだよ・・・どう見ても普通だよね・・・何を驚いているんだろう・・・)


「あの・・僕達は正真正銘の人間だよ。多分・・イグさんの魔力に皆んな警戒しているんだよ。それにメルト村は普通の村と変わらないですよ!ただ身を守るために鍛えているだけです!」


ミハエルはニッコリと首を傾げる。しかしミハエルは勘違いをしていた。あくまで自分達と比べて・・である。既にメルト村の子供達であっても上位ランクの冒険者が太刀打ち出来ないほど強くなっていた。


「ふ、ふ、普通?!こ、これが?!馬鹿な事を言わないで!!た、ただ鍛えているだけで・・・ふはぁっ!!」


その瞬間・・イグの背筋に寒気が走った・・・


(・・今・・我が主様を馬鹿と言いましたか・・・?)


イグの頭の中で静かに怒気を含んだエントの声が鼓膜を震わせる・・・


(あ・・い、いえ・・・こ、言葉の綾と言うか・・・その・・・)


(・・・そうですか・・・まあ良いでしょう・・・あと、貴方の言いたい事はよく分かります。確かにこのメルト村はこの世界で類を見ない程の人外魔鏡です。もしメルト村の中で悪意を抱いたりましてや悪事を働けば・・・例え神界獣の貴方でも・・・ふふっ・・言わなくても分かりますね?)


エントの静かで優しく語る声には神力が込められ鼓膜だけでなく身体中に響き渡った・・

イグは汗を滲ませながらコクコクと頷く事しか出来なかった。


「ねえっ?!大丈夫?そんなに汗かいて具合でも悪いの?」


イグが立ち尽くしたまま動かないのでカリンが様子を見るようにイグの顔を覗き込む。


「あっ・・・いえ・・だ、大丈夫です!げ、元気ですよ!!そ、それでは行きましょうか・・・」


(そ、そりゃぁ具合も悪くなるでしょう!!村の外でもしんどいのに中に入ったらどうなるのよぉぉぉぉぉ!!!!ま、魔力障壁全開よ!!)



「おー!!ミハエルー!お帰りーー!!」

「うん!ただいまー!!」


門番当番のデイルが物見櫓が手を振るとメルト村の門が無造作に開かれた・・・しかしイグの目には溢れ出る力の本流を堰き止めていた栓が抜き放たれ濁流のように迫る力の波であった・・・


(ひぃぃぃぃぃぃぃーーーー!!死ぬの?!私死ぬの?!神界の森最強の私がこんな所で死ぬの?!い、いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!)


「・・はふん・・・」


・・どさ・・・・


イグはメルト村の入口から吹き出した魔力と闘気の本流に恐怖し気を失いその場に崩れ落ちたのであった・・・




ここは神界。世界神ゼムス、太陽神アラフ、大精霊神ユラミスが無言で地上のメルト村を見下ろしていた。


「あ、あの・・ゼムス様・・・お呼びでしょうか?」


ゼムスが振り向くと不安そうな表情をした大暗黒神ラルフェラがモジモジとして立っていた・・・


「うむ。来たか・・・ラルフェラよ。早速だがこれを見てくれ。そして一体これはどう言う事か説明してくれないか・・・」


「えぇっ?!・・・は、はい。し、失礼致します・・・」


大冥界神ラルフェラは恐る恐る近づいてゼムスの隣に用意された椅子に座り下界の様子が映し出された大きなテーブルを覗き込む。


「・・うぇっ?!ま、まさか・・な、なんで・・・どうして・・・あんな所に神界の森の管理者が・・・いるの・・?!」


ラルフェラは考えが纏まらず目を見開いたまま固まっていた。そう・・冥界蛇イグは神界の森の主であり管理者であった。神界の森で起こる異変や突然変異の魔物の管理をしており必要とあれば大冥界神ラルフェラに報告をするという役目を担っていたのだ。


「ふむ。その様子だとお主は知らなかったようだな。」


「は、はい・・・もちろんです。ですが・・何故こんな事に・・・っ?!ま、まさか・・」


ラルフェラの頭の中に一人思い当たる者が浮かんだ・・・それはゼムス達も同じであった・・・


「・・・うむ。その可能性が高い。」


「ですが彼奴では暗黒神の力を解放しない限り冥界蛇を従わせる事など・・・・んっ!」


(ま、まさか・・・もしそうなら・・・許す訳にはいかない・・・)


「どうしたラルフェラ。何か心当たりがあるのか・・・っ・・」


ゼムスが考え込むラルフェラに声をかけるとゆっくりと顔を上げた。そのラルフェラの目は青紫のオーラを激らせ怒りを露わにしていた。世界神ゼムス達でさえも引く程に・・・


「・・・ゼムス様。・・・至急確認したい事がありますので失礼致します・・・」


「う、うむ・・・ほ、報告を待っておるぞ・・」


「・・・はい・・」


そう言うとラルフェラはその場から魔法陣の中へ消えて行った・・・張り詰めた空気が緩みゼムス達が肩を落とす。


「ふう・・さ、さすが・・大暗黒神・・鳥肌が立ったぞ・・・」


「そ、そうであるな・・・普段の彼女からは考えられぬ程の怒気であったな・・・あの暗黒神に少し同情する・・」


「えぇ・・これからはあの巨大な胸を揶揄うのを少し控えた方が良さそうですね・・・」


「「すぐに止めるのだ!!」」


ゼムスとアラフが同時にユラミスに振り向くのであった・・・

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