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第162話 受け継がれる性格

「も、もう終わりだ・・・魔人ドラガベルが復活したなら・・・聖域が破壊された今では人間は何も出来ん・・・」


肩を落とし心が折れたドルビナ皇帝が空を仰ぎ魔人ドラガベルを見上げる。そしてドラガベルが地上目掛けて急降下する姿を見て目を閉じた・・・ドルビナ皇帝はもう直ぐ耳に響くであろう爆発音、破壊音、人々の悲鳴を覚悟した・・・


(すまぬ・・・私が不甲斐ないばかりに・・どれ程の被害が出るのであろう・・皆にどう償いをすれば良いのか・・・)


唇を噛み締め肩を震わせていたがいつまで経っても覚悟していた絶望の音が聞こえず静寂がその場を支配していた・・・


(・・な、なんだ・・どうした・・・)


ドルビナ皇帝がゆっくりと目を開けて門兵の目を見る。


「・・・お、おい・・・どうなっている?ほ、報告しろ・・・」


「えっ・・は、はい・・・」


門兵は慌てて階段を数段上がると恐る恐る地上へ顔を出した。


「あ、あれは・・・ま、まさか・・・嘘だろ・・・ま、魔人が・・・」


「お、おい!何だ!?どうなっているんだ?!は、早く報告しろ!」


ドルビナ皇帝は目を見開いて一点を見つめている門兵を催促するように見上げる。


「へ、陛下・・・」


門兵がゆっくりとしゃがみ階段に腰掛けた。


「魔人は・・・奴等の仲間のようです・・・魔人が奴等に跪いていました・・・」


「な、何だと・・・仲間?!な、何の冗談だ!?笑えんぞ!!な、ならば奴等は魔人ドラガベルを助けに来たとでも言うのか?!」


「く、詳しい事は分かりませんが・・魔人はメルト村の関係者である事は間違いありません・・・」


「ば、馬鹿な事を言うでない!!そんな訳があるか!!えぇい!!退け!!」


ドルビナ皇帝は門兵の言葉を受け止めきれずに階段を大股で上がると門兵を押し退けて地上に顔を出した。そこで見たものは皆が見守る中、魔人ドラガベルと豪剣ガインが対峙している光景であった。


(・・・なんだ・・何が始まろうとしている・・・?一騎討ちか?・・・い、いや・・それにしては周りの奴等の緊張感が無さ過ぎる・・・一体・・・ん?)


ふとドルビナ皇帝は視線を感じて視線を移すとこちらに指を差して声を上げているアンリルと目があった。


「な、なんだ・・何を言っている・・・?」


皇帝が首を傾げて目を凝らすと指を差すアンリルの背後から大きな翼を広げ炎の塊が自分目掛けて向かって来た・・・


「な、何だアレは?!・・・炎の鳥?!」


迫るフェニックスに一歩も動けずに立ち尽くしているとフェニックスは止まる気配も無く獲物を捕まえるように、すれ違いざまにドルビナ皇帝の襟首を咥えて掻っ攫って行った・・・


「ぬおぉぉぉぉぉ!!!何をするぅぅ!!我はドルビナ皇帝だぞぉぉぉ!!不敬罪だぞぉぉぉ!!えぇい!!放せぇぇぇ・・・い、いや・・今は駄目だぁぁぁ!!!放すなぁぁぁぁ!!!」


ドルビナ皇帝はジタバタとフェニックスの嘴の先で風圧で顔の肉を歪めアンリル達の所へと運ばれて行くのだった。




魔人ドラガベルの祟っての願いで敷地の隅でガインとドラガベルが対峙していた。しかしドラガベルのやる気ばかりが先走りガインは若干気乗りしてなかった・・・


「我はメルベリア様の忠臣!ドラガベル!貴様も名乗れ!」


「お、おう。俺はメルト村村長ガインだ。」


「ふむ。どういう訳か知らんが貴様ごとき人間がメルベリア様の主と聞いて”はいそうですか”と到底納得出来ん!!ガインよ!我と立ち合いそれを証明しろ!!」


ドラガベルが闘気を溢れさせハルバートを構える。


(うーーん・・確かに強いな。だがこんな事をしている場合じゃないんだが・・・)


「なぁ・・・あまり気が進まないんだが・・・そもそもメルベリアがそれを望んでいるんだぞ?忠臣なら従うべきじゃないのか?」


「うぬっ・・・メ、メルベリア様を呼び捨てとは・・・ぬぬぬ・・・この我でも・・・くっ!・・・も、問答無用ぉぉぉ!!」


「お、おい!!なんか主旨が変わってないか?!」


ドラガベルが闘気を立ち昇らせ複雑な表情で大地を蹴りガインに襲い掛かる!!その目には殺気にも似た迫力を感じガインは剣を抜いてドラガベルのハルバートを受け止める!


ギギィィィィィィィン・・・


(くっ・・・一撃が重い・・)


「ぬう・・・人間ごときが我の一撃を受け止めるとは・・・くくっ・・面白い・・面白いぞぉぉぉ!!」


「だから!!主旨が変わってるだろぉぉぉぉ!!!」


ドラガベルはガインの言葉など耳に入らずに嬉々としながらハルバートを振り上げるのであった・・・




フェニックスが減速して嘴を緩めるとドルビナ皇帝がアンリル前に落ちて来た。


「のあっ!!」


どざっ・・・


「痛っ・・・」



「うん!フェニックス!ありがと!」

「お安い御用です。」


フェニックスが人型に戻りアンリルの後ろへ下がるとアンリルが地べたに座り込んだドルビナ皇帝を見下ろす。


「さてと・・・やっと見つけたわよ。あんたがメルト村に仕掛けたこの喧嘩・・どう決着するつもりかしら?」


「き、貴様等・・・このドルビナ帝国にここまでやって只で済むと思っておるのか!?諸国の援軍を募れば村一つ簡単に潰されるぞ!!」


アンリルは虚勢のような皇帝の言葉に焦る事なく口元を緩ませ目を細める。


「ふぅん・・・じゃああんたは謝罪する事なくメルト村と全面戦争をするって事でいいのね?」


(ぬっ・・・こ、此奴・・怯む様子が全くないぞ・・・全面戦争も厭わんというのか・・)


ドルビナ皇帝は力を誇示して揺さぶりを掛けたつもりだったが微動だにしないアンリルに困惑していた。しかし歴代の皇帝の性格を受け継ぎどれだけ自分に落ち度があろうが頭を下げる事が出来なかった・・・それが通じる相手では無い事とも知らずに・・・


「き、貴様らは一体何なのだ!たかが村の分際で帝国を相手にここまでするとは!!頭がおかしいのか?!」


「ふふっ・・・その顔が見たかったのよ。たかが村と舐めて掛かったドルビナ帝国皇帝陛下がその村に反撃されて慌てふためく姿をね!!これでドルビナ帝国は周辺諸国の笑い者よ!!たかが村に弄ばれた国としてね!!いい気味だわ!!ふう。さてと・・・今回は殺さずに生かしてあげたけど戦争をするって言うなら覚悟する事ね。まあ、好きにすれば良いわ!」


「貴様ぁぁ!!貴様等は既に我が帝国騎士団300名を皆殺しにしただろうが!!既に戦争は始まっている!!覚悟するがいい!!」


ドルビナ皇帝がいつものごとく我を忘れて立ち上がりアンリルの前に立ちはだかる。しかしその身勝手な発言でアンリルの理性のスイッチがぶっ飛んだ・・・アンリルは神力を溢れさせ怒りをそのままにドルビナ皇帝の髪をむんずと掴んだ。


(あーあ・・・怒らせちゃった・・・ああなったアンリルさんは止められないのよね・・・でも馬鹿な皇帝には良い薬ね・・)


サリアは肩をすくめるとアンリルの神力に当てられ震えているカトプレパスとフェニックスの元へ行く。


「2人とも大丈夫?私の後ろに隠れていた方がいいわ。」


サリアはそう言うと魔法障壁を広げて二人を包んだ。


「はぁふぅ・・・主様ありがとうございます。まだ震えが止まりません・・・」


「あ、主様・・・主様の村は・・恐らく女性や子供もいると思うのですが・・・だ、大丈夫なのでしょうか?」


「ん?大丈夫よ?皆んな同じ環境で暮らしてるからね慣れよ。あなた達もメルト村に来たら分かるわ。」


「はぁ・・そ、そういうものですか・・・」


フェニックスはあっけらかんと答えるサリアにメルト村に一抹の不安を覚えるのであった。



アンリルはドルビナ皇帝陛下の髪を掴むと激しく前後に激しく揺らす!


「がっ!!ぐっ!!は、放せ・・・あうおうあう・・・」


「このくそ皇帝ぇぇぇ!!もっとよく考えて喋りなさいよぉぉ!!あんたの自慢のクソ帝国騎士団はメルト村を蹂躙する為に来たのよぉぉぉぉ!!!それを皆殺しにして何が悪いのよ!!それにあんたの手先である帝国騎士団が各地でやらかした責任は誰が取るのかしらねぇぇぇ!!!何ならクラインド王国に持ち帰って周辺諸国に触れ回っても良いのよ!!自分の立場をよく考える事ね!!それに言うに事かいて戦争が始まってる?!はんっ!!笑わせるんじゃないわよ!ミハエル君なら地上からドルビナ帝国領全てを地図から消し去るなんて5分もあればお釣りが来るわぁぁぁぁ!!!!このクソゴミ皇帝がぁぁぁあぁぁぁ!!!」


アンリルは怒りのあまり神力に当てられ泡を吹いているドルビナ皇帝を地面に投げつけた!


ずざぁぁぁぁ・・・


「ぐげぇぇっ!!」


「・・・ふん!一つ教えてあげるわ。クソ帝国騎士団を皆殺しにしたのはメルト村の人間じゃないわ。あのクズ共は森の精霊達を怒らせたのよ!ふん!覚えておく事ね!・・・って聞いてないか・・・」


ドルビナ皇帝は既にアンリルの神力に当てられ意識を失っていた。


そして遠巻きで見ていた帝国の騎士団や魔法部隊と重臣達もぶちギレたアンリルの神力に当てられ意識が飛び崩れ落ちていた。魔族であるメルベリアとドラガベルも震えながら膝を付いていた・・・


「な、何じゃ・・・こ、この力は・・・これが人間の力か・・・」


「こ、この我が・・震えが止まらぬ・・・ガ、ガインよ・・お前は大丈夫なのか?!」


ドラガベルが平然と頭を掻いているガインを見上げていた。


「んー・・まあ・・・慣れだな。毎日村に居ればこんなもんじゃないからな・・・それにアンリルだって手加減してるしな。」


「な、何だと?!こ、これで手加減していると言うのか・・・むう・・・しかしこの力の中で平然としているとは・・・負けだ・・我の負けだ・・・メルベリア様の目に狂いは無かった・・・。」


ガインは膝を付いて項垂れるドラガベルに手を差し伸べる。


「ほれ!お前もメルト村に来るか?歓迎するぞ?」


ドラガベルは顔を上げてガインの手を取り立ち上がる。


「いいのか?俺は魔族だぞ?」


「はん!俺の村ではそんなもん関係ないぞ!それにメルト村には俺より強い奴がゴロゴロいるぞ。更にあのアンリルよりも強い奴もいるんだ。逆に気を付けろよ?」


「な、何だと・・・お前の村は化け物の巣窟なのか?」


ガインは咄嗟にドラガベルの懐に入り小声になる。


(おい・・ドラガベル!メルト村の住人に化け物呼ばわりは・・・命に関わるぞ・・見てみろあの二人を・・・)


ドラガベルは寒気と共にチラリとアンリルとサリアを見ると二人とも目を細めて神力を滲ませながらこちらを見ていた・・・


(お、おう・・・そ、そのようだな・・こ、今後は気を付けよう・・・)

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